第三話 最初の亀裂
もし翻訳の出来が良くなかったとしても、どうかご容赦ください。
私は日本語をほとんど知りませんが、この文化を深く敬っています。
この作品は『ウィストリア』と『ブラッククローバー』から強くインスピレーションを受けており、英語版は別のサイトにて公開予定です。
ありがとうございます。そして、翻訳をより良くするためのご意見があれば、ぜひお聞かせください。
――学院長の視点――
男が転がり込むように私の執務室に駆け込んできた。全身は汗びっしょりで、顔には怯えた表情を浮かべている。
「キャサリン様! 学院の森に”フラクチャー”が発生しました!」
「フ……フラクチャーですって?」
「はい! しかも高位級と思われます。これは……」
「今すぐ魔導兵団を呼びなさい!」
「はい、キャサリン様!」
『くそ……こんな学院の近くにフラクチャーが? あり得ないはずなのに……フラクチャーは普通、人の住む地域の外に発生するもの……まさか!!』
「エディソンも呼んで!」
「はい、キャサリン様!」
男は勢いよく扉を閉めた。ドアの向こうから、慌てて走り去る足音が聞こえてくる。
――レオンの視点――
図書館の外から、遠くで何かが轟く音が聞こえてきた。
『待てよ……これは……感じる……』
「ベラ」
ベラがこちらを見た。その頬はまだ少し赤らんでいる。
「この魔力、感じる?」
彼女の表情が一気に真剣なものに変わる。
「ああ……かなりまずいことになってる……これってもしかして――」
**「アォオオオオオン!!」**
『遠吠え!?』
周囲の生徒たちが一斉に足を止め、音のした方向へ視線を向けた。
最初に口を開いたのはマーカスだった。
「フラクチャー?」
遠くに赤い光が見える。その周囲には膨大な魔力が漂っていた。
「逃げたほうがいいと思う?」
ベラが呆れた顔でこちらを見た。
「逃げたほうがいいと思うか、って……当然逃げるべきでしょおおおおが!?!?」
三人で建物を飛び出し、キャンパスの反対側へと全力で走った。
しかし――。
**バキッ! ゴリッ!**
『マジかよ』
フェリンの足音が、どんどん近づいてくるのが聞こえる。
逃げ惑う者がいる一方で、遠距離攻撃を放つ生徒たちもいた。
『バカどもめ! そんなんじゃ倒せねえぞ!』
――なんて、柱の陰に隠れながら偉そうに評論している自分が滑稽だった。
狼たちはすでに図書館エリアまで侵入しており、誰もが手近な場所に身を潜めていた。
『ここで目立つ必要はない。それでいい。ケガして目覚めるより、じっと待つほうがマシだ……』
隣の柱に隠れていたベラが、魔獣を見つめる俺の様子に気づいた。
「戦わないの?」
「当然だろ。学院側もなにか対策をしてるはずだ。待ってたほうが――」
そのとき、凄惨な絶叫が響いた。
「ぎゃああああああっ!」
隣にいたマーカスが、誰よりも早くそれに気づいた。
「あれ……血、か?」
俺の目にも映った。すぐ近くの草地が血に染まっている。フェリンが、何か腕のような形の物体に噛みついていた。
『いや待て……それは本物の腕だ!』
次の瞬間、フェリンの視線がこちらへ向いた。
『待て、まずい!』
低い咆哮を上げながら、牙を剥いてフェリンが俺に突進してくる。
「マーカス、逃げろ!」
俺はとっさに構えを取った。
『さっきの戦い方からすれば、これは決定打になるはずだ!』
俺は一瞬で異常な速度で踏み込んだ。まるで目で追えないほどの速さだった。
狼は俺の姿を探そうと、必死に頭を振り回している。
『くそ、今しかない!』
俺は頭部へ向かって踏み込み、こめかみのあたりに強烈なボレーキックを叩き込んだ。脚から炎が噴き出す。
石の体表に脚が激しく激突し、やがてその身体は崩れ落ちていった。
さらに二体分の気配を感じる。
『まずいな……もうこいつの音に気づかれてる……』
一体が背後に現れた。
強烈な拳を打ち込もうとしたところで、マーカスが叫んだ。
「サンドダガー!」
砂で形成された刃が飛び出し、魔獣の目に深々と突き刺さった。
「うわ、それは痛そうだな……」
そう言いながら、俺はその頭を綺麗に吹き飛ばした。両手から炎が爆ぜる。
「それを言う君のほうが、よっぽど酷いことしてるけどな。バカ」
マーカスがペロッと舌を出した。
別の一体がマーカスに向かって走り出したが、俺はすぐにそれに気づいた。
「伏せろ!」
