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「これが体落としという技だ。近接戦闘では長物を持った相手に有効な投げ技だな」


「思いっきりナイフですけど」


「手の延長線上と考えれば全部一緒だったりする」


「は、はあ……」


 組み際で、相手に袖とか襟を取られたら負けだと思えば素手もナイフも変わらないよな。

 流水の道衣で威力をするっと受け流してそのまま流れに乗せてポンッと投げる。


「コーサー。投げの際、普通は腕を引いて相手の後頭部を叩きつけない様にしなければならないのだが、今回は特に関係なくそのまま顔面から叩きつけて腕もへし折……うーん硬い」


「のんきに説明している場合ですか! 師匠!」


「いやでもわからないと思ったから」


「見て覚えますから、説明は王都闘技場の修練場とかでお願いしますよ!」


「わかった」


 ならさっさとこの敵を片付けるか。


「お前、魔法職のくせに近接戦闘をするようだな」


「む?」


 押さえ込んでいた暗殺者がなんか喋り始めた。


「なかなかエゲツない事をするようだが……やってみろ」


「ほう」


「我々の様な本物の暗殺者は拷問に耐えうる堅牢な耐久値とスキルを持っている。たかが魔法職の素手での攻撃なんぞ、効きはしないとよく覚えてお──」


「──スペル・インパクト」


 フル詠唱したスペル・インパクトを用いて延髄に手刀を叩きつけた。

 第三頸椎あたりからゴキっと音がして、喋っていた暗殺者は言葉を失う。


 言いたいことは、お前が拷問したやつは本物じゃないとか、そんなところだろうか。

 こっちからすれば本物でも偽物でもなんでもいいよな。

 誰だろうと向かって来るものは全て蹴散らすのだ。


「そもそも本当に素手で戦っているかといったらそうじゃないしな」


 さっきの暗殺者が死に際にいったように、魔闘系のスキルを失った今。

 俺の戦力は著しく下がったとか、思われるかも知れん。

 俺の情報を知り得る奴らならば、そう捉えるだろう。


 だが、膂力が弱くなったくらいでだな……。

 俺自身が弱くなったと捉えるのはいささか早計だ。


 相手を図るならば、その実力を見よってな。

 生産組のように、コーサーのように、専門性に優れた才能を持つものはたくさんだ。

 一概に見た目だけで推し量れる物ではない。


「羅刹」


『はいはい』


 羅刹から異様な雰囲気が滲み出てくる。

 暗殺者たちは、それに気づいてやや交代した。

 さすがだな、これは羅刹から出る邪気である。

 かっこよく言えば邪気解放。


 様々な異常状態を相手に付与し強制的な恐慌状態を生む。

 いささか暗殺者には効き目が薄くも感じた。

 そりゃ場数を踏んで慣れて入れば、少しの抵抗も持つだろう。

 だが、そこにローヴォのバッドラック効果を追加すれば相乗効果だ。


「散れ! 散るんだ! あの男はやばい!」


「包囲戦ではなく、我らの強みを生かして再び闇討ちに切り替えろ!」


「隊列組み直して、精神状態保護のアイテムを全員使え!」


「くっ、これほどとは! ベンゼルさんにすぐ伝えてきます!」


「逃がしません!」


 発砲音が数度響き、散会した暗殺者の何人かをぶち抜くコーサー。

 良い腕だ。

 俺も羅刹を投げて一人の背中に打つける。

 刺さるだけでも傷が治らないから厄介だよな、この刀。

 空蹴で移動しながら、すぐにアポートで引き戻して構え直し、別のやつを一閃。


 一人一人片付けていくのも面倒になってきたので、手傷だけを負わせるぞ。

 手足がなければ仕事もままならないだろう。

 暗殺業引退の時間──、


『──キャインキャイン!』


「ローヴォ!」


 遠くでローヴォの悲鳴が聞こえた。

 その瞬間、悲痛な意思が伝わってくる。

 どうやら、ローヴォでも手に負えない敵と相対したようだった。

 まずいな、死にはしないとしてでも……もう二度と死なせるわけにはいかない。


「師匠、あの悲鳴……」


