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李斯転生 勝ち確?それとも絶対の無理ゲー?  作者: 杠煬
第4章 嫪毐の乱

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34/34

34 三者三様

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。


前世の記憶(ネタバレ)による多少の補正がかかっている可能性もあるが、三人の武将にはそれぞれ三者三様のキャラクターが感じられる。



「長信侯が何を企んでいようが関係無い。謀反の意思があるのなら雍へ乗り込んで叩き潰すまで。相邦様、是非とも我に先陣を」



と勇ましくもやや強引な意見述べるのが蒙武。

例えるならまさに矛、何物をも貫く攻撃型の武将だ。



「いやいや待たれよ。安易に太后宮へ攻め入るなど、長信侯が太后殿下を人質に立て籠(こ)もったらどうなさるおつもりか?ここは寡兵を以て長信侯を雍よりおびき出し、太后殿下の御無事を確認してから長信侯を討つべきだ」



そう反対意見を述べたのは王翦。

後(のち)の楚攻略戦で見せたような慎重且(か)つ堅実な考え方をする。

先程の例えを引き合いに出すなら、今度は守りを重視した盾ってところか。



うん、だけど待って。

君達、相邦様(じょうし)の話をちゃんと聞いてた?



上司(おいちゃん)が尋ねたのは、「嫪毐が何を考え、今後どのような手を打ってくるのか考えてみて」ってことだったよね?

何で討伐戦の仕方で議論してんの??



議論の軌道修正をしようと俺が口を開きかけたタイミングで、三人の内の最後の将、樊於期が静かに、それでもはっきりとした良く通る声を上げた。



「侠や破落戸(ごろつき)以外にも、兵を集める当(あ)てはございます」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




樊於期のその壮絶な人生について、少し前世の記憶(ネタバレ)を確認(おさらい)しておくとしよう。



秦の将であった樊於期はある時、秦王嬴政の怒りを買ってしまい燕へと亡命する。

どのような理由で秦を出奔することになったのかは不明だが、一説には嬴政が推し進めていた様々な改革が、いささか性急に過ぎると批判したためであるとも言われている。



うんまあ嬴政も頑張ってはいたんだろうし.......多分、意見されてカチンときたんだろうな。

樊於期は樊於期で、嬴政が絶対権力者であるという「大前提」を甘く見ていたのだろうとも思うし。

いつの時代でも、宮仕えってのは命懸けなのさ(涙)



.......

.....

...



で、樊於期が亡命した燕において、新キャラが二名追加される。

それが燕の太子である丹と、侠の荊軻だ。



丹ってのは燕王喜の息子で、かつて趙へ人質に出されていたことがあり、その頃に趙に住んでいた嬴政とも面識があったのだという。

なにせ嬴政は、彼の父親(子楚)が趙に人質となっていた頃に生まれた子供だからな。



それから数年が経ち、丹は今度は秦へと人質に出されるわけなのだが、その頃には既に秦王となっていた嬴政に粗略に扱われ、まあ言わば見下されたのだという。

んでプライドをいたく傷付けられた丹は、あろことか秦を脱出して燕へと戻ってしまうのだ。



丹とていずれは燕の王となるわけだから、一方的に格下扱いされて不快だったってのは分からんでもない。

だがいくら頭にきたからといって、勝手に帰国するのは完全な悪手。

我慢を知らぬ自分の幼稚な行いは、れっきとした国際問題であるという認識が無かったのだろう。



それに秦の側に立ってみれば、嬴政の振舞いは、ある意味当然だとは思うんだが。

片や一大強国の君主、片やそこそこの国とはいえ殺される可能性すらある人質。

嬴政としても群臣の手前、ナメられるわけにはいかなかっただろうしな。



そんなわけで「嬴政憎(にく)し」となっていた丹は、秦から亡命してきた樊於期を、周囲の者達の反対を押し切ってまで匿(かくま)うことになる。



.......

.....

...



暫(しばら)くは何も無かったんだが(いやまあ秦からの圧はかなりあったとは思うが)、丹としてもようやく彼我の力の差が分かってきたようで、正攻法では、どうあっても嬴政に意趣返しをすることは出来ないと気付く。



だが諦めの悪い丹は、「戦をしても勝てないならば、刺客を送って暗殺すればいいじゃん!」なんていう幼稚なことを思い付いてしまう。



これまた実に短絡的な思考回路で、失敗した際のリスクの大きさをあまり考えて無かったようにも思えるんだが。

仮に首尾良く嬴政を暗殺出来たとしても、既に法治国家としてのシステムが完成しつつあった秦であれば、多少の内戦は起こるだろうが、すぐにでも次の王が立ち、今度こそ燕は全力で滅ぼされただろうしな。



ま、それは兎に角、ここで刺客として選ばれたのが荊軻だ。



もっとも荊軻とて、最初は断ったらしい。

侠の世界に生きる者が命を惜しんだってわけでは無いだろうから、やはり丹の人柄が気に入らなかったんだろう。



嬴政の暗殺がうまくいったところで荊軻自身はまず生きては戻れぬだろうし、そんな任務を任されるのであれば、丹とて自らの命を懸ける程の覚悟を見せる必要がある。

その割には、美酒佳肴に美女と金品なんかで歓心を買おうとした節があるんだ。



侠ってのは、使う者でも従わせる者でも無い。

「士は己を知る者のために死す」って言葉の意味を理解せずに侠と付き合うのは、徒(いたずら)に歴史に汚名を残す羽目になるってことだな。



.......

.....

...



で、この荊軻が秦へ赴(おもむ)くに当たって丹に要求したものが二つある。

それは、確実に嬴政に拝謁するための手土産だ。



一つが燕の肥沃な領地である督亢の地図、もう一つが樊於期の首。

そう、ここで再び樊於期の名が出てくるんだ。



燕に亡命した樊於期は、当然秦ではお尋(たず)ね者。

嬴政ならば確実にその首を自ら確認しようとする筈だ。



だが秦を追われた樊於期を一度は匿(かくま)っておきながら、今度は私怨のために利用するなど流石の丹でも出来はしなかった。

それゆえに荊軻は、丹には内緒で樊於期に会う。

そして計画を聞いた樊於期は喜んで自刎するんだ。



なんとも哀しい話だよな.......




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




さて、現在に視点を戻そう。

樊於期が静かに呂不韋の問に応えている。



「兵を調達する方法があるのか?」

「はい、少し時間はかかりますが、一つだけ現実的な方法がございます」



どれ、俺も傾聴するとしようか。



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