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第986話 渡米する女 3

 やらなくてはならない事の1つはGREの受験だ。

 GREというのは Graduate(グラジュエート) Record(レコード) |Examinationイグザミネーション の略。

 米国の大学院に入るための共通試験という位置づけだ。

 これは文系か理系か、あるいは修士課程か博士課程かに関係なく、大学院を目指している全員が受けなくてはならない。


 幸いな事に日本では1年間で複数回受けることができる。

 が、なんせ妻は忙しかったので1回しか受験のチャンスがなかった。


 そのたった1回しかない受験で大失敗をしてしまったのだ。

 妻が、というよりこのオレが。


 事の経緯はこうだ。


 当時のGREの試験会場は某市のインターナショナルスクールになっていた。

 オレの実家から近かったので「そこなら良く知っているから、車で送ってあげるよ」とオレは安請け合いしたのだ。

 しかし、何年か前にそのインターナショナルスクールは引っ越ししていた。

 これが第1の失敗。


 幸い、前夜に何気なにげなく見た地図で引っ越しの事実を知ったオレはあわててその場所を頭に叩き込んだ。

 当時はカーナビなんか普及していなかった時代なので地図と記憶が頼りだった。


 2番目の、そして最も大きな失敗は車での所要時間を甘く見てしまった事だ。


「高速道路を使ったら1時間くらいで着くはず」とオレは軽く考えていた。


 渋滞なしなら1時間もあれば十分だ。

 しかし平日の朝、高速道路といえども渋滞が起こらないはずがない。


 今だったら1時間で着くと思っても2時間前には家を出ただろう。

 でも、当時は何事も経験不足の若者、いや馬鹿者だった。

 目的地が近くなるに従ってひどくなる渋滞に冷や汗が出てくる。

 ついには途中で高速道路を下りて、裏道を飛ばしに飛ばした。


 にもかかわらず会場に着いたときには15分遅れ。


 遅刻で入れなかったら、そのまま帰路につかなくてはならない。

 車を降りて入口に走っていく妻を見送りながら「オレはこの世で1番の大馬鹿野郎だ」と自己嫌悪に陥っていた。


 果たして妻は会場から走って戻って来た。

 そのまま妻を乗せて帰宅かと思いきや……


「受験人数が多すぎて受付が大混乱しているのよ。試験開始は30分遅れみたい」


 それを聞いたオレは「オレは世界一ラッキーな人間だ。神様ありがとう!」と喜んだ。


 GREの試験会場では、なんと妻が以前に英会話を習っていた講師も受験していたのだそうだ。


 妻によれば日本の大学受験で鍛えた学力をもってすれば、楽勝とのこと。

 しかし、最初から最後まで英語で書かれている試験問題および解答用紙に苦戦させられた。

 全世界で行われている試験だから、日本語が見当たらないのは当然なんだけど。


 英語での読み書きはどうしてもネイティブスピーカーに比べて遅くなる。

 だから時間不足に悩まされた。


 そんなわけでGREは出来たのか否か、よく分からないままだ。

 受けることが出来ただけでも良しとすべきなんだろう。


(続く)


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