術式の使い方
「イメージすればいいんだよな?」
「はい。名前を決めると、次から名前だけで発動出来るかもしれません。魔法がそうですから」
アーティアが答えてくれる。
「魔法の名前を使ってみるか。アーティア、雷の槍を放つ魔法ってあるか?」
魔法を参考に名前を決めたい。……ネーミングセンスないからな、俺。
「~ランスですね。雷の度合いに合わせて変化します。一番威力のないモノはサンダーランスですね」
サンダーランスか。
「サンダーランス」
頭の中で雷の槍を放つイメージをしながら腕を振るう。
「「「……」」」
……あれ? 何も出ない? おっかしいな。普通でも腕を振れば雷は出るのに。
「……名前がいけないのでは? ご主人様は魔法が使えないので、魔法名とかぶってしまうと発動出来ない、と」
アーティアの言葉に俺はなるほど、と思う。
「ーーって、俺が名付けなきゃいけないじゃん!」
ネーミングセンスないから嫌なのに。
「まあ、物は試しですよ、主」
……サンダーランスを適当に訳すか。雷槍? 電槍?
「じゃ、雷槍で」
俺は適当に言って腕を振るう。
バチバチバチッ!
「おっ?」
ズガアアアァァァァン!
「おぉ」
木々を雷の槍が薙ぎ払いました。……地球かどうかはさておき、自然環境は大切にしなければ。
「……ご主人様。とりあえず連発出来るかどうか試して下さい」
アーティアに言われて、再び焼き払った木々に向けて、
「雷槍」
俺は腕を振るった。
今度も雷槍が放たれたのだが、タイミングが違う。さっきは腕を振った後に雷の槍が出来たのだが、今回は腕を振るった瞬間に雷槍が放たれた。
「連発出来たし、タイミングもバッチリだな」
ただ腕振って雷放つだけじゃダメなんだな。ちゃんとイメージして名前付けてやらないと。
「そうね。後はご主人様の想像力とネーミングセンスが試されるけど、試し打ちはクエスト時にしましょ。無闇に使うものでもないし」
フィネアが神妙に言う。
「じゃあ、ゴブリンを規定数まで狩って、今日は上がるか。ーー夜になったら幽霊探しといこうぜ」
「「「……」」」
あまり乗り気ではない女性陣だったが。
「んじゃ、ちょい試すか」
まず、どれだけ連発出来るかわからないので、長時間戦えるようにしたい。……まあ、魔物相手に格闘技だけで勝てるわけないしな。
そこで考えた。常に雷を纏って、雷を付与出来ないかと。よければ、身体強化でも出来ないかと。
「……名前付けた方がいいのか?」
……雷を纏う。雷纏か? 雷装もいいな。雷の鎧っつう意味で雷鎧もいいな。……術式がどこまで出来るのかわからないから、ちょっとイメージしてみよう。
「よしっ。その三つを分けよう」
考えた術式はメモっといて、それから使おう。
「雷纏」
雷が俺を包む。イメージは超サイヤ人2だな。……もっと雷が多いか。
「……解除。雷装」
雷が俺を包む。……雷纏は薄いが、雷装は雷が濃い。
「……解除。雷鎧」
雷が俺を包み、黄色い鎧を形取った。……まさかここまでとはな。漠然としたイメージだったが、ちゃんとした鎧を身に付けていた。
「それは何ですか?」
「ん? ああ、鎧をイメージしてみたんだ。結構上手く出来るもんだな」
術式は思ってたより万能らしい。
「……そんな雷魔法はありません。雷術式ではないのでは?」
えっ? 雷術式だろ?
「雷で鎧が造れるわけがないですよ。別の術式ですね」
マジか。……まあ、別の術式使ったけど、そんな術式あったか?
「……むぅ」
俺は久し振りにステータスウインドウを開く。
「……増えてる? じゃあ、使うことで増えてくのか?」
また謎が増えた。
とりあえず、ゴブリンを雷纏と雷装を使って狩った。雷付与攻撃と、少し速く動けるようになった。
▼△▼△▼△▼△
「クエスト完了ってどこでもいいんだよな?」
俺は受け付けカウンターにいたリンナに聞く。
「はい。ゴブリン討伐が完了したんですね?」
「ああ」
頷く。受付嬢に完了報告と証拠の品を出せばクエスト完了だ。
「ゴブリンの耳と爪な」
「ご苦労様です」
俺は尖った耳と黄ばんだ爪を道具屋で買った無限茶袋から出す。……無限茶袋。道具屋のおっちゃん流に言えば、エンドレス・ポーチ。あれ? インフィニット・ブラウン・ポーチだっけ? まあ、道具袋でいいだろ。
「……あっ。人工魔物ですが、他でも確認されました。……残念ながら、遠目で人工魔物に殺された人を見たという報告だけですが」
「っ! ……でも、アンドゥー教の仕業だって聞いたぞ?」
「……はい。ですが、確証がないので、ギルド全体でアンドゥー教殲滅を決定することは出来ません。マスターが反アンドゥー教派の貴族に話をつけたり、国王陛下に報告に行ったりしています」
ギルドって結構頼りにされてるんだろうか。王様に報告に行くってのは凄いんだろうしな。
「言っておきますが、この国の国王陛下は反アンドゥー教派、反身分差別思想ですよ。一度街に訪れた時には貧しい子供達にパンを配って回ったそうです」
いい王様なんだな。純血の王族だとそんなことは思わないヤツがほとんどだろうし、妾腹の王族なんだろうか?
「あっ。それともう一つ。シューヤさんと同じ境遇の五人の男女がシューヤさんに会いたいと。同じ境遇の者同士、連絡を取れるようにシューヤさんのことを話してしまいましたが?」
「ん? 別にいいぜ。俺としても、連絡は取りたい。んで、どこでいつ会うんだ?」
「明後日の午前十時に、中央広場の噴水前で、だそうです」
「わかった。そいつらに会ったら、行くって伝えといてくれ」
俺は言って、すっかり真っ暗になった外に出た。
まさか一日がこんなにかかるとは。
さすがに時系列おかしくね? と思う作者です。
まあ、夜中頃だと思ってください。




