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4/10

楽しい時間

遊戯室に着いた時、ふと壁時計を見ると、時刻は2時15分だった。


私は一目散に筐体のある方へと向かった。


筐体は5台並んでいて、どれも面白そうだ。


どのゲームをプレイしようかめっっっちゃ悩むけど、悩んでいる時間は無い!取り合えず横スクロールのアクションゲームをプレイする事にした。


フリープレイになってるから、お金を入れる必要がない。スティックの感覚を確かめる――うん、良い。これは最近ちゃんとメンテナンスしてるな。因みに私はゲームセンターとかでスティックを使用する時の事を考え、自宅でもアーケードスティックでゲームをする時間を設けている。手抜かりはない、ふふふ。


適当にボタンを押すとゲームが始まった。BGMが良い。レトロゲームの時代に生まれてた訳じゃないけど、この時代のゲームのBGMからは、シンプルな中にも魂を揺さぶり原風景を思い起こさせる様な魅力と衝撃を私は感じる。


そんな事を考えてたら、一機落としてしまった。まっ、まあ、油断してただけだから!


今度は集中して、さっき落としたところはしっかり越えたが、その後すぐにまた一機落としてしまった。


...はぁ?何このゲーム?序盤からどんだけ初見殺しぶっ込んで来るわけ?


泉のように沸き上がって来たイライラを押さえながらプレイしていたら、また一機落としてゲームオーバーになってしまった。


台パンしそうになったが、辛うじて理性が手を抑え込んだ。そんな私の様子を見ながら、お姉ちゃんが後ろでニコニコ静かに微笑んでいたが、入り口付近で誰かが話しているのに気付き、そちらを見つめたので、私もつられてそちらを見た。


話していたのは海藤さんと溝口さんだった。溝口さんも榊さんの後輩に当たる訳だし、その関係かなと思いつつも、珍しい組み合わせだなと思った。


...というか、そんな事はどうでも良い。私はゲームを再開した。


一つ一つ難所を越え、ステージボスまでたどり着いた。なんか割と短かったな。


ボス戦に意気込んでいたら、突然お姉ちゃんが何かに気付いた様に「あっ!」と言って


「ごめんね華凛ちゃん!海藤さんか溝口さんが、鍵を落としちゃったみたいだから、ちょっと届けて来るね」


何かに――特にゲームに集中している時の私は、返事をする余裕も無い事をお姉ちゃんは分かっているため、そう告げると、返事を待たず走って行った。


ボス戦はもう既に始まっており、私はボスの行動パターンを把握するのに必死だった。


なかなかスピードが速い。それでいて動作にランダムな切り返しがあって動きが読みにくい。多少はダメージを貰う覚悟で、最終的なダメージレースに勝つ方向性だろうか――が、一発一発がそれなりに重いので、その中でも比較的軽いものをわざと食らい、無敵時間を利用する。


...結局負けたが初見にしては結構惜しいところまで行ったので、もうクリアしたも同然だろうと思っていたら、再開はステージの最初からだった。


あ~はいはい!だから、ステージが短めだったわけね!うんうんうん!分かる分かる!あははっ!


怒り心頭に発した私は、かえってゾーンに入った。


途中誰かの気配を背後に感じ「すげぇ...!」と言う野太い声が聞こえたりもしたが、難なく?一面をクリアした。


っっっっしゃあ!!どう!?私が本気を出せばこんなものよっ!


心の中で勝利の雄叫びをあげつつ、時計を見ると、時刻は2時29分だった。ゲームをやり始めてから、思った以上に時間が経ってないな。最初かなり早く三機落としちゃったから、お姉ちゃんが部屋を出たのは多分20分ちょっと過ぎ位か。落とし物は無事届けられたのかな?


そういえば、ゾーンに入った時に聞こえた声――今にして思えば、あれは溝口さんだった。


鍵を落としたのは溝口さんで、遊戯室に探しに来てた....?まあ、別にどうでも良いか。それにしても、とうとう私にもギャラリーが付くようになったんだな、うんうん。


そんな風に感慨に浸っていたら、お姉ちゃんが帰って来た。ついでに海藤さんも一緒だった。


海藤さんは私に手を振ったあと、そのままダーツを始めた。早速投げていたが、意外....と言っては失礼かもしれないけど、的のど真ん中に命中していた。凄く集中している。


