127話.進む迷宮攻略、第三層のボス『カマイタチ』
127話.進む迷宮攻略、第三層のボス『カマイタチ』
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一花たちとのパーティによる探索を数回経て、俺の攻略ペースは増した……、と言うには目に見えるペースアップはあまり無いが、明らかに探索のリスクを減らすことが出来ていた。その安全マージンこそが心の余裕にも繋がっている。それが大きい。
第三層にも攻略の手順といったものがある。第二層では『グラスウルフ』との戦いを出来るだけ避けて、つまりラビットとの戦闘を繰り返すことで攻略のフラグを建てる事が出来た。
「この方法を見つけた人は、俺のような臆病な人だったんだろうな」
ギルドに残された逸話によると、その人も俺と同じくソロで探索していたそうだ。そしてグラスウルフとの戦いを避けて探索していた結果、第二層のボス部屋を発見する事が出来たらしい。
攻略法さえ分かれば、他の人も次々と後に続いていく。そして第三層の攻略にもエンカウントがフラグになるのでは?と推測を立てるようになるわけだ。
だがそれもまた発見には時間を要した。何故ならフラグとなる魔物そのものがレアエンカウントだったからだ。
「うわっ……グラスディアの出現率、低すぎ?」
なんて古いネットミームが出てしまうぐらいには、グラスディアのエンカウント率が低かった。俺のように条件を知ってて、なおかつ探知系のスキルがあってもこれなんだから、昔の人はさらに苦労したんだろうね。
しかもグラスディア自体も結構強いしすばしっこいから、逃がさないようにしつつ仕留めるのは厄介な作業であった。ボス部屋のように閉鎖された空間でもないから、ソロで潜った時は取り逃がす事も多かった。
結局パーティで討伐数を稼ぎつつ、ソロでもこまめに倒していって、ようやくフラグを建ててボス部屋を見つけることが出来た。ちなみに今日はソロで来ている。
一花たちと一緒に潜れる日は残念ながらそんなに多くは無い。みんなそれぞれに仕事がある。一花は食堂のバイトで、白百合は陽乃下グループの宝飾部門でデザインと管理職を任されているそうだ。アイモはもちろん医者としての仕事があるし、アドバイザーとして頼りにしてるフェイは言わずもがなに忙しい。
「みんな凄いよな。俺も探索だけじゃなくて、他に仕事を探したほうがいいのかな?」
俺の足元でキュルルンと鳴いているクサツに語りかけてみたところで、ただ首を傾げられるだけであった。そりゃそうだけどね。仕事?なにそれ食べられるの?
結局俺は、今日もソロで地下迷宮に潜っている。今日は第三層のボスに挑む予定だ。『深體強化』のデバフは無しの万全の状態である。
この前パーティで探索した後に幾つか取り決めをした。その内の一つとして、『ソロで探索する時はデバフ無し』が条件となった。
「その分、探索をしない時やパーティで潜る時はオッケーにして貰えたからな。それだけでも良かったよ」
『深體強化』は使用すると、次の日に思うように動けなくなるという欠陥が有る。その欠陥も暫くして『鏡花』スキルで作った温泉に入ることで補えると判明した。その結果、普段の六割程度にはデバフ有りでも動けることが分かったんだけど、それでも危険なものは危険だ。
六割とは言うが、それは平均的にと言うわけではない。ふと力が抜けてしまう事もあれば、判断から動くまでに僅かなラグが起きてしまうこともある。そういった極端な不調も入れ、平均すると六割程度の能力、なのだ。
そんな事態も慣れによって少しずつ減らせてはいるんだけど、まだ油断は出来ない。今日のようにソロで潜る時や、気を引き締めないといけない魔物を相手にする時には、前日に『深體強化』の使用は禁止となった。アイモさんからの、まさにドクターストップであった。
