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5話

翌日、陽が昇ると同時にタクト達は行動を開始した。人のいる集落、最低でも食料と安全な寝床は暗くなる前に確保しておきたいので時間が

惜しかった。

「問題は前後左右どこへ向かうかだよね…」

タクトは項垂れた。360゜森に囲まれ東西南北すら分からない。下手をすれば更に深くに迷い込む恐れがある…

「任せてっ!!」

カグヤが意気揚々と近くの木に向かった。木に向かい右手で剣を振うとその木は根本の部分から倒れていく。流れる様に振るわれた剣はかなりの速度で目で追うのがやっとだった。今は戦闘中ではないし、双剣であるにも関わらず片方しか使ってないことを踏まえるとカグヤはかなりの手練れだと推測できた。カグヤは綺麗な切り口の切り株を覗き込んだ。

「確か『年輪』って言うんだよね」

カグヤの隣に並び切り株を見て彼女が何を見ているか察した。

「この年輪の成長具合で方角が分かるって聞いたことあるよ。確か日の当たる方が大きくなるんだからこっちが南だよね?」

タクトは以前得た情報を得意げに披露した。彼女のしようとしていることを察したタクトは自分も知っているとアピールし、良いとこを見せたくなったのだ。

「タクト……それ、ウソだよ………」

タクトは誉めの言葉を期待していた。よく分かったね、とかよく知っているね…とかを。ところがカグヤは知識の否定と残念なものを見る哀れみの視線が返ってきた。

「で、でも…そう聞いたし………」

「聞いたものでもウソはウソだから……。」

「じゃあ、何を見てたの?」

「年輪だよ。ただそこから分かるのは方角じゃなくて地面の傾き具合」

そういうと彼女は同じように木を切り年輪を確認していった。

「斜面を確認してどうするの?」

「斜面をおりれば平地に着く、平地なら人里があるかもしれないし、なくても川を探して流れにそっていけばいつか着くかもしれなつでしよ」

「こっちだよ!!」

カグヤは満面の笑みで年輪が広がっていく年輪が示す同じ方向を指差すと歩き始めた。


タクトはカグヤの3メートル位後ろを歩いていた。森に入った時はすぐ後ろにいたが疲労により少しずつ歩く速度が落ちた為だ。森の中は足場が悪く大きな石や木の根、登り下りの斜面によりタクトの体力は瞬く間に削られた。

(あの細い体でどんだけ体力があるんだ!?)

細い腕で剣を振り回し邪魔な枝を切り落とし、細い脚で軽快に獣道を歩いて行く。鍛えておけばよかったとタクトは思った。タクトが遅れている事に気づきカグヤは歩く速度を合わせてくれた。


どれだけ経っただろうか?一本の木を見てカグヤは足を止めた。その木には赤い実がなっていた。

「タクト、あの実採れる?」

「食べれるの?」

「多分…。昔食べた果物に似ているから大丈夫だと思う」

食料が無い今食べれる可能性があるなら採取する価値は十分在ると思う。ただ、問題は木登りをしたことが無いのと体力の限界が近い事だった。

「疲れてるのにゴメンねぇ!でも、私…その…ス、スカートだから登ると…」

カグヤはスカートの裾を抑えながら顔を赤く染めていた。その姿を見たタクトは木登りを決意した。一本一本、枝の強度を確認しながら慎重に登っていく。半分程登ったとこで1個目の実を採取出来た。その実をカグヤ投げ渡すと器用に剣で赤い皮を剥くと黄色の果肉が姿を表した。カグヤはその実を齧り食べられそうかか確かめた。それを木の上から確認すると残りの実を全て採取し、木から降りた。1個目の果物を分け合い休憩を取った。タクトは木の根本に座り木にもたれ掛かると、カグヤも隣に立ち木に背中を預けた。


休憩を終え歩く速度も多少上がっていた。スマホを見ると出発してから6時間経過していた。あと3時間程度で日が沈むのでそれまでに森を抜けたいという思い速度を上げるエネルギーとなった。


そして、その時は唐突にやって来た。スーツ姿の男性を引き摺る3匹のゴブリンに遭遇したのだ。スーツの男性の体には何本もの矢が刺さっており首には短剣が刺さっている。一目で死んでいることが分かる。ゴブリン達はコチラに敵意を向けている。始めて感じる死の恐怖にタクトは震えた…。


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