表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/626

~引き取り~

本編突入前の大事な出会いその1

そこからは割と順調で何の問題もなくすくすく成長した。


乳歯が生え、母犬の乳から離乳食に切り替わった辺りのことだ。


「言っても分からないかもしれないが、喜べお前たち!今日は里親候補の人が見に来るぞ」


と孝蔵さんに言われた。


母犬は飼い犬で名前をマリという。


孝蔵さんはマリの飼い主で、現状の俺たちの飼い主だ。


犬に生まれ変わって正直、ここが日本だと分かって安心した。


外国だったら確実に言葉が分からなかっただろう。


獣医なら学生時代に英語の論文読んだり書いたりしてたんじゃないのって?


何年前の話だと思っていると言いたい。


元々英語も含み外国語は赤点にならないギリギリレベルの人間の記憶力とやる気の無さを舐めてもらっては困る。


(里親か)


里親とは生まれた仔犬などを飼い主が飼いきれないと判断した場合、信頼出来る知人や友人に引き取ってもらう制度だ。


ちなみに結構審査が厳しかったりする。


(なるようにしかならないな。気にするだけ無駄か)


俺としてはここにいても別段問題はないし、審査をクリアした里親に引き取られるならそれはそれで有りなのだ。


(それに恐らく引き取られるのは兄弟の方だろうし)


俺と一緒に生まれた2匹は活発で人懐っこい。


元々の中身がアラフォーのオッサンだったせいか、俺はそういう子供特有の可愛さというものが皆無なのだ。


そのせいか兄弟たちには父親か何かと勘違いされている節がある。


一緒に育っていた筈なのに不思議だね☆


里親が求めるのはそういう可愛さだろうと、考えるまでもないことだ。


俺はしばらく孝蔵さん宅でまったりするとしよう。



昼過ぎ辺りにその里親候補の人達が来た。


男性と女性1人ずついる。


両方共若い。


少なくとも30はいっていない感じだ。


後期心旺盛で人懐っこい兄弟2匹はその姿を見るなり、ブンブンと尻尾を振り回しながら駆けていく。


(夫婦か?それとも別組で1人1匹引き取るのか?)


ちなみに俺は床に伏せている。


自身の前足を枕にして、如何にもだらけ切った状態で様子を見ていた。


隣にいる母犬であるマリも同様である。


セント・バーナードってだらけた仕草が非常に似合う犬だよなと改めて実感する。


「あらあら、写真で見たときも可愛いと思ったけど、実物はもっと可愛いわ」


自分の足元をクルクル回る2匹を見つめて、柔らかに微笑む女性。


その表情から本当に動物が好きなんだと十分に察せられる。


「そうだねえ、優歌。でも、ウチの広さだと1匹が限界だからね?」


(成程、夫婦か。それで1匹引き取りか)


俺は会話からそう判断する。


まあ、違うかもしれないが。


違っても家族とか親戚とかだろう。


「分かってますよ、貴文さん。だから、悩ましいの」


「そうだね。じゃあ、じっくり選ぼうか」


「あら?確か3匹いるという話だったような……?」


「そうだね、ここに2匹いるけどあと1匹はどこに……?」


「あっ……!あそこマリちゃんの横!お腹の辺り!」


(見つかったか……どうせ選ばれないから面倒だし隠れていたんだが……)


「あ!ホントだ。全身真っ白な毛で分からなかった」


そう、俺は母や兄弟達と違い全身の毛が白で白一色だったりする。


体毛のみアルビノだった。


皮膚や瞳孔は普通なので太陽光を浴びても平気だ。


今回は母であるマリの横に寝そべる事で、マリの腹毛の白を保護色にして隠れていたのだ。


「うわぁ~、すっごいモフモフしてる。それに毛が長い」


女性に頭を撫でられる結構気持ちが良い。


慣れている感じだ。


「なんか、セント・バーナードというよりサモエド犬みたいだね」


そうなのだ。


俺も一応セント・バーナードなのだが、普通より毛が長くモッサリしている上に全身白一色なのでサモエド犬にしか見えないのだ。


今は仔犬で丸っとした輪郭をしているから特に。


「何ていうかこの子嫌がらないね。結構色々してるのに」


前足を持たれたり、尻尾や背中を撫でられたり、抱き上げられたりする程度どうということはない。


乳児期のAFの羞恥プレイ(トラウマ)に比べれば……


「なんかこう、だらけてると言うよりふてぶてしい感じ、似てない?」


「うん。そっくりだよ」


(ん?何の話だ?)


