65話
C会場から出てきたタクトは肩を落としながらカグヤの隣に並んだ。目の前のモニターには各会場の決勝戦が映し出されていた。
「さっきの試合惜しかったね。」
「全然惜しくなかったよ。完全に手も足も出ずに完敗だったの見てただろ?」
準々決勝まで駒を進めたタクトだったが槍を使う一回り年上の男性に負けてしまった。
「リザードマンも長物の武器だったのにどうしてこうも違うんだ?」
「簡単だよ。リザードマンは振り回すだけだったけどさっきの男性は槍を使いこなしていたからね」
確かにそうだ。リザードマンの攻撃は単調で見極めるのも簡単だった。しかし、さっきの男性は槍という武器の長所を完全に生かした戦い方だった。
「相手が知的な生物であればあるほど武器の長所短所が大きくなるからね。」
自分の実力不足経験不足に気付き項垂れるタクトを励ます様に肩に手が添えられる。
「………カグヤはどうして双剣を選んだの?」
「う~ん…カッコいいから?」
「そ、そんな理由で…」
「うそ。うそ。理由は簡単だよ。両手で剣を握れば攻撃力二倍。一度に二匹殺せるから。」
そう答えたカグヤの顔は少しだけ寂しそうに思えた。一度に二匹殺せるのはメリットでありデメリットでもある。盾を持たないため攻撃特化であること。それに加えカグヤの戦闘スタイルは自分からの攻めは最小限でカウンター狙いが多い。より多くの敵を、より少ない手数で殺すためにカグヤなりに見つけたスタイルなのかもしれない。けど、それはカグヤがずっと一人で戦ってきた証明であるのかもしれない。共に戦ってくれる人がいなかったから一人で多くの敵を殺せる方法を見つけなければいけなかった。二つで一つの双剣を使っているのももしかすると共にいられる仲間が欲しかったという心の現れなのかもしれない。
最終トーナメントの中継を始まると場内の熱気が高まった。この試合にも大勢の人がお金を賭けている。一つの試合に決着が着く毎に
哀愁を纏った人間の数が増えていく。タクトの隣にも試合の結果を呆然と眺めているカグヤの姿があった。
「一番…人気に賭けたのに……」
¨そもそも不幸を齎す『忌み子』が賭けをすること自体無謀なのでは?¨と価値の無くなった券を見ながら呟くカグヤを見て思ったが言葉にすることは出来なかった……。
「そこのアナタ!顔を見せなさいっ!!」
威圧的な口調が聞こえたかと思うとタクトの両頬に手が添えられ強引に横に向かされると金髪で鋭い眼光の女性がいた。彼女の周囲にはボディーガードらしき女性が数名おり集まってきた野次馬達を警戒しおかしな行動をしないように牽制している。
「アナタ、C会場のトーナメントで戦っていたわよね?」
タクトの頬から肩に手を置くと金髪の女性は満足気な笑みを見せた。
「アナタ、私に拾われなさい!!」
「……は?」
拾われろ?何を言っているんだ?自分のものになれと言いたいのだろうか……?
「……拾われる訳ないでしょ!!」
カグヤが二人の間に体を滑り込ませるとボディーガードの女性がダガーの鋒をカグヤに向けた。向けられたダガーには一切目をくれず金髪の女性を睨み続けるカグヤ。その視線に応えるように金髪の女性はボディーガードを下がらせカグヤの首に手を絡ませると耳元で囁いた………。
「アナタじゃない。私が欲しいのは彼。彼の力……いえ、彼の持つ異世界の力が欲しいの。」
「異世界の……力!?」




