二手に分かれて
「……ところで、生活必需品って何だ?」
俺はアーティア、ディメス、メティの三人と別行動し始めてから三人に聞いた。
「……衣食住が整えられるものでしょ?」
フィネアが非常にざっくりとした答えを返してきた。
「……なるほど」
まあ、そういうことだよな。……フィネアはめんどくさいからそう答えたんだろうが。
「そうだ。ナティアってギルドに登録してあるのか?」
「うん。……奴隷はギルド登録されるから。まあ、戦闘が出来る奴隷だけだけど」
「アーティアはどうだ?」
「されてるよ。だって、人間じゃ強い方だもん」
ほう? じゃあ、未だに自分の力を理解してない俺が一番弱いのか。
「そういや、何でゴブリンを一番最初に倒すんだろうか」
術式を見た限りじゃ弱いヤツは瞬殺だぞ?
「……ご主人様の術式、見たけど。一回の溜めが長すぎない? 避けられて距離詰められてジ・エンドよ」
三十秒はそう簡単に稼げるもんじゃないか。
「……じゃあ、フィネアだったらどうやって術式と戦う?」
「……そうね。ご主人様が雷でも何でも放ってきたらそれを真っ二つに切り裂いて、一気に距離詰めてご主人様も真っ二つね」
……色々規格外で参考にならねえ。
「そんな一発型じゃ強い相手には勝てないわよ? 雑魚は倒せても、耐えられたら三十秒でジ・エンド」
……じゃあどうすりゃいいんだ?
「ゴブリン相手に術式を留める練習でもすれば? 危なかったら援護するから」
「頼もしいな。……まあ、頼りにしてるよ」
俺は肩を竦めて言う。
「……ゴブリンってどんなヤツなんだ?」
「強さで言えば、人間と大差ないわよ。別名小鬼。体長一メートルぐらいで、何かしらの武器を持ってるけど。……私じゃ参考にならないわよ。一般常識のあるディメスかアーティアに聞いた方がいいけど」
「……どうやって戦うんだ?」
やっぱり剣で一薙ぎだろうか。
「ゴブリン程度なら殺気で勝手に絶命していくわよ?」
……。
…………。
「……聞いた俺がバカだった」
生物を絶命させる程の殺気って何だよ。……俺もフィネアと敵だったらそうやって殺されてたんだろうか。超怖いんすけど。
「参考までに、グランとナティアは?」
仕方なく、他二人に聞いてみる。
「俺は銃で消し飛ばすか、フィネアと同じように殺気で殺すな」
……マジか。グランもそっち側だったとは。……まあ、グランも最強種だからな。
「私も殺気か炎だよ? ゴブリンを倒す方法を、ご主人様の傍にいる五人に聞いてもダメ。だって、生まれからしてゴブリンは相手にならないから」
……さすが、上位の魔物は言うことが違うな。
「まあ、じっくり考えてくか」
俺は俺だからな。
▼△▼△▼△▼△▼△
「これはいいですね」
アーティア、メティ、ディメスの三人は不動産屋に行き、良さそうな物件を探している。
「……大きさにしては安いですね。何故ですか?」
「……ええ、まあ。それは曰く付きの物件でしてね。なんでも、女の子の幽霊が出るとか。……私が確認したわけではないのではっきりとは言えませんがね」
三人と向き合う商人は言う。
「……原因はわかっているのですか?」
「わかっていれば放っておきませんよ。元々は戦場でも墓地でもない荒れ地ですし」
「では、これにしましょう」
ディメスがアーティアに聞く。……メティはあまり詳しくないので話に入っていない。
「いいのですか? ご主人様に危険が及ぶかもしれませんよ?」
「幽霊程度ならどうにでもなります。主は守ります」
「……わかりました。では、これでお願いします」
「……よろしいのですか?」
「「はい」」
ディメスとアーティアは声を揃えて言う。
「わかりました。毎度、ありがとうございます。こちらの物件は金貨十二枚になります」
「はい」
アーティアはシューヤから預かった袋の中から金貨を十二枚取り出して商人に渡す。
「毎度。では、案内しますので、行きましょう」
三人は商人に連れられてその家のある場所に向かった。
「こちらですね。これが家の鍵になります」
商人は家の前に立って、アーティアに鍵を三つ渡す。
「はい。ありがとうございました」
「いえ。……それでは、今後ともご贔屓に。帰りの道中気をつけてくださいね」
商人は意味深なことを言って去っていく。
「……わかってますね?」
「……はい。気配は感じてます」
「……あの商人の仕業だと思いますか?」
三人は表情を引き締めて、周囲を確認する。
「……気付いたか。なかなかやるな、姉ちゃんら」
三人が警戒するので、隠れていた男達が物陰から出てくる。
「……二十二人。女三人を狙うのに多くないですか?」
「仕事をやるなら完璧に、だ」
リーダー格の男が言う。
「……では、足りませんね」
「あ?」
「ご主人様に容赦なくやる許可は貰ってますから、足りませんよ」
「俺ら相手じゃ余裕ってか? やってみろ!」
リーダー格の男が言って、剣を持った男達が一斉に襲いかかってくる。
「……」
アーティアが一歩前に出る。
「一人でいけますか?」
「……もちろんです」
アーティアは袖からナイフをいくつも出す。
「そんなチンケなナイフで何が出来るんだよ!」
「……あなた方を殺すことが」
アーティアは無表情にそう言って、ナイフを二十二本放った。
「こんなもん、弾き返してやるよ!」
男達は飛んでくるナイフを避けようとはせず、剣で弾き返そうとする。
ーーが、
「「「なっ!?」」」
投擲されたナイフが剣を斬って、何もなかったかのように首に突き刺さった。
「がっ!」
「ひぃ!」
首の薄皮一枚だけが斬れて唯一生き残ったリーダー格の男が尻餅を着いた。
「……誰に言われたか、私達をどうするつもりだったのかを全て吐けば殺しはしません。……死体を持ち帰って欲しいですしね」
「……うぅ」
男は完全に怯えきった様子で仲間の死体を見る。
どの死体も首が飛んでいて、血溜まりが出来ている。
「……言えば俺は殺されないんだな?」
「はい、殺しません」
「……言えば俺はこいつらをちゃんと弔えるんだな?」
「はい、殺しませんから」
「……わかった。どうせ大して言うなとは言われてないからな。……国民から税金巻き上げてやがるクソ貴族のソベクバト・アーサリネだ。裏で宗教と繋がってて、それが持つ『神聖鶏騎士団』がバックに付いてる。だから俺に口止めなんざしなくても余裕でいられるんだな。……お前らの処遇は知らねえ。奴隷として売られるか、男達の欲求の吐け口にされるか、宗教の教団の女にされるかのどれかだろ」
そこまで言って、男は震えながら息を吐く。
「……俺が知ってるのはこんなところだ。俺らは強制的にやらされただけだ。俺も復讐しようなんか思わねえよ」
「……いいでしょう。して、その教団とは?」
「ーーアンドゥー教」




