第184話 大声で怒鳴る男 2
怒鳴るオッサンにオレは尋ねた。
「実際には治るのに1ヶ月くらいかかったとか?」
「そうや」
「にもかかわらず2週間の診断書だったということですね」
「それ、無茶苦茶やろ」
硬軟のうち、とりあえず硬の方で対処しておくか。
「どうやらウチには1回しかかかっておられないみたいですけど」
「そ、それがどうかしたんか」
「他所の病院にかかっていたんですかね」
「そうやったかもしれん」
「だったらそちらの病院で追加の診断書を書いてもらっても良かったんじゃないですか、『全治1ヶ月』って」
このテのやりとりは何十回やってきたか分からない。
「いや、他所にはかからんかった。ここだけや。せやからここの診断書がすべてやったんや」
「なるほど。じゃあ、2週間経った時点でまたウチを受診してもらっていたら診断書を新たに発行することもできたのですけど」
「そやけど最初に2週間て言うとるやないか」
「よく見てくださいよ。『2週間の通院加療を要する見込みである』と書いていますよね。『見込み』なんで、最初に2週間と書いても、それが絶対というわけではないんですよ」
「何をぐじゃぐじゃ言うとんねん!」
オッサンは一段と声が大きくなる。
怒らせてばかりいても埒が明かないので、助け船を出すことにした。
「まあ、体が痛すぎて病院に来ることもできなかったという事でしょうか」
「そ、そや」
この辺から硬軟の軟を使うとするか。
「御本人にしてみたら1ヶ月も痛い思いして、罰金5万円ってのは納得いかないですよね」
「そらそうや」
「5万円払うからこっちが殴らせてくれって言いたいくらいでしょう」
「いや、そこまでは言わんけどな」
ちょっとは冷静なところもあるのかな、このオッサン。
考えてみれば気の毒な話には違いない。
「5万円ってのは安すぎですよ、私もそう思います」
「そやろ」
「それで検察に怒鳴り込んだら上手くあしらわれたわけですね」
「まあ、そういうことかもしれんな」
検察の方が海千山千だったというわけだ。
「検察の担当者もね、『こんな裁判はおかしい』と言わずに診断書のせいにしたわけですよ。つまり、自分たち検察も裁判所も非難されないように、外部に理由をこじつけたってことですね」
「お、おう」
「担当者にしてみたら赤子の手をひねるみたいなものだったんでしょうね。いやあ、同情しますよ」
オッサンはだんだん大人しくなってきた。
そろそろ、こちらも外部に理由をこじつけるタイミングだ。
(次回に続く)




