7. 翼ある蛇La couleuvre ailée
元より読者の持つ「妖精」観念には合っていないと思うが、いよいよ女妖が悪役らしく手段を選ばなくなる。惜しむらくは妖精のくせに「悪役令嬢」のような美貌を持たないことで、当時は 悪者=醜悪 と判り易さが優先されたのであろう。そう考えると、『白雪姫』の悪役は、時代を先取りしたかの観がある。
翌日、ベル・オランジュは父親に会いに向かいました。しかし、今度は待ち伏せていた赤毛の妖精が再び彼女を不意討ち、炎を吐く大いなる翼ある蛇に後を追わせました。
Le lendemain Belle-Orange revint voir son père ; mais cette fois la fée Rousse qui la guettait la surprit encore et envoya à sa poursuite une grande couleuvre ailée qui vomissait des flammes.
哀れなツバメは焼かれようとしたとき、またしても、お父様!と三度呼ばわる。途端に、雷に打たれた大蛇は、邪竜と同じように死んでしまいました。
La pauvre hirondelle allait être brûlée lorsqu’elle appela encore trois fois son père ! la couleuvre foudroyée à l’instant mourut comme le dragon.
すると邪悪な妖精は、自分の策略や復讐の手段が役に立たないと思い知り、50里も撃てる騎兵銃で待ち伏せ攻撃を仕掛けました。
Alors la méchante fée voyant que ses artifices et ses moyens de vengeance étaient inutiles s’embusqua elle-même avec une carabine qui portait à cinquante lieues.
残酷な女は、ツバメを見つけるや、将に撃とうとしたそのとき、今度はベル・オランジュが岩石を足につかんで、空の高みから水晶の塔に落としました。
La cruelle, apercevant l’hirondelle, allait tirer, lorsque Belle-Orange, qui avait cette fois pris une pierre dans ses pattes, la laissa tomber du haut des airs sur la tour de cristal.
脚注
carabine: 騎兵銃は、騎乗して携行できるよう短銃身に設計されたマスケットで、狙撃できる銃ではなかった。これを携行する騎兵を竜騎兵と呼んだ
lieues: 英語leagueに相当。1リュー≒4km≒1里であるから「射程200km」と称している訳で、戦艦大和の45cm砲が射程40kmであったから、非現実的という他はない。その割に描かれた絵はマスケットの銃身に、スコープどころか照星もなく、先端は(散弾銃の元になった)ラッパ銃の形と、御伽噺とはいえ絵師が火器に詳しくなかった可能性が高い
tomber du haut des airs: 質量兵器の概念はなかったから、攻城兵器の投石機などから想像したものであろう




