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64話

格子状になっている鉄の扉が上に上がっていくとタクトの前に円形のステージが姿を現した。四方から贈られる拍手を全身に浴びながら中央へ歩を進めると対面の扉が開き二足歩行の蜥蜴が出てきた。リザードマンと呼ばれるモンスターでタクトがパドックの相手に選んだモンスターでもある。明日カグヤが闘技大会に参加する予定になっているのだがその見物がてら下見に来たらカグヤの思い付きでタクトも参加する事になってしまった。あまり乗り気ではないが客席から応援してくれているカグヤの期待には応えたい。タクトは腰から剣を抜くとリザードマンへと斬りかかった。リザードマンも刺又を振り回し応戦してくる。剣の倍以上のリーチを持ってはいるが日頃からカグヤとの特訓をしてきたタクトにとって見切るのは容易く難なく間合いの内側へと入り反撃に転ずる事が出来た。

タクトが剣を振るとリザードマンの腹が裂け血が吹き出す。苦痛のが鼓膜を震わせるが追撃の手は止めない。次々にタクトの剣がリザードマンの体に傷を残していくがリザードマンもただやられているばかりではなかった。タクトの攻撃の隙をついて丸太のように太い尻尾がタクトを凪ぎ払った。地面を転がり片膝をついてリザードマンを見据えた。細く二股に別れた舌をチロチロと伸ばしている。リザードマンが刺又で攻撃してくるが先程までの勢いはない。タクトは攻撃を避けリザードマンの腹へ剣を突き刺し止めをさした。


「七十四番人気で三百二十倍になってるよ」

パドックの戦いを終えるとカグヤからオッズの報告を受けた。この大会に参加している人は九〇名。後ろから数えた方が早い順位だ。オッズが高いということはタクトに賭けた人が殆どはないということ。賭けに参加しているほぼ全員の人から弱いと思われたということだ。他人のパドックの戦いも観戦したが選んだモンスターに負けた人や自分よりも苦戦している人が大勢いたように思う。その中でこのオッズがつけられたのは悔しかった。

「因みに一位の人が一.二倍で私も千ギル賭けてきちゃった!」

「………僕にはいくら賭けてくれた?」

「……えっ、あぁー…ひゃ…百ギ……ル……………」

「カグヤさぁん!?もっと期待してぇ!」

「ご、ごっめーん。で、でも賭けだから勝ちそうな人に賭けるのは普通だよ。ほらほら次の試合にいかないとっ!」

カグヤに背中を押され次のAからFまで六つある試合会場の一つのC会場へ続く通路へ押し込まれた。通路には同じくC会場で争う選手が数人いる。十五人でのトーナメントが六つの会場で同時に行われ優勝、準優勝の二人が最終トーナメントに進める。他の選手の実力は定かではないがせめて最終トーナメントには残り見返してやろうと闘志を燃やし通路を抜けC会場の地面を踏みしめた。


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