「すまんなコーサー、先に行く」


 置き去りにするのは忍びないのだが、ここはひとつ、一人で戦い抜いてほしい。

 それを伝えると、コーサーは言う。


「大丈夫です。なんとか戦えてますから! 私もここの連中を全て片付けたらすぐに後を追います!」


「頼むぞ。俺の弟子なら、このくらいの死線は超えてみせろ」


「はい!」







==コーサー視点==




 師匠は上空へ高く飛び上がると、いつもの跳び方で一直線に悲鳴の聞こえた方へ向かって行った。

 それを見送って、俺も暗闇に消えた暗殺者たちとの戦いを再開させる。

 師匠の放った殺気とも言えない強烈な雰囲気を浴びて、一気に散開してしまった暗殺者たちは、やや面倒臭い戦い方にシフトしたようだった。


「はあ……死線を超えろ……か……」


 まったくとんでもない一言をさらっと言うもんだな。

 出会った時から、今の今までここまでろくな目にあったことがない繋がりって言うのも稀だと思う。

 でも、それで今の俺がいるし、家族のような仲間達だっている。

 俺だってこう言う生き方は嫌いじゃないし、元からそんな感じでそれがちょっと激しくなったってだけ。


「おら、出てこいクソ共」


 銃を構えながら、暗がりに向かって言う。


「俺もテメェらと同じ掃き溜めの人間だからな、正々堂々遣り合おうぜ」


 気配がやや動きはしたが返答はない。

 そりゃ返事したら位置バレするだろうから、しないか。

 なら気配があっていそうな場所に適当に撃ってみて確認しよう。

 殺気を消してるみたいだけど、行動に移った瞬間は隠せない。


 荒療治じみた師匠の教えだけど……なんか役に立ってる……。

 素直に喜んでいいのか悪いのか、わからないけど。


「おっと」


 ナイフが飛んできた瞬間。

 飛んできた方を撃ったら羽虫が落ちるように人が倒れた音がする。


「はあ……仲良くしようぜって言ってんのにな……」


 ため息をつきながら思う。

 飛んでくるナイフを素で避けれるようになっているあたり、感謝するべきなんだろうなって。

 もともとチンピラで俗世からかけ離れたのけもの生活をしていたとは言え、それよりもまた別次元で違う世界に足を踏み込んでしまっている気がする。


「フフン、敵に向かって仲良くしようとは……面白い」


 影から誰かが姿を表す。

 ガタイの良い筋骨隆々の大男だった。


「貴様は……コーサー……ふむ、田舎都市のマフィアと同じ名か……だがそれにしては覇気がないな……名前を語る偽物か? だったらややこしい奴だな」


「……誰だ」


「私はベンゼル。さて、貴様が掃き溜めと吐き捨てた連中の尻拭いをしに来てやった」


 ベンゼル……なんか暗殺者の一人がそんな名前を口にしていたな……。

 ってことは、この大男が暗殺者の親玉みたいなものなのだろうか。

 いや、きっとそうだ。


 やれやれ……。

 悲鳴を聞いた師匠をこれ見よがしに見送って、なんか危なそうなところから上手く離れられたと思ったのに……。

 なんだか強そうなのがこっちに来てしまった……。


 どうしようかな。

 とりあえず逃げたいな、と思いました。

 師匠の走ってった方向が安全な気がする。






NPCの心理描写とか、そっちの視点描写はあまりやらない方向性でいたのですが、コーサーはそろそろ良いかなと思いました。

次の話からコーサー視点でやりたいと思います。

この話が終わったら、王都闘技場編後編をババアアアー!とやっちゃいたいと……ね。





コーサー一人で頑張ってー!

ここでアンジェリックとの思い出とコーサーについてのもう少し詳しい内容をつらつらできたらいいな!





誤字脱字は毎回すいません。

感想いただいてるものにつきましては、直せる状況があれば直しています!




土下座。

誠心誠意を込めて土下座。


暇な人は、あとがき土下座何回してるか数えてみるのもいいですかね。

嘘ですすいません(土下座

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