ゴゴング生け取り依頼
「すみません。ちょっといいですか?」
「どうした?」
デッカ大森林の東方。ローリングシェルの生息域で岩が多くある地帯にやってきた僕たちは目的のハンターを見つけることに成功した。ここに来るまでに戦闘の痕跡を見つけたが、この場はそれよりも凄まじかった。
「すごい魔物の数ですね」
「だろ? この数のローリングシェルを倒せるのは俺たちくらいだぜ」
僕が声をかけたのはロングソードを担いだ若い男。このグループのリーダーだ。気さくな青年という印象に変わらない快活な話し方をする。青年の言うとおり、辺りには十に迫る魔物の死骸が転がっている。
「僕はメグル。あなたたちに依頼を出そうと思って追いかけてきたんだ」
「依頼?」
「うん。ゴゴングの生け取りなんだけど」
「生け取りか……、報酬は?」
「四十万。なんだけど、手持ちにあるわけじゃないから、島に戻ったら支払いをするよ」
「うーん……」
僕の提案にリーダーは悩んだ様子を見せる。四十万は相場通りの金額だが、それでは不満か、それとも不安か。
「もう一声出せないか? 俺たちは見ての通りローリングシェル狩り中でな。今日一日でも四十万近くは稼ぐ予定だ。不払いのリスクを取る理由としちゃ弱い」
「なるほどね。なら、前金として僕の手持ちの二万を払おう。それから、上に戻ったら四十五万払う。これならどう?」
僕は言いながら首にかけたネームタグを取り出す。これがギルドが発行している身分証で、僕の名前が彫られただけだが、それだけでもある程度の信用は得られる。さらに、
「僕は普段ホクトウ造船所で働いているから、最悪、連絡がつかなかったらそこに来てくれればいい。まあ、ちゃんと払うけど」
「分かった。そこまで言うなら受けてやろう」
僕の追加提案で納得した青年は快活に笑いながら手を差し出してきたため、僕も快くそれを握り返す。
「契約成立だね」
「俺の名はスカイ。よろしくな」
「スカイ。よろしく」
ゴゴングの生け取りさえ済めば僕は念願の飛行船を作ることができる。僕たちは彼らの素材回収を手伝い、ゴゴングの生息域へと向かった。
この過程で気づいたことが一つ。コジャラの魔石では飛行船としての能力が低いと思っていたが、質を補うのはいつだって量だ。何個もの拍動する魔石を飛行船に取り付けることで、荷馬車程度には活躍する飛行船を作ることができた。
難点としてはこの運搬用小型飛行船を作るために捕まえたコジャラが五十匹を超えるということだ。
僕が作った運搬用小型飛行船に魔物の素材やらを積み込み森を歩く。っていうか運搬用小型飛行船って長いな。略してウンコにしよう。
ウンコのおかげで手持ちの荷物がなくなり、それだけで移動速度はかなり上がった。さらに、スカイたちがウンコを欲しがったため依頼料から差し引く形で売却する運びとなった。ウンコには推進装置が付いていないから誰かが引く形になるが、地面を引きずったり自分で持ち上げるよりも相当楽だ。こういった運搬用の飛行船があまり売られていないのは何故か、理由は分からないが需要はかなりありそうだ。
そうしてやってきたゴゴングの巣。ゴゴングは二メートルから三メートルを超える巨躯をしており、主に洞窟や地面の窪みなど穴を掘って生活をしている。雑食でなんでも食べるが、主な食事はデングーだ。
「俺たちがゴゴングを叩くから、もし横槍が入りそうになったら教えてくれ」
「分かった」
「後は、可能な限り露払いもしてくれ」
役割分担が決まるとスカイたちが一斉に動き出す。僕とセラは彼らの戦いに邪魔が入らないよう、万が一やってきた魔物を掃討することだ。まあ、この森の頂点捕食者に当たるゴゴングの巣に近づいてくるような物好きはいないだろうけど。
「チャチャ。燻せ」
「了解」
スカイたちはゴゴングの巣となっている洞穴に近づいていくと、メンバーの一人が魔法で火を放った。この世界で魔法は誰でも習得できるものらしい。それなりの魔力と勉強が必要らしいが。
そして、スキルとは神の恩恵であり、使える者は少ないらしい。(チャットGOD調べ)
チャチャと呼ばれた茶髪の女性が火を放つと、洞穴の奥が轟々と燃え熱気が吹き出してくる。と同時に、獣の咆哮を上げながらゴゴングが姿を現した。ゴゴングは寝床に枯れ草なんかを敷くようで、よく燃えている。
飛び出してきたゴゴングは現れるなり自分の巣を荒らす不届者を探し、スカイたちの姿を見つけた。
「戦闘開始!」
スカイの合図で前衛二人がゴゴングへ飛びかかる。スカイの直剣と、もう一人の男、筋骨隆々で戦斧を振り回すハンター二人による攻撃がゴゴングの体に傷をつける。
「ファイア撃つよ!」
後衛には魔法使いのチャチャ。言うが早いか、チャチャが魔法を撃つのを見計らっていたかのようなタイミングでスカイたちが飛び退り、二人が魔法に巻き込まれることなくゴゴングだけが燃え上がった。
「すごい連携ね」
「うん」
セラはスカイたちの見事な連携を見て複雑な表情を浮かべていた。参考になるのはもちろんだが、セラたちを狩ったのもまた天上人のハンターたちだ。スカイたちがハンターとしてどの程度の位置にいるかは分からないが、まず一線級ではないだろう。実力のあるハンターがモンのような地方で活動しているはずがないからだ。
僕たちが感心している間もスカイたちはゴゴングに的確にダメージを与えていき、戦闘開始から十分と経たないうちにゴゴングを見事に昏倒させてしまった。
「すごいな」
「そうだろう? 俺たちはモンの街でもかなり上位に入るハンターなんだぞ!」
僕の注文通り、ゴゴングは意識を失って弱っているだけでありしっかりと生きている。素晴らしい仕事っぷりに思わず拍手したくなるが、ゴゴングが目覚めたら嫌なので気持ちだけに留める。
それよりも、このゴゴングを使って早速拍動する魔石を作りたい。今回のゴゴングは三メートル弱ほどで、スカイ曰くゴゴングの中では中堅ほどの実力者らしい。群れで行動する魔物じゃないため比較は難しいが、ゴゴングの大きさから、人間で言う三十歳ほどらしい。
「スキル。拍動する──」
ゴゴングの体に触れスキルを発動しようとした瞬間、僕たちの足元が激しく揺れた。震度で言えば三、いや四、五……とどんどん強くなっていく揺れに耐えきれずその場にしゃがみ込む。
「なんだなんだ!?」
「落ち着け! 頭を守って姿勢を低くしろ! それから木に掴まれ!」
浮遊島に地震はない。地震大国日本の出身である僕にとっては慣れっこだが、スカイたちはまるで世界の終わりが訪れたかのように慌てふためいている。ハンターとしては未熟な僕だが、たかが地震にビビっているスカイたちを見ると、なんだか優越感が満たされ──
「ゴオオオオッ!」
僕の足元がいきなり消滅し、大地に飲み込まれた。
スキルは神のご加護であり、この世界の住人にもスキル持ちはいるが、神様サポートを受けられるのは転生者特典なのです。
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