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黒剣の魔王  作者: ニムル
第1章 センシタリア王国編
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第32話/全てを見通す目

( 厂˙ω˙ )厂遅くなってゴメンなの

 帝国と王国、そして魔王国の三国同盟が発足したわけだけども、魔法の地図上にはずっとここに存在している暴食の姿をなかなかどうしてかつかむことが出来ない。


 帝国と王国の2カ国ともに数ではそれほど大きな被害を被っている訳じゃあないけれども、失った人間の力は強すぎたようだ。


 むしろ何の実害もなかった魔王国はここにいることを一部の人間から煙たがられているが、王と帝王、そしてクトゥルフの働きかけでなんとかはぶられないで住んでいるのが現状。


 帝王に特段好かれる理由はないのだろうけれど、その辺は王とクトゥルフがコネでも作ってくれたのだろう。


 長年閉じこもっていて今の王国の人間は外交なんてできないと思っていたのだけれどもよくよく聞いてみると、俺達が現れる前の王国は7つの自治区があったらしく、しかも自治区一つ一つが国のような働きをしていたのである程度外交らしきものはしていたそうだ。まあ要するに、国土にバチカン市国みたいのが7つあったってことだろうね。よくわかんないからそう思うことにする。


 クトゥルフが大罪の存在に気づけたのは、その自治区のうちひとつの頭が予言のスキルで知らせてきたからだという。その予言があったために今年の魔王討伐は勇者の魔王討伐の時期に近くして洞窟内に大罪がいないかを確認しようとしたそうだ。


 まあそりゃそうか。勇者がおめおめと負け帰ってきたわけだから魔王より強い奴がいたんじゃないかって心配するよな。でもそれだったらステラたちは速攻死んでると思うんだけどね。一宮君ですら傷をつけられればいいとこだろうと自分で言っていたくらいだ。


 剣士より弱い勇者さんは一瞬にしておなくなりしていただろう。


 2000年ある鎖国王国の歴史で大罪の襲撃は2回。その2つともどこからか現れたその時代の魔王と先代の勇者が共闘して大罪を討ったというが、どちらも千年以上前に起こった話。最近の大罪は過去の大罪とはまた別の大罪という組織らしい。


 過去の大罪は悪魔の名を冠した聖国教会の反対派司教たちで、【憤怒(サタン)】【色欲(アスモデウス)】【強欲(マモン)】【暴食(ベルゼブブ)】【虚飾(グリフォン)】【傲慢(ルシファー)】【憂鬱(ベルフェゴール)】【怠惰(フェニックス)】の8人が居たが【憂鬱(ベルフェゴール)】と【虚飾(グリフォン)】以外の大罪は戦いによって死亡し、生き残った二人も姿をくらましたそうだ。


 なぜ二人だけ生き残ったのか、それは言い伝えでは大罪を裏切り他国を攻撃しに出払っていたからだと言う。


 確かにそれならば過去に王国に二度来ていることもうなずけるだろう。


 それにしても、話して本当にまだこの国に大罪がいるのだろうか。


 その辺が一番大切で、一番わからないことだ。


 地図自体は魔法で作られた高度で精密な地図だということが発覚したけれど、テュポンの何をモデルにして追っているのかがわからない。


 もし服で追っているのだったら気づかれて手放されているかもしれない。持ち物の場合も同じだろう。


 しかも俺たち魔王国の目的はやつを生け捕りにして、元の世界への帰り方を知らないか聞くことだ。


 世界移動のことを知っている可能性があるのは、様々なところに神出鬼没に現れる彼らだろうという考えからだが、それでも彼らが、元の世界に帰る方法を知っているかどうかはわからない。


