第一日
みなさんどうも初めまして。さなだまると申します。小説は初投稿なので、読みにくい点もあると思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
あんたの隣には吸血鬼が住んでいる──なんて話、信じるかい?
え?お隣さんとは何度も顔を合わせてるし、話したこともある。そんなガキみたいな話をするなって?
まあまあ、そんなことは俺だってわかるさ。ガキみたいな話して悪かったな。
じゃあ、あんたのお向かいさんはどうだい?
あんたがよく行くコンビニの店員さんは?
街中の人間は?日本国民は?世界中の人は?
この話はそんな話さ。あんたの意識の少し外、裏界に関するお話さ。
─────────────────────────────────────
「できたぁ〜〜〜!!!」
男はそう叫び、さっきまで自分がペンを走らせていた原稿用紙を手に取った。
見ていると自然に笑みが溢れ、伸びた髭をもつ顎を揉む。
「うんうん、こいつぁ上出来だ」
彼は決して独り言が多い方ではないが、ついそう言ってしまうほどこの小説はよくできていた。
カリカリ
彼の部屋のドアを掻く音が聞こえる。
彼がドアを開けると、そこには大きなクリクリとした目で男を見上げる少女がいた。
「お〜、ルコ!ついさっき終わったところさ。見るかい?出来立てホヤホヤの新作だぞ〜」
そういうと彼は小走りで原稿をとり、彼女の小さな手に渡す。
彼女──ルコは原稿をむんずと掴むと、じっくりと見始める。
しかし2秒もすると、その大きな5つに裂けた口を広げ、原稿用紙を齧
ろうとした。
「おっとあぶねえ!こいつぁ食いもんじゃねえぞ!」
男はそう言いながら彼女の手から原稿用紙をスッと取り返す。
ルコはそれを少し口惜しそうに見つめるも、また2秒ほど経つと今度は両手を上げ、万歳のポーズをした。まるで「だっこ」とでも言いたいようだ。
「抱っこか。まったく、あんまり50の腰をいじめんじゃないよ」
そう言いながらも、男は少女を抱き上げ、廊下に出る。
朝日が窓から入り込み、優しい光に包まれる階段を、一段一段慎重に降りていった。
2人が食堂に入ると、3人─いや2人と1匹の先客がいた。
「おお!進藤さん!ようやく終わったんすね!」
1人の男は大きくラジオ体操をしながら元気に声をかけてくる。食後の運動だろうか。
「まったく。髭が伸び放題じゃない」
また1匹の女はコーヒーカップを浮かせながらこちらに目を向けて語りかけてきた。彼女の狐色の尻尾に日が反射して輝きを放っている。
「おおよ。たった今終わったところだぜ。いやぁ今回のはもう誰も考え付かねえようなのができたぞ」
「ハ。見たところどこかで見たことあるようなストーリーのようだけどね」
「こっちの奴らは見たことがねえからいいんだよ」
そんな話をしながら縁側の近くを通り過ぎ、何個か並んだカラフルな椅子のうち一つに座ると、ルコは「キュー」と鳴きながら先客のうち1人─いや1匹か?─の元に駆け寄る。
「あらあら。おはようルコちゃん。今日も元気ね」
そう微笑む女の腕の中には、ルコより少し幼い赤子が身を預け切って眠っている。
「おや。すっかり懐かれたみてえだなラヴァナ」と男──進藤が語りかける。
「そうなのよ」と女──ラヴァナは二つの触覚を前に倒しながら、赤子の顔を見つめる。
ルコもまた彼女の多くの足のうち一本に抱きつきながら、幸せそうに笑った。
「ふふふ。朝から微笑ましいですね」
その声に進藤が左を見ると、エプロンをつけた少女が立っていた。
「今日の献立はなんだい。高家」
「今日はししゃもですよ。今朝魚屋さんがいいのを売ってくれたの」
