7話
部屋に戻るなり、そのままベッドにダイブした。
家族といるとどっと疲れる。その上王子にもいい顔しないといけないからなおさらだ。
数時間前とは違い、暖かい部屋にふかふかのベットのはずなのに、ひどく居心地が悪い。
「あ、あの……お、お嬢様……」
すっかり一人でいるつもりだったけど、部屋の中には2名のメイドが側に立っていた。
確かこの子達、支度の時に私の態度の変化にいち早く気づいた子達だったよね。
「ドレスのままベッドに上がられてはシワになってしまいます」
「それに、そのままではしっかりと休めないので着替えをされないと」
あたふたする二人は、今までのどの人よりも優しい対応。というよりは、なんだか母性本能をくすぐられてしまう。
「そうね。ごめんなさい、普段こんなドレスを着ないから慣れてなくて」
ベッドから降りて、二人に手伝ってもらいながらドレスを脱いで行く。そういえば他のメイドたちはどこに行ったんだろ。最初は大人数だったのに、いまは二人だけだ。
私は二人に尋ねたけど、どこかバツが悪そうな表情を浮かべる。あぁそれでなんとなく察した。私のお世話から逃げ出したか。で、この子たちに押しつけたというわけか。まぁ別にそれでもいいか。大人数いても意味ないし、態度の悪い人よりもこの子たちの方が気分がいい。
「二人は嫌じゃなかったの、私の世話」
楽な服に着替え直した後、椅子に腰掛けながら私は尋ねた。
二人はここ最近この屋敷に来たそうで、他のメイドたちにこきを使われていたようだった。
私のことは噂程度にある程度のことは聞いていたようだった。でも、あくまで噂だからと信じてはいなかったらしい。
「実際にお会いして驚きました。こんなにお美しい方なんだって」
「私もです」
素直な子たちだ。純粋で……好意を抱かれているのがわかる。不思議と彼女たちの周りがキラキラ輝いて見える。さっきの皇子みたい、と言ったらいけないかもだけど。
というか、この子たちの好意が普通で周りが異常なのかもしれない。そうだよ。あんなのが当たり前じゃ世の中たまったもんじゃない。
「ありがとう。でも、面倒見てもらうのも明日の朝までね。それ以降はまた前の生活だから」
屋敷の外、冷たい水にその場しのぎの藁のベッド。食事もとれつかどうかも分からない。
「私からあなたたちに言えるのは、頑張って。という他人事の言葉ぐらいよ」
でも、たとえ夢から覚めるとして、夢の中でぐらいは幸せでいたいもの。今晩はこのベットで気持ちよく寝よう。
その時、不意に部屋の扉がノックされる。
メイドの一人が返事を返して部屋の扉を開ければ、母が中へと入って来た。
側にはメイドが数名いて、なにやら荷物を抱えていた。
「何かご用でしょうか、お母様」
そう尋ねても母はなにも答えず、そばのメイドに指示を出してテーブルの上に荷物をおいた。
「今日の夕食は王太子もご一緒されます。なので、この服を着て出席しなさい。いいですね」
そのまま母は、目もあわさずメイドを連れて部屋を出て行った。
黒い靄はうっすり出ていたけど、さっきほどでは無かった。ちなみにそばのメイドたちからも、黒い靄が出ていた。
なんだったんだろうと思い、私は母が持って着た荷物の中身を確認した。
「まぁ綺麗なドレスですね」
先ほど着ていたものとは比べ物にならないと私でさえわかるほどだった。
王子の指摘と父の言葉がこえたのだろう。
しっかりと、姉妹に差がない服をしぶしぶ用意したのかもしれない。
「まぁ、嫌だなんて言えないし、夕食はこれを着ていくしかないかな」
それまでは、王太子に不審がられないように、家族からなにもされないために、部屋にこもって、二人と楽しくお話をした。