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第三層のボスはなんと、初めての“魔法様スキル”を持つ魔物、その名も『カマイタチ』である。と言っても脚に鎌のようなものは付いてはいない。見た目がイタチのように見えることと、斬撃のような遠距離攻撃をしてくることからカマイタチと名付けられた。
ちなみに魔法様とは、魔法みたいな能力のスキル全般を指している。アイモの持つ『回復』のスキルなんかもその一つだ。
「また初めての魔物かよ……。どうなってんだよマジ」
第一層のボスだった『アンラッビー』程ではないが、第二層の『グラスディア』と今回の『カマイタチ』と実に三度目。三連続で初エンカウントの、さらにはレアエンカウントの魔物が、ボス魔物として召喚されてしまった。
運が良いのか悪いのか……。ボス部屋という限られたスペース、他に魔物が出ない環境という意味でなら運が良いのだろうが、ボス個体はステータスが大幅に上がるとなると運が悪いのかも知れない。
「みんなの厚意を断ってソロで来たのは俺なんだし、潔く覚悟を決めますか!」
みんなは仕事を休んで来ても良いと言ってくれていたし、みんなが集まれる時まで待っても良かったんだよな。とは言え時間も遅くなるし、ボスとは最初からソロで戦うつもりだった。それなら万全の状態で臨むから大丈夫だと一人で来たんだ。
それに、みんなが後ろで控えてくれているのは心強くはあるんだけど……。なんとなく気持ちが甘えてしまうと言うか、みんなの助けを期待してしまっている自分がいる事に、俺は薄々気付いてしまっていた。
これまで誰かと関わる事を避けて生きてきた。誰かを頼る強さより、一人で出来る事をよしとして、出来ない事には手を出さないように生きていた。その反動なんだろうか?
(誰かがそばにいる。その居心地の良さに、ついつい甘えたくなってしまうんだ)
それは人としての弱さなんだろうか?それとも人としての当たり前の気持ちなんだろうか?その答えはまだ出せそうにない。
心の靄を払うように足を踏み出す。カマイタチに近付こうとしたその時、紺色の風が俺の二の足を牽制するように足元に飛んでくる。まさに二の足を踏むかのように、俺は後ろに退がるしか道はなかった。
(これがカマイタチのスキル『風刃』か!!)
カマイタチの由来にもなったスキル風刃は、一花もたまに使う技だ。風属性の特徴でもある紺色の魔素を纏った斬撃を飛ばす遠距離攻撃だ。一花の場合は手脚の装備に付与された、カマイタチの魔凝核から力を引き出して放っているそうだが、それのお陰もあって見慣れてはいる。
だけど小型犬サイズのカマイタチ、下から地を這うように放たれるそれはなかなかに脅威だ。小さい魔物を相手するのは第一層のバット以来だろうか?ラビットよりも一回りか二回りは小さいカマイタチだ、下の方を見ながら戦うというのにもまだ慣れないため、なかなかに神経を使う。
ボス部屋の壁に当たった音を聞いた限りでは『風刃』の威力はそこまで高くはなさそうだ。これなら身に着けている装備の上からなら、大きな怪我には繋がらないだろうか?
(とは言えまともに食らうと動けなくなるか?)
耐久性には信頼のある“初期装備“ではあるが、攻撃の衝撃自体は自分で受け流す必要がある。それを怠ると行動に制限がかかり、防御や攻撃にラグが出てしまいかねない。
またカマイタチの身体が小さいのもなかなかにネックだ。動きも素早いと聞くし、攻撃を当てるのにも苦労しそうだった。
立ち回りと遠距離攻撃、防御と攻撃をどう組み立てるか?戦略的に動く必要がありそうだ。まるで将棋……。
「うわっと!危ねぇ危ねぇ……」
二発目の『風刃』をなんとか避けつつ、俺はカマイタチの攻略を考え始めていた。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.10
・深體強化 Lv.8
・身体器用 Lv.8
・進退強化 Lv.8
・待機妖化 Lv.6
・大気妖化 Lv.6
・鏡花 Lv.5
・気妖 Lv.6
・息 Lv.8
・気 Lv.8




