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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編

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34/85

愛とは炎

「えっ?」


 私ーー咲崎《さきざき》夕美《ゆみ》はただっ広い草原に座っていた。


「……ここは?」


 周りは何もない。草原の果てに山もない。


「こんにちは」


「っ!?」


 急に声をかけられてビクッとしてしまう。


「そんなに驚かないでください。私はレティア・マクサーヌ。ここの管理人です」


「管理人?」


 きょとんとして聞き返す。


「はい。私があなたを召喚した人です」


「っ!?」


 レティアさんはかなりの美人です。物腰柔らかな雰囲気といい、そのスタイルの良さといい、見本にしたいくらいの。


「……召喚した?」


「はい。俗に言う魔法ですね。ここは異世界とあなたのいた地球のある世界の狭間。私が召喚した人に異世界に行かせる許可を貰う場所、ですね」


 魔法なんて……。でも実際に召喚されちゃってるし。う~ん。


「異世界ってどういうとこなんですか?」


「敬語じゃなくていいですよ。よくある魔物や亜人もいるファンタジー世界です。この召喚リストに載っている人にその世界を救って欲しいんですが」


 レティアさんは手に持ってる単行本程の大きさの本を見せる。


「やっぱり、そういう世界なんだ。召喚リストって?」


 私もそういう本は読んだことがある。数える程しかないけど。


「異世界で英雄になれる可能性のある人ですかね。詳しいことはわかりませんが」


 私が英雄に?


「……う~ん。よくわかんない」


「ふふっ。英雄になれると言われても、実感が湧かないのが普通です」


「でも、このまま送ったら世界を救う所じゃないよね?」


 その辺の魔物に殺されちゃってジ・エンドだし。


「はい。職業と基本装備を授け、その人の器によって決められた分の魔物をパートナーとして連れていけるんです。女性には特別に神との謁見を許可しています」


「謁見? 神様と?」


「はい。謁見をして気に入られると契約し、神器とその神の加護、力が与えられます」


「失敗したら?」


「契約は出来ず、魔物を連れるしかありませんね。最悪の場合殺されます。契約した場合は魔物を連れることは厳しくなりますが」


 ……気紛れだなぁ、神様って。


「でも、お兄ちゃんに会いたいから嫌」


「……随分きっぱり断りますね。召喚リストに載っている人は例外なく世界に飽きてしまった人なんですが」


「うん。お兄ちゃんと会えない世界なんてつまんないよ。でも、お兄ちゃんに会えなくなるなら元の世界にいた方がいいもん」


 夏休みにはお兄ちゃんが会いに来てくれるって言ってたし。


「……お兄ちゃんと言うのは?」


「緋崎柊夜だけど」


「ああ、その人なら召喚リストに載ってますよ。召喚リストの一番最後に」


 レティアさんはほら、と召喚リストの最後のページを見せてくれる。


「お兄ちゃんが行くなら行く」


「……変わり身が早すぎません?」


「お兄ちゃんだけが全てだもん!」


 お兄ちゃんだけが私の味方なんだよ。お義父さんもお義母さんも他人に見えるのに、お兄ちゃんだけは私のお兄ちゃんでいてくれる。


「……とりあえず神と謁見しますか。どの神がいいですか? 言ってくれればその神を呼びますが」


 ……レティアさんは華麗にスルーしました。


「う~ん。あんまり神様知らないけど、炎がいいなぁ」


「炎の神ですね。位はどうします? 最上位から下位まで選べますが」


「最上位でお願いします」


 お兄ちゃんならきっと英雄になるくらい強くなるから、私もお兄ちゃんの隣にいれるように頑張らないと!


