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第164話 四人部屋に詰め込まれた男

 その昔、勤務している病院グループの合宿研修があった。

 本部の偉いさんが発案したもので、将来のリーダーを育てようというものだ。


 で、オレも呼ばれたが、幹部候補生としてではない。

 ファシリテーターとして研修のお手伝いをするためだ。


 多くの病院から数十人が参加するため研修場所の手配が大変だったらしい。

 結局、国立ナントカ研修所というところに落ち着いた。


 なにしろ国立の施設だから、ある種の非日常が期待できる。

 朝夕は全員(そろ)ってラジオ体操かな。

 そして国旗掲揚(けいよう)と国歌斉唱(せいしょう)もあるはず。


 ワクワク感がおさえられない。


 パンフレットを見ると、タオルと石鹸は各自準備せよ、とある。

 まさに謎の規則、オレが期待していた通りだ。


「国をめとったらアカンぞ!」


 本部の偉いさんに言われた。

 妙に説得力のある関西弁だ。


 めるだなんて滅相めっそうもない。

 どんな昭和の経験をさせてもらえるのか。

 ただただ、待ち焦がれるのみ。



 ところが、研修場所が突然変更された。

 とある企業の研修施設だ。


 有名な保養地に建つ立派すぎる建物。

 オレが楽しみにしていた昭和体験はどこに行っちまったのか……


 ガッカリしていたところに朗報があった。

 研修受講生たちは個室だが、オレたちファシリテーターは四人部屋に詰め込まれるらしい。


 むさ苦しい中年のオッサンが四人部屋!

 別の非日常が期待できるぞ、これは。



 というわけで合宿研修本番。


 オレたちは講義や実習の準備、後片あとかたづけでクタクタ。

 1日が終わったら酒をくらって大部屋に戻って勝手に寝る。

 そんな大変な日々であったが、オレは結構エンジョイした。


 とはいえ、オッサンの四人部屋はキツイ、という意見もあったようだ。

 次の年からファシリテーターは近くのホテルに宿泊ということになった。


 考えてみれば、若造わかぞうのオレは幹部候補生たちの尻を押し上げる役。

 でも、ファシリテーターの中には引っ張り上げる側の病院幹部たちもいたわけだ。


 あれから10数年。


 今、タオルと石鹸持参とか、四人部屋とか言われたら、確かにキツイ。

 非日常を楽しむどころじゃない年齢になってしまった。


 それにしても、あの時の幹部候補生たちは順調に出世したのだろうか。



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