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少しだけログアウト。
速攻で飯を食べてから、少しばかり鍛錬にて体を動かした。
VRって脳と密接に関わってるらしいよな。
こうしてしっかり栄養補給と頭を使った運動を行い、ログインしたら暗殺者集団との戦いをば。
「……少し鈍ったかな」
汗ばんだ体を見てそう思った。
まあいい、体の調子はいつでも戻せる。
そのまま道場で座禅を組んでGSOの中へ。
ログイン。
ドアも窓もしっかり板張りしてあって、ただでさえ暗い部屋がさらに暗くなっていた。
灯された蝋燭の隣でコーサーが剣を磨きながら待機していて、ログインした俺に気付き視線を向ける。
「行きますか?」
「いや……」
ローヴォの声があるまでしばし待機するつもりだったが。
『ワォーーーーーーーン』
夕暮れのローロイズに狼の遠吠えが響いてきた。
それが合図である。
「行くぞ」
「はい」
コーサーとともに家を出た。
装備は戦闘用に切り替える。
と言っても流水の道衣に軍帽を被るくらい。
市販の麦わら帽子より防御効果多いしな。
コーサーは俺のおさがりの軍服に着替えていた。
チャラい服から印象がガラッと変わる。
ホルスターに銛銃、魔銃をいくつか装備し、剣帯には長剣とナイフを挿して狙撃用魔銃を背負う。
そんなコーサーを見て思い出した。
「そのライフルだけど、今日はこっちに切り替えろ」
「はい? ……おお、ライフルの先に剣が付いてますね」
ストレージから取り出したるは、銃の先に刃がついたもの。
銃剣だな。
「近接格闘の動き方はこれからも教えていくが、適材適所的に考えてコーサーの得物はこれがいい」
「これ一つで狙撃も近接もできるということですか」
「そうだ。でもまあ、状況に応じて使い分けは大事だぞ」
銃先に剣がついているからと言って、それだけで全てがしのげるわけではない。
だが、遠距離用ではなく中距離向けの銃に剣がついているだけで制圧力は大きく変わる。
「わかりました。なんとかやってみます」
「うん」
「よし、走るぞ」
武装状態で大通りに出ることは特に問題にならないが、どうせならと裏路地を通る。
その理由は、
「敵だ」
暗殺者ならば人目につかないエリアが絶好の攻撃チャンスになるからだ。
屋根の上を走る足音。
そして暗がりから投擲物が飛んでくる。
「はい師匠!」
ガァン!
と突き抜けるような発砲音が響き、俺の脇の通路からナイフを携え襲いかかってきた暗殺者の一人の撃ち抜いた。
額にクリーンヒット、上出来だコーサー。
思わず顔がにやけてしまいそうになった。
弟子の成長ではなく、コーサーの才能にである。
「よし!」
「気を抜くな、後ろだ」
「わわっ」
剣を抜いた手合いが音もなくコーサーの後ろに出現。
おそらく足音を消して気配を断つスキルだろう。
スキルによる気配察知があるゲーム内では、対抗スキルももちろん存在する。
だが、そりゃスキルに対するものだからスキルなしの練度を磨けば対応できる。
そこから実力を察すれば格下だな、なんて思えるのだが……。
レベルとか俺の知らないスキルとか、そういう状況を加味すればこの段階まで来ると侮れない。
「ぐっ!」
銃の腹を使って剣を受け止めるコーサー。
助けようかと思ったのだが、俺も俺で正面から来た暗殺者が忙しい。
という、体裁にして目を向ける。
どうする、コーサー。
するとコーサーはあえて自分から後ろに倒れて相手を馬乗りにさせると、その隙にホルダーから普通の魔銃を取り出して顎に二発ぶち込んだ。
「やりました師匠!」
「上出来だ」
隙を作る、という動きはできるようになったみたいだな。
さてと、暗殺者の数はだいたい20人くらいだろう。
狭い路地で一人一人倒していくのが最善策かもしれないが……。
それだとコーサーの銃が使いづらいだろう。
「コーサー」
「はい?」
「上に行くぞ、屋根の上だ」
「わわ、ちょっと師匠!」
コーサーの腕を掴むと、空蹴を連続して用いて上へと駆け上がる。
うーん、やっぱり多少重たく感じるのかな……今のスキル構成だと。
身体強化スキルなんて【ワイズブースト】くらいだからなあ……。
さらに強い相手と戦うならば、俺もより一層魔法を使った戦い方にシフトするのが一番だろう。
魔法スキルのレベル上げ頑張ろうと思いました。
「……師匠、屋根の上に来ましたけど……取り囲まれてますよ」
「問題ない」
「ピンチじゃないんですか?」
「お前なら動いてようが普通に当てれるだろ」
「そ、そんな無茶な! この人数ですよ!」
「コーサー信じてる」
「だから!」
そらきたぞ!
頑張れコーサー負けるなコーサー!
ちょっと興味を惹かれて、俺は暗殺者集団の中から空蹴で離脱。
石柱を出したり消したりして上空に止まりながら、俺はコーサーvs暗殺者を眺めることにした。
誤字すいませんでした。