「……炎の最上位に君臨する神よ! 今ここに姿を現したまえ!」


 レティアさんが厳かな口調で叫ぶと、三つの巨大な紅い魔法陣が出現した。


「……急なお呼び出し、失礼いたします」


 レティアさんは呼び出した三柱の神様を見て、膝まずいて頭を垂れる。


「我が名はカグツチ。和の炎の神だ」


 逆立った髪に鋭い目付きの巨人、肌は浅黒く、髪と眼は紅い。顔はカッコいい方だけど、怖いしお兄ちゃんの方がカッコいい。


「エジプトの太陽神、ラーと言います」


 機械じみた金色の鷲のような感じ。カッコいいデザインだけど、お兄ちゃんの方がカッコいい。


「……シヴァ」


 紅い肌の無表情な巨人。物静かな感じはモテそうだけど、お兄ちゃんの方がカッコいい。


「「「……」」」


 何故か一斉にこっちを見てた。


「神なので心を読めるんですよ。何か考えました?」


「う~ん。わかんない」


「お兄ちゃんがどうとか言ってただろうが」


「? お兄ちゃんの方がカッコいいってこと? 別に、何も不思議じゃないよね」


 だって、お兄ちゃんの方がカッコいいもん。


「……別にいいか」


 わかんないけど、納得してくれたみたいだった。


「はーっはっはっはっは!」


 どこからか笑い声が聞こえて、三柱は嫌そうな顔をする。


「ギリシャの恋心と性愛を司る神、エロス! ここに参上!」


 やたらとハイテンションなおじさんが天から降りてきた。


「ここに聖なるーーいや、性なるエロスを感じ取ったのですが、どなた?」


 キョロキョロと私達を見渡すエロスさん。


「おぉ! シヴァ、ラー、カグツチですか! ですが、あなたたちではありませんね。そちらの女性は性欲は強くても恋心がない!」


 エロスさんはレティアさんを見て残念そうに言う。


「……レティアさんって性欲強いんだ」


 あれで男に迫ったらイチコロなのに。


「おぉ! そちらのgirlはーー」


 エロスさんは私を見て、


「Perfect!」


 それこそ完璧な発音で叫んだ。


「えっ?」


「性欲はそちらの女性より桁違いに高く、それでいて一途な愛を感じますね!」


 何でかな。あんまり褒められてる気がしないよ。


「いいですね! あなたには強大で巨大な愛が感じられます! 愛は燃え盛る炎が如し! 愛とは炎! 私は彼女と契約することに決めました! あなた方はどうします?」


 よくわかんないけど、私はエロスさんと契約することが決まったらしい。


「……異論なし」


 シヴァが言ったのを聞いて残り二柱も頷く。何か、契約してくれるみたい。


「……これだけ揃えば全炎系の神と契約出来そうですね」


「ふん。愛だけは認めてやるが、それは出来んな」


「……魔物も」


「ええ。魔物と神、両方契約させましょうか」


「なっ!?」


 シヴァだけが反対だったけど、


「……わかった」


 渋々頷いてくれた。


 その後、三柱+エロスさんで力ずくで私に契約させていき、何故か髪と眼が紅い色になってた。


 そして三柱も消えた後、エロスさんだけが残っていた。


「ふむ。私の加護は選択出来るんですが、どうします?」


「どうって?」


「おっぱいを大きくするでもいいですね。しかし、女性の躯と言うのは男の性器と一緒で個性があるモノですから」


 まあ、男の性器が小さければそれはそれでダメですけどね。とボソリと呟いた。


「それはいいもん。お兄ちゃんが私の体型を好きになってくれれば」


 ……お兄ちゃんが巨乳好きだったらどうしようと思う、今日この頃だけど。


「その様子だと、魅了の力もいらないようですね」


「うん。お兄ちゃんは私の力でゲットするんだから」


「では、どうしましょう。お兄ちゃんの精力を無限にしてもいいですね」


 ……それは。


「うん。お願いね。後はどうしよう?」


「今後、必要になれば呼んでください。必要な加護を付け足しますから」


 エロスさんは天へと昇っていく。


「レティアさん、パートナーのポイントみたいなのは大丈夫なの?」


 私はレティアさんに向き合って言う。


「はい。契約はそこまで使いませんから。それでも神三柱でいっぱいいっぱいでしたが、エロスは勝手に契約して、他は力ずくでしたから。大丈夫でしたよ」


 大丈夫らしかった。


「では、装備は加護で変わりましたし、武器も神器を使えます。異世界に送ってもいいですか?」


「うん」


 私が頷くと、足元に魔法陣が出現した。


「あっ。レティアさん! お兄ちゃん誘惑しちゃダメですよ!」


「……それは約束出来ませんね」


 くすっと意味深にレティアさんは微笑む。


「絶対ダメ!」


「はい。いってらっしゃい」


 レティアさんは冗談だったらしく、ゆっくりと見送ってくれた。

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