マーカスが身を屈めた瞬間、俺は地面を踏み割りながら飛び出した。
フェリンが俺に気づき噛みついてきたが、俺は鋭くそれをかわす。
そのまま空中へ跳び上がり、頭部へ鋭いアックスキックを叩き込んだ。
フェリンは地面に叩きつけられ、地面に亀裂が走る。石の身体はバラバラに崩れ去った。
「僕もあれ、覚えたほうがいいかもな……」
そのときになって、俺はあることに気づいた。
「フェリンってB級の魔獣じゃなかったか?」
マーカスがこちらを見る。二人とも同じことを考えていた。
「俺、B級魔獣を三体も倒したのか!」
「これで上層部も注目してくれるといいな! ああ……派閥生活って最高だな――」
**ドシン、ドシン。**
「おいマーカス、今の聞こえたよな?」
マーカスは深く考え込んでいた。
「ハッキリ聞こえたよ……って、ちょっと待って……」
俺は後ろを振り返った。
巨大な石の人型がこちらへ歩いてくる。木々の頭上にそびえるほどの大きさで、顔らしきものはどこにもなかった。
「ハッキリ見えたよ……」
『くそ……今のは無理があったな……』
「あれ……ホロウ・ジャイアントか?」
マーカスの体が少し震えている。
「あれってA級の魔獣だよな?」
俺は姿勢を正した。
「逃げたら、もっと多くの生徒のところまで連れて行くことになる。倒すほうが早い!」
『下手に遠くまで逃げるより……ここで叩くべきだ!』
ベラは俺の考えを察したのか、すぐに杖を構えた。
「音魔法――拍動核!」
杖から重低音を増幅させた衝撃波が放たれ、ベラの後方の地面を割った。巨人は両腕を上げて防御するが、その腕には亀裂が走る。
「サンドダガー!」
砂の刃の大群が空を切り、巨人へと突き刺さる。しかし、勢いが弱まる様子はまるでなかった。
俺は地面を砕きながら走り、空中へと跳び上がった。巨人は俺に気づき、叩き落とそうと腕を振るう。
だが俺はその腕を踏み台にし、勢いをつけたまま頭部へ540度キックを叩き込んだ。石の身体は瞬時に亀裂を走らせ、粉々に砕け散る。巨人は大きな音を立てて倒れていった――
**ドガァァァン!**
マーカスがため息をついた。
「だからこそ僕は、軍人じゃなく研究者をやってるんだよな……」
ベラが笑った。
「気にすることないよ、私もそんなに頑張ってないし!」
マーカスは小さく笑い、こちらを向いた。
「歩兵の戦闘員って、やっぱりかっこいいよな……」
『同感だ……この世界の戦闘職は四つの兵科に分かれている。地上で戦う歩兵、空を制する空挺、防御や足止めを担う防衛、そして医療や輸送を支える支援――この四つだ』
「ベラがこんなに戦えるなんて、知らなかったな」
「もちろんでしょ、お姉ちゃんに似てるはずだもん! 魔導兵団の隊長なんて、本当にかっこいいんだから……特に星辰旅団はね!!」
俺はメインフィールドの方へ目を向けた。
「そろそろ行こう。魔導兵団が来る頃だ」
――オードメンの視点――
「局長……」
細身のパンツに、寝癖のついた金髪の男が近づいてきた。
「なんだね、カルヴィン現場司令官?」
「レッドストーン学院が、襲撃を受けているとのことですが」
「正直どうでもいい……魔導兵団にも、たまには仕事をさせてやれ」
「いえ、そういう話ではありません」
俺の興味が一気に引かれた。
「現地の生徒が、フェリン三体とホロウ・ジャイアントを一体、討伐したそうです。もちろん単独ではありませんが、ほぼ一撃で――」
「一撃だと???」
「はい……学院長も、その生徒を局長にお見せしたいと考えていたようです……」
「やれやれ……あのキャサリンめ……」
俺は思わず額に手を当てた。
「わかった……彼女とはこちらで話しておく。下がっていい」
カルヴィンは胸に手を当てて素早く敬礼すると、部屋を出ていった。
俺はスーツの襟を軽く整え、胸ポケットの金の懐中時計を確認した。
それから、リーゼント風に整えた髪を手で撫でつける。
『これは……新しいかもしれないな。世界がたまに必要とする”何か”かもしれない』
執務室を出て外を見やる。俺たちは船の上にいて、その船は穏やかに航行していた。
「やめてくれ! 何でもする! 爆破事件の本当の犯人を教えるから!」
ちょうど外では、カルヴィンが手錠をかけられた男の首を掴み、まるで船の外へ投げ捨てようとしているところだった。
俺は目を閉じ、思いを巡らせた。
『世界が必要とする何か……か……』




