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決闘! 勇者x勇者

 ヤマダとフェイノは一緒にノーザンテリト王国に来ていた。

 二人して学校に通うためだ。

 ヤマダとしては青い青春というものを味わってみたかったし、この世界というものをより深く知りたいという思いがあった。


 始め、サウスフィールド王国――いまはサウスフィールド帝国にその話を打診したが、国内ではフェイノの顔は知れ渡っているから警備上の理由でダメ出しがでた。


 当然他国に教育に出すのもNGである。

 遠く離れた地に出かけることは国のためによろしくはない。

 特に長時間離れるというのが、サウスフィールド的にはよろしくなかったのだ。


 だがその程度ではヤマダはあきらめない。

 そこで考えられたのが引きこもりの邪神の力を使うことだ。

 おなじみの『引きこもりの部屋』である。

 遠く離れた地に出かけることが大変であるならば直接お部屋をお持ちすれば良い。


 国民的人気猫型マスコットがアニメで出てくるような、ドアツードアの仕組みがあれば良いのだ。


 聞くと、通過する誰かが知っている場所であればどこにでも繋ぐことができるらしい。

 そしてクルスはA級冒険者であり、大抵の場所にいったことがある。


 その部屋に戻るといつもだらけた邪神アマト―が部屋をころがってポテチでも食べているところに目をつむるのであれば、部屋からの行き来だけでサウスフィールド帝国からノーザンテリト王国までまさに瞬間に行けるのである。

 むろん多少は邪神アマト―の相手もする必要もあのだが。まことにもってめんどくさい性格ではある。

 邪神アマト―は最近はインターネットで異世界と交流ができるようになったらしく、使わせてはくれないが楽しい引きこもりライフをしているようだ。ぶっちゃけ静かで良い。


 ――そういうことで、行き来が可能になった二人はサウスフィールドの王城からいったん魔王城に抜け、それからハバーム学園に行くというすごいめんどくさい経由を使うことで学校通いができるようになった。


 いまは、ようやく学園側の許可が降りて学園の下見を行っているところだ。


「ともかく、飛び級で中二ということは素晴らしいな。おめでとう」


「どういたしまして、ヤマダさま。しかし、なにもヤマダさままで私に合わせて中二クラスで勉強することはないのでは?」


「なに、君と一緒に勉強したくてね」


「まぁ、ありがとうございます」


「それから俺はこっちの文字は書けないし――」


「それは厳しいですわね……」


「しかし、誘って悪いんだが、いいのか?」


「私は読み書きはさすがにできますが、貴族としての教育なんてしたことがありませんし」


「そうなのか? 意外だな」


 サウスフィールドでは女性に対して教育を行わないのかと訝しむヤマダであったがそれは違う。

 彼女が施されてきたのは王族としての帝王学的な教育であり、貴族のための教育というものに触れたことが無いだけだ。また、王族には専用の教師がついており学校通いというものにも縁がない。

 しかしすでに婚約し優雅に降嫁する予定のフェイノとしては必要に迫られていると感じていた。


「それに――冒険とかにはあこがれませんか?」


「あこがれか――。それは俺にも確かにあるな」


「じゃぁ、ヤマダさまが冒険に連れっていってくださいね」


 いまでも十分冒険ですけどね、とフェイノは付け加える。


「あぁ、まかしておけ――」


 この発言によって修羅場が発生し、ヤマダは後でかなり後悔するのだが、当時のヤマダは知る(よし)もない。


「いやー。それにしてもここでかくね?」


「そうですかね? ヤマダさま。私のおうちと比べたら――」


「あれと比べたらいかんだろう」


 魔王城は魔族たちの文字通り最後の砦であり、千人単位で人が収容できる場所である。

 だが、フェイノの「おうち」であるノーザンテリトの城と比べたら城の方に軍配があがる。


「ヤマダ――もしかして同郷のものか?」


 そこに近づいてきたのは一人の少年――タローだ。

 タローの恰好は学生服であり、フェイノにとっては珍しい服程度であったが、ヤマダには異世界人であることが一目瞭然である。


「あれ? 俺以外にも日本人がいるのか――。意外だな」


「こちらではタローと名乗っています」


「こっちはヤマダだね」


「ヤマダさまのお世話をしていますフェイノです」


 フェイノが軽くおじぎをするとタローは顔を赤くした。

 これは惚れたな――ヤマダは直観する。

 だが渡すわけにはいかないのだ。

 ヤマダはさりげなくフェイノの肩を抱き寄せた。


「きゃッ」


「おぃ、彼女嫌がっているぞ?」


「えーっと、嫌がってはいませんよ? ちょっとびっくりしただけで――」


 そう言うや、フェイノはヤマダに抱き着いてきた。


「なんだノロケかよ。もげればいいのに」


「私を巡って争いあうとかの展開も良いですわね」


「やっぱり小説読みすぎなんじゃ…」


「私が読んでいる小説ならこのままヤマダさまとタローさまの二人が愛し合う展開とかになりますけど? ふふふ」


「この世界にも腐があったか――。あぁ、おそロシア――」


 ヤマダは異世界でさらなる異世界――つまりBL展開を見たような気がした。

 タローはどんびきである。


「ま、まぁそんなBL展開にはならないから安心してくれ。ヤマダだったか」


「お、おぅ」


「俺はこれから学校に通うんだ。そっちもか」


「こっちはサウスフィールドからの留学生って設定だ。よろしく頼むよ」


「よろしく――」


 そういうと、なぜか泣きそうな顔でタローは去っていく。

 ヤマダはなぜか勝利の味に酔いしれていた。


「あぁ、これから私のために2人は戦うのね」


「いや、戦わねぇから――。絶対この流れだと寝取られるからヤメテ」


 しかし、自信のないヤマダには勝てるビジョンが見えなかった。

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