エピローグ
あたしの元カレ、井沢孝之が交通事故で3年前に亡くなっていたことを聞いたのは、年が明けてからだった。
高校の時の同窓会の連絡が新年早々にきて、あたしは孝之とまた再会できると勝手に期待して出かけた。
高校時代の交友関係なんて、とっくに断ち切れてたあたしが同窓会に赴いたのは、まさに下心以外の何モノでもない。
あたしはもう一度、孝之に会いたかった。
だけど、そこに彼の姿はなく、当時、彼と親しかった同級生から聞かされたのは孝之の訃報だった。
「結婚? してなかったよ。アイツ、松本さんに未練があったんじゃない?」
同級生は責める風でもなく、人事のようにサラリとそう言った。
既に死後3年も経っているのだから、彼の存在自体が風化している。
そんな感じだった。
悲しむ事も忘れて、あたしは呆然と立ち竦んでいた。
◇◇◇
あのイブの夜は何だったんだろうって、今でも思う。
彼の幽霊がわざわざエッチしに、あの世からやってきてくれたのか。
それとも、酔っ払ったあたしが見たリアルな夢だったのか。
彼が10年前から変ってないのは、あたしが10年前の彼しか見てなくて、想像できなかったからだろう。
そう考えれば、夢オチだった可能性の方が高い。
でも、彼はあの夜、最高のプレゼントをあたしにくれたんだ。
それは、とっくに忘れてたときめきと安らぎ。
あの一晩のドキドキ効果で、この先一年は頑張れそうだ。
「また、いつか会えるよね?」
あたしはケータイを握り締めて、空に向かって呟いた。
風の強いこの街の空に、あたしの声は吸い込まれていく。
背中を孝之が「ガンバレ」って押してくれているような心強さに、あたしは胸を張って職安に向かって歩き出した。
Fin.
読んで頂き、ありがとうございます。
皆様、メリークリスマス!
ステキなクリスマスでありますように・・・。