「だからいちいち探すのって面倒なんだよな、最悪のケースを考えちまう」


『それはあんたの勝手な考えでしょうが』


 唐突にヘスティアたんが具現化してきたのでめちゃくちゃビビった……


「うーわっ、ヘスティアたん冷たい〜」


『……黙らっしゃい。あんたの口、溶接して二度と開かないようにしてやろうか……』


「ヘスティアたんに『冷たい』は駄目だったか、じゃあ『処女ババア』で」


『じゃあで出てくる単語じゃないわよね……前よりひどくなってるわ……』


 勝った、計画通り(無計画)。


『まぁもういいわ。口の溶接は確定したし』


「え、ちょっとまて」


『あんたが困ってそうだったから、中から人探し得意そうなやつを引っ張り出してきてあげたのよ』


「いや、それはありがたいけど溶接……」


『さぁ、テュポンとやらを見つけたげて! ウアジェトちゃん、行ってらっしゃい!』


 そうヘスティアたんが言うと、蛇の装飾があしらわれた緑のパーカーを着た可愛らしい女の子が現れた。


『……私はすべてを見通す目であって、便利屋じゃあないんですけどね……』


「そうか、『ホルスの左目』か」


『……しかも私自身が目というかなんというか……』


『とりあえず見通せることは確かでしょう!? さぁ、テュポンとやらを見つけて!』


「大荒れだよおい、なに、久々にヘスティアたんが頭働いてると思ったら無理やり連れてきちゃったの? ダメじゃん悪いことしちゃ」


『……いや、まぁちゃんと与えられた仕事はこなしますから……喧嘩は、やめましょ?』


『ほ、ほら! この子もこういってるじゃないの! ね、ねぇ!?』


 いやぁ、ヘスティアたん、そこまで行ったらただのお節介ババアだよ……


 ウアジェトちゃんが困っちゃってるし……


『では探します。


ー天眼ー』


 彼女がそういうと、視界が急に空に引っ張られてすぐさま地上に戻った。


 しかし戻った場所は元の自分たちがいた場所ではなく、近くの宿屋でいびきをかきながら寝ている、紅の髪を持った少女の姿を見下ろすような状態で視点が固定されている。


 少女は何も言わずにふと立ち上がると、どこかに電話でもかけているかのように親指と小指を立てた手を耳に構えて喋り出した。


「おいっ、いつっになったらこの街の聖遺物とりにいくんだよっ! 安里(あんり)、俺はこんなっ宿にずっとこもっていんのは嫌っだぜ?」


 まさかの視点を下ろしただけで音まで拾うことができるようだ。なんて素晴らしきかなチート能力。


 よいこは真似しちゃダメ、絶対。


『まあまあ。そんな焦らないでよ、リリカ』


 それにしても、テュポンを探しに来てこんな女の子にたどり着くとは。そんな簡単に尻尾を出すようなやつではなかったってことか。


『そうだぞリリカ、暴食としての義務を果たしてよ……曲がりなりにも君は暴食の大罪なんだからさ、なんかもっとこう、あるだろ? 出来ることとかさあ……』


 やばいフラグがビンビンたってりゅうううう。


 何もやってないのに敵さんたちが勝手に情報公開してくれちゃう誰得展開。おいマジでこっち来てからファンタジーよりもギャグ色が強いんだけどどういうこと?


 絶対こういうのってだんだんわかってくるやつだよね? たまたま手に入れた能力でたまたま出来ちゃったって、どこの無自覚俺TUEEEE野郎だよ、俺だよ……


 ねえねえ本当に行っているのかな。もしかして俺のことに気づいていてあえてこうしているって可能性も、あるよね? ね?


 ちょっとマジで敵さん方がチョロすぎてやばいんだが。一体全体どうしてこんなに魔法が発達している世界でこんなにガバガバのセキュリティの中、今後の方針会議なんてしているんでしょうね。あれなのかな、もしかしてこいつらは本当はただの下っ端で本物は別のところにいるとか。


『おいっクソキチガイっ野郎。てめえがラグナロクの時の神どもを引っ張れなかったからっ今わざわざこんなっことしてんだぞっ』


『そういう君だって結局、任務だったはずの黒腕の回収に失敗してここに逃げてきたんだろう? そんな君にとやかく言われる筋合いはないんだけどなあ……あとクソキチガイ野郎は割と褒め言葉かもしれない……ひひっ、ちょっとゾクゾクしちゃったよ……♡』


『気持っち悪い事っ、言ってんじゃねえよ、ったく……お前、憤怒担当のはずなのに、全く起こったとこっ見たことねえっよ……』


『そうさ? 僕は心がとっても広いからね……何事にも寛大で常日頃様々な人々に信頼されるこの僕に、どうして憤怒の刻印が反応してしまったのか……今でも不思議だね……』


『まあそれだけ君に憤怒の才能があったということだろうね、シュウヤ。ただしロキとしての役割を怠ることを私は絶対に許さないから。あとリリカをいじめることも絶対ね』


『はいはいボス。仰せのままに……』


『では君は王国の南端にあるはずの洞窟へ向かった新入りくんを少し見てきてあげて』


 ん!? もしかして俺たちの自宅のことだろうか。だとしたらまずいな……ユミルさんに霧をかけておいてもらおう。そしてあーさんたちをつけて防衛。


『わかったよ……じゃあ言ってくる』


 ……さあ、こちらも今得た情報を王国と帝国のトップ達にお伝えしますかね。


 そうして俺はウアジェトちゃんの能力を停止して、テレポートで両国のトップたちにここで見聞きした情報を伝えるために魔力の展開を解除して、ヘスティアたんとウアジェトちゃんの実体化を無効にした。


 その場所を少し離れて双極宮に向かっている時、ふと近くであの黒いモヤの気配がした気がした。

(厂˙ω˙ )厂読んでくれてありがとうございます!



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