「へぇ、そりゃあいい。朝から贅沢だ。ちゃんとたくあんもつけてくれよ」
「もちろん。その前に手を洗ってくださいね」
少女──高家はそういうと、また厨房に入っていった。
進藤が洗面所から戻ってくると、そこにはもう美味しそうに焼けたししゃもが3尾並んでいた。白ごはん、味噌汁、そして小鉢のたくあんも一緒だ。
「うん。こいつはいい。『その刀はしかし暴れることなく波紋を光らせその時を待っていた』──だな」
「それ、誰でしたっけ」
そう言いながら茶を持ってきた高家の向こう、透けて見えた玄関前の廊下に2人の少女が話しながら立っていた。
「あれ、今日は土曜授業だったかな?」
進藤は大声で尋ねると
「うん!そう!」
とこれまた大きく明るい声が返ってきた。
「そうか。気をつけて行けよ!」
「はーい!行ってきます!」
「い、行ってきまーす」
玄関の扉が開く音の後、すぐに守衛さん行ってきまーすという言葉が聞こえ、その後は何も聞こえなくなった。
「いやあ。若いってのはいいねえ」
朝食を食べ始めた進藤はふとつぶやいた。
「何言ってんの。あんたも若い方でしょ」
「ミタさん。そんなこと言えんのは妖だけです。オレら基準だと全然おじさんっすよ」
「加藤くん。ストレートに言われるとおじさん大ショックだよ...」
「へへ。さーせん」
肩から排熱しながら食堂に上がった男──加藤はいつのまにか作業着に着替えている。
同じく女──ミタも毛並みを整えて、仕事の準備はできているようだ。
「ねえ加藤さん。この扇風機って修理できないんですか?ちょっと冷えにくい気がして」
高家が厨房から出てきて、会話の中に加わる。
「いやあ、どうだろう。オレはボディ専門なんっすよね。いまいち...」加藤は答える。
「じゃあ進藤に買ってきて貰えばいいじゃない」ミタが残りのコーヒーを啜りながら言った。
「はぁ?やだよそんな高いの」進藤は白ごはんをたくあんで食べながら言う。
「費用は大家さんにもってもらうえばいいじゃないですか」ルコと赤子を抱いたラヴァナも口を挟む。
「いや俺は今日は一日ゴロゴロしようと...」
「じゃあ、進藤さん、お願いします。費用は大家さんにお伝えしときます!」
高家がそう言うと皆示しあわせたようにその場から解散した。食堂には進藤ただ1人。
「はぁ〜めんどくせぇなぁ〜...」
彼は決して独り言が多い方ではないが、ついそう言ってしまうほどこの仕事は面倒臭かった。
朝ごはんを下げ、彼は自室に戻る。いつもの着流しと茶色いハットをきた進藤は、深いため息をつきながら玄関へ向かう。
外に出ると「守衛さん」がいた。進藤が「そのままで」と言うと「守衛さん」は真っ黒な顔を少し傾け、会釈をした。
進藤が一歩外に出ると、アパート内の静けさは一気に騒音へ変わる。
「政府は今日、平均気温上昇対策として...」「いいガジェット揃ってますよ!」「夏場にパフェはどうなのよ」「あ!あれかわいい!」「タクシー!」「すいません。その件に関しては...」「前の飛行者、止まりなさい」「また事件?最近多いね」「あぁ〜涼しい〜」「あのオルタネのライブイベントが...」「もう少し右に寄ってください」
地を歩くもの、空を飛ぶもの、泳者水路を泳ぐもの、背の高いもの、低いもの、人型のもの、獣型のもの、虫型のもの、そもそもナニかわからないもの...
「ま、こういう休みも悪かねえか」
進藤はそうつぶやくと電気屋の方へ進んでいった。
この話はそんな話さ。あんたの意識の少し外、裏界に関するお話さ。
いかがでしたか?第一日は少し説明的だったので、少々つまらなかったと思います。
第二日から本格的に話が進んでいく予定です。ぜひ今後ともどうぞよろしくおねがいします。