「少し遅くなっちゃってごめんね。海藤さんの車の鍵だったみたいなんだけど、そのあと書斎でちょっと話してて....」


という事は、溝口さんがここに来ていたのは、たまたまだったのか。


「鍵、無事に届けられて良かったね」


「うん....あっ、さっきのステージクリアしたの?さすが華凛ちゃん!」


お姉ちゃんが心の底から褒めてくれた。


「まっ、まぁ、あれ位?当然よ、当然!」


もう少し格好つけたかったけど、声が若干裏返ってしまった....恥ずかしい....。


微笑むお姉ちゃんを背に、私はプレイを再開した。ポーズとかないから、こういう時、ステージに時間制限が無くて良かったと心から思う。



2面は、1面に比べて長いステージだったけど、その分、難易度は抑えてあり、敵の配置も割と素直な感じだった。しかし、チェックポイントがないので、一回のミスで最初に戻されるため、プレイが慎重になる。


それでも難なくノーミスでボスまで辿り着いた。


ここまで来て最初に戻るのは嫌だなと思っていたので多少緊張していたのだが、複雑ではあっても動きは完全にパターン化されているので、こちらも難なく倒し2面をクリアした。


あれっ?私もしかして、このゲーム掴めて来ちゃってる?さすが私!――と調子に乗っていたら、いきなりちょっとトイレに行きたくなった。


「お姉ちゃん、私ちょっとお手洗いに行って来るから、良かったら代わりにプレイしててくれない?」


「えっ?私が?どっ、どうしよう!」


あたふたしながらも、お姉ちゃんは筐体の前に座った。


よし、駆け足で行ってこよう。時計を見ると時刻は2時33分だった。海藤さんはダーツに夢中だ。


左辺廊下に出ると、何やら食堂が暗くなっているのが見えたが気にせず先に進む。


多恵さん、片付けは終わったのかな?


気になったので厨房をちらっと覗いてみると、ドアは開放され、窓も開いていた。中では多恵さんだけではなく、溝口さんや、何故か真姫さんも厨房の片付けを手伝っていた。どうやら掃除もしているらしい。


気が散って邪魔になるのも良くないので、そのままトイレへと急いだ。



きれいなトイレってやっぱり快適で良いな。用を済ませてそんな事を思いつつ、私は遊戯室へと急ぎ足で戻る。


厨房では相変わらず、多恵さん達が厨房の片付けや掃除に追われていた。片付けの方は、あともう少しって感じだけど、結構広い厨房だし掃除はあとどれ位掛かるんだろう?見た感じでは、もうちょっとで半分って感じだけど...。


食堂の前に来たら、今度は食堂のドアが閉まっていた。これってもしかして....。まあ、あまり気にしないでおこう。


遊戯室に入ると、右手のダーツエリアでは、海藤さんが真剣な表情でダーツを投げていた。相変わらず全部ど真ん中に命中している。凄いな海藤さん。


お姉ちゃんの方に行く前に時計を見ると、時刻は2時38分だった。


「お姉ちゃん、ありがとう。どうだった?」


「あっ華凛ちゃん!面白いね、このゲーム!私、さっきのステージクリアしたよ!」


.......まっ、まあ?2面は簡単だったし?3面もそんな感じだったんでしょ?


そんな心の中の動揺を表に出さず私は


「凄いじゃんお姉ちゃん!ちょっとお姉ちゃんのプレイ見せてもらっていい?」


とお姉ちゃんに頼んだ。


「え、良いの?華凛ちゃんも早くやりたいでしょ?」


「良いの良いの!ほらほら早く!」


「う、うん....じゃあ....」


さっ、お手並み拝見と....。


私は玄人の様な雰囲気を醸し出しつつ腕を組んで、お姉ちゃんのプレイを見る。


...はっ?うっま!本当に初見なの!?


恐ろしい勢いで先に進むお姉ちゃんのプレイに夢中になっていると――


突然ドーンッ!という雷が落ちた様な大きな音が、食堂の方から聞こえた――と思ったら、何やらおどろおどろしい音楽が流れ始めた。


一瞬ちょっとびっくりしたけど、やっぱり食堂で色々やってたのはこれだったのか。多分これが今回のツアーの目玉イベントなんだろう。


お姉ちゃんもただのイベントだと分かっている感じだったけど、海藤さんは「うわっ、びっくりした~!!何今の音!?」と本当に割と慌てている様に見えた。


「多分、イベントが始まったんじゃないですか?」


私はそれとなく言ってみる。


「ああ!そういう事か!じゃあ早速行ってみようよ!」


海藤さんが走り出したので、私たちも後に続いた。


遊戯室から食堂まではすぐだ。


一応周りを軽く見渡してみたが、他には誰も走って来ている様子はない。皆もう食堂に行ってるのかな?


さっき見た通り、食堂の扉は閉ざされている。私達は勢いよくドアを開けた。



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