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第484話 奄美大島から来た男 1

 朝、脳外科外来に出勤したら見慣れぬ青年がいた。


「おっ、医学部の学生か」

「ええ、6年生です」

「色が黒いけど東南アジアの出身とか?」

「近いですね、奄美大島からなんで」


 肌の色が黒くて彫りの深い顔をしている。

 いかにも南方系だ。


「奄美大島ということは、ハブがいるわけだ」

「全然いますよ」

「捕まえて役所に持って行ったら買ってくれるんだろ」

「ええ、1匹1万円くらいです」


 実はウチのナースにも奄美大島出身者がいる。

 彼女の父親はハブを捕まえては役所に持って行くらしい。

 でも、以前は5,000円だったのが徐々に値段が下がって、今では3,000円なのだとか。

 たまに返り討ちにあうことを考えると安すぎてやってられん、とか。


「先生はなんでそんなに奄美大島に詳しいんですか」


 たまたまやって来た女性レジデントに尋ねられた。

 そりゃあ長いこと人間をやっていたら無駄な知識ばかり増えていく。


「奄美大島に住もうと思ったらハブに注意しないといけないな」

「ええ、夜道では木の枝を踏まないように言われてます」

「木の枝と思ったらハブだったりするのか!」

「そうなんですよ。車で走っている時も窓を閉めておかないと」

「まさか……窓を開けていたらハブが飛び込んでくるとか」

「飛び込んできますね」


 やはり現地人の話はリアルだ。


「実は近所の病院でアルバイトをしていた時にハブに咬まれた人が担ぎ込まれてな」

「こんな本土の都会にハブがいるんですか!」


 医学生とレジデントの両方が目を丸くしている。

 この話は以前にカクヨムでしたかもしれないが、まあ聞いてくれ。


「その人、ハブ酒をつくっているオヤジでさ」

「ということはあの瓶の中のハブは本物なんだ」

「そういう事になるな」


 ハブ酒ってのも怪しい商売だ。

 オレなんか、そこら辺のヘビを入れていてもバレないだろう、と思う。

 でも、本物のハブを使っているのはオヤジなりの誠実さかもしれない。


「『ヒメハブやなくてトカラハブや。早いこと、指を落としておくなはれ!』とか言われて」

「確かにヒメハブには毒はありませんからね」

「でも、そんな専門用語を急に言われてもこっちも分からないだろ」

「どうしたんですか」

えずオロオロした」

「そんな馬鹿な!」


 しかし、ネットというものが存在しない時代。

 オロオロする以外に何ができる。


「奄美大島だったらどの医療機関にも血清が置いてありますよ」

「それで大学病院の救急や近くの動物園に電話してみたわけ」


(続く)



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