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「よし、こいつらは割と情報を聞き出せたな」


 命乞いする程度の連中だが、逆にそれに合わせてやれば楽にことが進む。

 これなら、一番最初の路地裏の奴らが一番マシだった。


「……うう……関節が、あんな風に……」


 口元を抑えるエミリオ。


「うーん、これはお見せできませんね。グレイスに確認してもらって、私がエミリオ様を連れて離れれば良かったかもです」


「何を言っているフラシカ。実に見事な手際だったじゃないか。最小限の痛みで、後のほとんどは精神的な威圧攻撃。スマートで実に良い。参考にさせてもらおう」


 げっそりしながら苦笑いを浮かべるフラシカだが、グレイスはやや目を輝かせていた。

 彼女の言う通り、痛みばっかり与える奴がいるが訓練したりスキルで耐性持ってるやつには意味ないよな。

 痛覚カットPKを相手してると、こう言った精神的なものが一番上達するんだ。

 復讐者称号の効果で、痛みを感じさせることもできるのだが……あれはいつの間にかなくなっていた。


 やっぱり運営もダメだと思ったのだろうか。

 結局やられた相手にリベンジする際、耐久力とか身体能力、魔力。

 その他諸々のステータス的な部分に補正がかかるだけのものになってしまった。

 同士討ちみたいな感じでも効果が作用するので、ジョバンニ絶対殺すマンとなる。


 さらにテイムモンスターもしくは契約モンスターの死にも効果は乗る。

 つまりコーサーあたりをあえて殺させて、俺がパワーアップすることもできるって寸法だ。


「な、なんですか。なんで意味深な目でこっちを見てるんですか師匠」


 多分使うことはないけどな……多分。


「なんか言ってくださいよ。怖いんですけど」


「なんでもない」


「絶対なんかありますよね!?」


「なんでもないったら」


 さて、街中から少し離れた土地にある屋敷とは言え、あれだけの爆発音を上げて倒壊したんだ。

 ぞろぞろと人が溢れてくる。

 フラシカが野次馬や、走ってきた町の衛兵に対して説明をしている間に、俺はエミリオとグレイスそしてコーサーとローヴォを連れてとある場所へと向かうことにした。


「どこへ行くのだ?」


「安全な場所だ」


 彼らを連れ立ってやってきたのは、ローロイズの街中大通りから少し裏路地を通った場所にある一軒家。

 別名、スティーブンの別荘。

 ローロイズへ来た時に、泊まる場所はここを使えと言われていた場所だ。

 南の山小屋しかり、王都の外れの森にあるきこり小屋然り。

 ここももちろん転移ゲートのような物でつながっている。


「まあ、確かにここなら安全かもですね……」


 相変わらず裏路地にしか入り口がなく、そして光もまばらな薄暗さ。

 常に燻らせているスティーブンのパイプの匂いが染み付いたそんな部屋。

 最近拠点を別所に移していたから、テンバーの家と内装がほぼほぼ近い家って懐かしく感じる。


「だからここはどこだと言うんだ」


 テーブルに少しだけ積もった埃を指ですくって、露骨に嫌悪感を表すグレイスに言う。


「俺の師匠スティーブンの家だ」


「な!? 賢者様の家だと!?」


 その瞬間、シュッと姿勢を正す姿はなんだか笑えた。


「え……ガ、ガイド様は無属性の賢者であるスティーブン様の弟子なのですか……?」


「まあね」


 素直に答えると、エミリオは俺の前にダダダっと近寄ってきて手を握りしめた。


「すごいです! 賢者の弟子になるなんて、それこそ並外れた才能を持っていなければなりません! しかも、弟子を取らなかったスティーブン様のお弟子だなんて!」


 スティーブンが弟子を取らないと言うが、彼はすでに俺以外にもう一人ツクヨイを弟子取り、ちんちくりんな彼女にお小遣いをあげるほどにデレデレなおじいちゃん師匠だ。

 尊敬はしているが、なんか周りが思ってるよりもずっと身近な存在だよな、と思う。


「エミリオ、俺はまだ弟子の身分だから、誰かの師匠になるなんて無理なんだよ」


 目を輝かせているところをすまないが、そういうことだ。


「でも、コーサーさんは」


「あいつは魔法じゃなくて、普通の俺の弟子だな。雑用もずっとやっててくれてるし」


 そもそもテージシティの二大マフィアと呼ばれるまでに育ったコーサーファミリーのトップなんだが……同じ名前を持っていてもチャラ男っぽい格好が邪魔して全く疑われていないようである。


 まったくコーサーは。

 もっと覇気を持てよ。


「思い返せば、私ももともと弟子ではなかったんですけどね」


「まあな」


 すると、興味深そうな顔をしたエミリオが尋ねた。


「二人の出会いはどのようなものだったのですか?」


 コーサーが答える。


「そうですね。私がただのチンピラで、師匠に喧嘩をふっかけて殺されそうになったのが出会いですかね」


「殺されそうになった!?」


 驚くエミリオに、コーサーが乾いた笑い声を漏らす。


「ハハ……現に隣にいた仲間は瞬殺されましたよ……私は運が良かったです」


 なんだか懐かしいな。

 裏路地のチンピラ狩りが楽しくなって、そこでなんとなくチンピラを情報源にしようと舎弟にしたら、そのままズブズブとした関係性が続いている、とでもいうべきか。


「もっとも、名前すらない私は、あのままだときっとどこかで喧嘩に負けて死んでいましたし……いろんなことを教えてもらえて、経験させてもらえているので師匠には感謝してます」


「ガイド様は、素晴らしいお方なのですね!」


 なかなかいいことを言うじゃないかエミリオ。


「いや、エミリオさん……師匠は素晴らしい方ではないですよ。敵と見定めたら平気で人の嫌がることもしますし、何より僕よりも根にもつタイプですから」


「おい」


 なんてことを言うんだ、コーサーめ!

 確かに根にもつタイプだけど、一回仕返ししたらスッキリするタイプだぞ!





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