表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

とある騎士の見解

 俺の名前はポール。ラウール殿下付きの近衛騎士だ。

 俺が殿下付きとなったのは、殿下が俺を気に入ってくださったからだ。殿下は非常に気さくな方で、俺の不作法にも口うるさく言わない。


 そんな殿下はつい最近まで仮面をつけていた。

 仮面の下の素顔は大変整っており、年の近い貴公子たちで殿下の素顔を知る者は、殿下が仮面を取ったのを知って大いにガッカリしていた。殿下が令嬢たちの視線を一心に集めてしまうことを知っていたからだ。

 事実、殿下は仮面を取るようになってから、年頃の令嬢たちから注文を浴びるようになった。夜会でもダンスを踊ってもらいたそうにしている令嬢たちは数知れず、殿下が現れれば殿下の周りは令嬢たちで覆い尽くされる。

 独身で婚約者のいない貴公子たちからすれば、いい迷惑だろう。だが、殿下が他の令嬢に現を抜かすことはない。

 なぜなら。


「ジョセフィーネ」

「殿下」


 “顔なし令嬢”―――そう呼ばれていた殿下の婚約者、ジョセフィーネ様も最近になってその仮面を取って素顔をさらすようになられた。ジョセフィーネ様は非の打ち所がないほど美しい方である。という俺もジョセフィーネ様の信者その1なのだ。

 まだジョセフィーネ様が仮面をつけていられた頃、俺は義母妹に用事がありパラモール伯爵邸を訪れた。その時に、本当に偶然だったのだが、仮面を外したジョセフィーネ様を見かけたのだ。女神が現れたのかと思った。そして俺はジョセフィーネ様の信者となったのだ。


「今日も君は美しい。俺の自慢の婚約者殿だ」

「まあ、殿下…」


 そう言って恥ずかしそうに殿下を見つめはにかむジョセフィーネ様。そんなジョセフィーネ様を愛おしそうに見つめる殿下。お二人の仲睦まじい様子に、あちこちからほうっとした溜め息が漏れる。

 お二人が仲良くしている姿はとても絵になるのだ。お二人の姿が描かれた絵が市井では飛ぶように売れているらしい。


 今でこそ仲睦まじいお二人だが、ほんの少し前まで会えば嫌味を言い合う仲だと知っている者がこの会場に何人いるだろう。

 今この会場にいる人に、実はお二人はほんの少し前まで嫌味を言い合っていた仲なんですよ、と言っても「まさか」と笑われるだろう。事実なのだが。

 現に王宮勤めの同僚に同じことを言ってみたのだが、「まさか」と一蹴されて終わった。それほど、今のお二人は仲が良いのだ。


 そもそもお二人は最初から一目惚れだったのだろう、と俺は思う。

 さすがにお二人の顔合わせの時のことは知らないが、殿下の話と妹の話を聞く限りではそうとしか思えない。

 殿下が顔合わせの時に『不細工』だと言ってしまったのは、緊張して動揺しまくっている自分のことを指したものだし、ジョセフィーネ様にしても、それを気にして顔を隠したのはどう考えても恋する乙女の行動だと思う。恋した相手に『不細工』なんて言われたら誰だって顔を隠したくなるだろう。それがたとえ自分に対して向けられた言葉じゃないとしても。


 それからお二人はお互いに不器用な付き合いを続けて、息抜きで遊びに訪れた街でばったり出逢ってしまったのは、もはや運命としか言えない。

 十年間ずっとお互いに仮面をし続け、お互いの素顔を知らずに過ごしたお二人は、仮面を外して訪れた街でお互いが婚約者だと知らずにまたもや恋に落ちた。

 いけない恋だと知りながら逢瀬を重ねる二人。そしてついに婚礼の日取りが決まり、二人は別れをしなければならなくなった。

 それによって自棄になったジョセフィーネ様が仮面を外すと言い出し、お互いの仮面を外すことになって、仮面の下に現れた素顔にお二人は息を飲む。

 そうして真実を知ったお二人はめでたく結ばれましたとさ、めでたしめでたし。


 なんて物語のような話だろう。こんな話が現実に、それもこんな身近にあるとは思わなかった。

 現実は時に小説よりも奇なり、とはこの事を指すのだろう。




「一緒に踊って頂けますか、俺のお姫様?」

「ええ、もちろんですわ、わたくしの王子様」


 お互いに手を取って、ホールの中心でくるくると優雅に踊り出すお二人。お二人はダンスの名手なだけはあって、その所作に華がある。お二人ともとても楽しそうで、そして熱々だ。見ているこちらが火傷をしそうだ。

 いいなあ。俺も早く可愛いお嫁さん貰わないとなあ。

 そんなことを考えながら、俺はお二人を見つめる。

 色々すれ違ったお二人だが、収まるところにまるく収まって本当に良かった。妹とともにハラハラしたのも今となってはいい思い出だ。






 ラウール殿下とジョセフィーネ様は、その後、大変夫婦仲のよいご夫妻として名を馳せることになる。

 しかし、そんな夫婦が結婚する少し前までお互いの素顔を知らず、嫌味の言い合いをしていたなんてことや顔なし令嬢と仮面の王子と呼ばれていた経緯は、語り継がれることないだろう。





すれ違っている二人が書きたくて書いた話です。

なんかコレジャナイ感がするんですが、最初に書いた同じ題材の話がめちゃくちゃシリアスになってコレジャナイと思って再度トライしてみたのですがやっぱりコレジャナイ。

精進あるのみですね。


ここまでお付き合い頂いた方、ありがとうございました!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