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断罪された大聖女は死に戻り地味に生きていきたい  作者: 花音月雫
第三章

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あの時にお断りしてますわ

「まさか、アイラ?アイラなのか!?」


ルース様がフラフラと私に近寄ってきました。スッと横から出てきた手がルース様を止めます。お兄様ですわ。


「今は怪我人の手当てが先だ」


お兄様は変態ですがお仕事はきっちりする方ですの。


「あ、え?もしかしてルネ!?あ、あ、そうだな、まずコイツを診てやってくれ」


お兄様にも気がついたようですわね。


私は入り口で寝かされている男の人を診ます。お腹の辺りが真っ赤で内臓が中から飛び出ていますわ。

一刻を争います!


私はそのお腹に手を当て呪文を唱え一気に『気』を流し入れます。するとお腹が塞がりました。目を瞑ってお腹の中も確認します。きちんと内臓も元の位置に戻り機能していますわ。良かった!間に合いました。


周りに居た男の方達に患者さんを奥の病室に運んでもらいました。そして改めてルース様と向き合います。


前の人生では聖騎士になっていたルース様。その時はスラっとした長身で優しい性格、キリっとした端正なお顔がとても女性に人気がありましたわ。


今世では聖騎士にはならず戦場騎士を目指すと言ってそちらの学校に行ったのでした。そのルース様は長身なのは変わらずですが全身に筋肉がムキムキついていて一回り大きく見えますわ。鍛えられた頑丈そうな体、顔についている切り傷がとても野生的に見えます。基本的なお顔は同じですけれど人は環境が違うとこんなにも変わるのでしょうか?


「まず、アイツ、コリンを助けてくれてありがとう。もう駄目かと......。あんな奇跡みたいな事が出来るなんて」


ルース様が頭を深く下げました。


「ルース様、お顔を上げて下さい。私は当然の事をしただけですわ。そしてお久しぶりです。お元気そうで安心しました」


私がニッコリ笑いながら挨拶しました。

するとルース様のお顔が真っ赤になってしまいましたわ。


「こんな所で会うなんて驚いたよ」


「ま、立ち話もなんですからこちらで」


アレイ様が病室ではない小さなお部屋へ案内してくれましたわ。


私とルース様はテーブルを挟んで向かい合わせでソファーに座りました。お兄様、ミカエル様、アレイ様はソファーの後で待機ですわ。


「治療はいいのか?」


「はい。今居る怪我人は殆ど治したので」


「そうか......。やはりアイラは聖女様になっていたんだな。あの力だ。そうだよな」


ルース様は私が串刺しにされても走っていた姿を見ている唯一のお人ですものね。その時にルース様の危険な扉を開けてしまったのですわ。


「ルネも立派な聖騎士になったんだな。兄妹して何だよー。凄いな」


私の後ろに立っているお兄様を見てルース様は少し感動している様子です。


「ああ。アイラの為に聖騎士になった。なのにまだ褒美は貰っていない」


少し拗ねるようにルース様に訴えていますがご褒美......とは?あの勘違いの事でしょうか?


「ははは。ルネは相変わらずアイラ一筋か。ま......こ、こんなに綺麗になっているもんな。気持ちは分かる」


分からないで下さいませ。

変態の気持ちなど.....。


「ルース様は学校には行っているのですか?あと一年あるのではないですか?」


「昨年から魔獣が出ずっぱりで学校どころではなくなった。が、もう習うことは無いぐらい学んだから大丈夫だ」


そういえばルース様が行ったいわゆる『戦場騎士』の養成学校はこの村にありましたわね。


「そうですのね。魔獣は昨年から多くなったのですか?」


「そうなんだ。何故かは分からないがどんどん出てくる」


「原因が分かれば何か出来るかもしれませんよね?このままでは民兵も騎士もいなくなってしまいますわ。現に騎士の派遣は止まっていますわよね?」


「そうなんだ。2ヶ月前に派遣された一団でしばらくは派遣されないと聞いた。今では村の年寄りも男なら戦いに出ている」


そのような恐ろしい現状になっているのですわね。

考え込んでいるとお兄様が私の頭をポンポンと軽く叩きながら言いました。


「まさか原因を探りたいなどと言うなよ?アイラは治療部隊なのだからな?」


ふふふ。流石はお兄様ですわ。私の考えている事がお分かりですのね。とりあえず誤魔化しますわ。


「はい。勿論ですわ。治療に専念します」


「それでいい」


安心したように微笑むお兄様とアレイ様。でもミカエル様だけは『はい、はい』と諦めたようなお顔をしていますわ。決まりですわ。お供はミカエル様に頼みましょう。


「それで、その、アイラはあのネックレスは持っているか?赤い石のやつ」


......?あ、思い出しましたわ。マリルが床に投げつけた後に箱にしまいましたわ。私が。


「確か私のお部屋にありますわね」


「あるんだな?良かった!結婚の約束はまだ有効なんだな!」


え?約束などしてましたでしょうか?


「なんだと!?結婚の約束?そんなのいつしたのだ!?あ?私が居なかった時に会いに来ていた事があったな!その時か?あんな幼いアイラに結婚の約束など理解しているわけがない!無効だ」


「あ?お前に口を出されたくないね」


お兄様とルース様が睨み合っています。


「それ、マリルとアクアがお断りしてくれていましたがルース様、無視されてお帰りになっていましたわ」


「断り?あの時に!?」


「はい」


「それは記憶に無い!困る!結婚しないとアイラを刺せないじゃないか!」


いえ、結婚しても刺してはいけませんわ。そして今でもその気持ちは変わっていないのですわね。


「アイラを刺すだと!?うわー!止めろ!こんな所で何を言い出すのだ!!気持ち悪い!!この獣変態が!」


......何かとてつもなく違う方向に勘違いしているのではないですか?お兄様?


「変態のお前には言われたくないぞ!?」


変態同士の喧嘩に発展してしまいましたわ。


「はい、はい。ルース殿はアイラ聖女様に結婚を断られていたので残念ですが諦めて下さい。ルネ様もアイラ聖女様の事になると何故いつも変態的な考えに行くのですか?悪い癖ですよ?そして貴方達お二人共、変態です。以上」


ミカエル様がお2人の喧嘩を止めましたわ。流石です。

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