1/5
00.0
… … …
この物語は。
いや、『物語』なんて銘を打つのもおこがましいかもしれない。
この先に整然と並ぶ文字群は、ある一人の少年が綴った日記を、僕が小説調に書き下した作品だ。
事実より奇なる小説を目指してあちこち手を加えてみたが、しかしいかんせん元が日記であるため、どうしたって内容が単調になってしまう。
ただ、日記を綴った人物が彼であったのはせめてもの幸いだろう。お陰でこの作品は、愉快な学園生活あり、濃密な恋愛あり、猟奇的な事件あり、殺人あり、生あり死あり、山あり谷あり波のあるものとなった。
彼は、彼の父親が死んだことを機に日記をつけ始めた。彼自身が綴る彼の日常は、つまりそこから幕を開けることになる。
もしも興味があるようなら、少なからず数奇な運命を歩んだ彼の日記に、彼の日常に、少しばかり目を落としていただきたい。それが、今もこの作品の新頁に筆を走らせ続けている僕の、僅かばかりの望みである。
僕の出番は、少し後になりそうだ。
…佐川時計