何となく雲行きが怪しくなってきたぞ。


「決めた!私達が引き取るのはあなたにするわ!」


「うん。僕も賛成だよ」


まさかのまさか俺が引き取られるとは……


流石に予想外デース。


「それじゃあ、孝蔵さんに言ってくるわね」


俺を胸に抱いたまま女性は部屋を出てリビングへと向かい。


男性も追従する。


「決まりましたかな?」


リビングでコーヒーを飲んでいた孝蔵さんは2人を見て聞く。


「ええ!この子にするわ」


すると、女性は俺の両脇を手に持って腕を真っ直ぐ伸ばして突き出した。


だらんと下ろした俺の後ろ足がブラブラ揺れる。


横腹の毛が引っ張られて地味に痛い。


「……本当にこの子で?」


それを見て、孝蔵さんが驚いたような表情を浮かべて改めて聞く。


それはそうだろう。


孝蔵さんとしても俺が引き取られるとは思ってもみなかったのだろうことは想像に難くない。


「ええ!」


「理由をお聞きしても構いませんか?」


「勿論です。私達夫婦は以前も犬を飼っていたんです」


(ふむふむ。まあ、会話の流れ的にそれは予想できた)


「オスのグレート・デーンで名前はゴンです。去年寿命で亡くなったんですが……」


(グレート・デーンか。マジでデカイ大型種の犬飼ってた人なんだな。セント・バーナードを飼う下地はあった訳だ)


「この子のふてぶてしい感じが何となくゴンそっくりなんです。だから、この子を引き取りたいと思いました」


「成程。そういうことでしたか。正直、コイツは仔犬の癖に愛想がないから売れ残るだろうと思っていましたから」


(だろうな。俺もそう思う)


「愛想がないは言い過ぎだと思いますよ。優しい子だと思うんです。いきなり、馴れ馴れしく触った私達に噛み付いたり、引っ掻いたりしませんでしたから」


「そうですな。何げにマリがいないときの2匹の面倒はコイツが見ていたみたいですから」


(見られていたのか。少し恥ずかしい気分になるな)


「コイツのこと宜しくお願いします」


「こちらこそ、大切な家族を預からせて頂きます」


「コイツに名前を付けてやってくれますか」


「えっ……?この子の名前は付けてないんですか?」


「私は2匹里親に出すと決めていましたから。それまで全員に名前を付けないようにしていたので」


「分かりました。どうしましょう貴文さん?」


「そうだねえ……雪みたいに白いから(ユキ)というのはどうかな?」


元々の名前に近いし、俺としては違和感はない。


だが……


「貴文さん。この子男の子ですよ。女の子みたいな名前だと不満かもしれませんよ」


そう。


そうなのだ。


雪次を略してユキと呼ばれまくったが、散々女みたいなあだ名とからかわれた。


故にその名は封印してもらいたい。


名前負けの透流にも散々『可愛い』を言われ、からかわれまくったのだ。


「じゃあ、読み方を変えて(セツ)なんてのはどうかな?」


(おお!訓読みにするだけで雰囲気変わるな。気に入った!)


思わずテンションが上がり尻尾がブンブン揺れる。


「あ、気に入ったみたい。じゃあ、貴方はこれから宍倉(ししくら) (せつ)よ。私は宍倉 優歌(ゆうか)、彼は旦那様の(たか)(ふみ)さんよ。これから宜しくね、雪」


(どうなるか分からんが、なるようになるさ)


そうして俺こと雪は宍倉夫妻に引き取られ新しい始まりを迎えるのだった。


宍倉家に引き取られ、白峰 雪次→宍倉 雪として生きることになりました!

頑張れ、雪!君の苦労はこれからだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