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自動転生と、放たれる魔球

 世界の最高神(謎のおじいさん)の悪ふざけは、瑛人たちだけではなく、クラスのもう一人の特異点にも及んでいた。

広金兼彦は、気づけば見たこともない巨木の森の中にぽつんと立っていた。

手には、現実世界で買ってもらったばかりのサッカーボール。脳は【脳内省エネモード】が常時発動しており、自分の置かれた異常な状況が全く理解できていない。

兼彦「あれぇ……? ここ、いつもの河川敷じゃないなぁ。緑がいっぱいだなぁ。サッカーしよっと」

ポフ、ポフ、と頼りない足取り(スピードE)でリフティングを始める兼彦。知力は最低ランクを突き抜けた【F-】。完全にただのボケた迷子である。

だが、この新大陸(島)は、そんなボケの通用する甘い場所ではなかった。

ズゥゥゥンッ!!!

巨木をなぎ倒し、兼彦の目の前に現れたのは、体長20メートルを超える『デス・ゴリラ(魔岩の巨猿)』。

戦闘力はパワーS、体力S。王都のギルド長が見たら絶叫して逃げ出すレベルの災害級モンスターが、新大陸の「ただの野生動物」としてそこにいた。

デス・ゴリラ「ルアァァァァァーーーッ!!!」

巨猿が、兼彦を肉片に変えるべく、時速200キロを超える速度で巨大な拳を振り下ろす。

衝突まで、あと0.1秒。常人なら死を自覚することすらできない、絶対的な「命の危機」。

その瞬間――兼彦の脳内で、パチリと何かのスイッチが切り替わった。

【固有スキル:自動覚醒スイッチ・発動】

兼彦の焦点の合っていなかった瞳が、ガラリと冷徹で鋭い「超天才の質感」へと変貌する。

知力【F- ➔ SS】、スピード【E ➔ SS】。

彼の世界は、一瞬にして完全なる静寂(スローモーション)へと突入した。

兼彦*(……演算開始。敵の質量、拳の自由落下速度、空気抵抗を計算。……勝機あり。十分に行ける)*

覚醒した兼彦は、重戦車の突進に見えたゴリラの拳を、世界をスローで見る神速【SS】のステップで紙一重で回避。

同時に、足元の地面の重力と魔力素の対流を完全演算し、スッと左足を浮かせた。

【アクティブスキル:完璧なる魔力弾】

兼彦の足元に、周囲の空気を吸い込んで完璧なディンプル(くぼみ)を刻まれた、禍々しく輝く魔力のサッカーボールが生成される。

兼彦*(風向きは南南西。ボスの右鎖骨の装甲が、結晶の密度低下により3ミリ薄い。……ここが死角)*

兼彦は、痛覚を遮断した最高硬度の肉体(体力S)と、音速を超える爆発的脚力(パワーA)を込めて、その魔球を思いっきり振り抜いた!

バコォォォォォンッ!!!!!

音速の壁を突き破る爆音。放たれた魔球は、真っ直ぐデス・ゴリラの顔面へ飛ぶ……と思われた瞬間、空中であり得ない角度へと直角に急カーブした。

【固有必殺技:魔球・神速超カーブ】

ゴリラが反応すらできない Uターンの軌道を描き、魔球はボスの死角である右鎖骨の弱点へとピンポイントで着弾した。

ズガァァァァァーーンッ!!!!!

凄まじい魔力の爆発が起き、災害級モンスターだったはずのデス・ゴリラは、悲鳴を上げることすら許されず一撃で消し炭へと変わった。

兼彦「ふぅ……。よし、物理演算通りだね」

ボスが光のチリとなって消え去った瞬間、覚醒による凄まじい脳の疲労を和らげるため、兼彦の脳は一瞬で元のモードへと切り替わった。

瞳の輝きが消え、またトボトボとしたボケ状態に戻る。

兼彦「あれぇ? ゴリラさん、どこ行っちゃったのかなぁ? おにごっこかなぁ? お腹空いたから、あっちの島を探検しよっと」

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