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-583-※※※縁・視点※※※


 あの時ノークタウンに出没した巨人はかなり大きかった。

 怪獣映画に出てくるような、そんなサイズでもある。


 だが、目の前の存在はどうだ。

 サイズはあの時ほど大きくはないが、肌が黒紫色になり、ごつごつとこの世のものとは思えないような容姿に変貌している。


 はっきりいって異質だ。

 言葉を失ってしまうほど。


「これ、マジでゲームなのか? プレイヤーアバターが変化するとか、聞いたことねぇよ……なあ、──縁ィ!」


「ッ!」


 強烈な踏み込みをなんとか横に転がってかわす。

 ついでに土と水のスキルを詠唱破棄とともにぶつけるがダメージは通らないようだった。


「ハハッ! 爽快な気分だぜ! ステータスは……おいおいおいおい、軒並み三倍以上に上がってんじゃねぇかよ! なんだこれ、スキルの上からさらに上がってんだぜ!? ヤベェよ!」


 レベル70後半の剣士の一般的なステータスは、STRとVITが250程。

 AGIの中途半端さは、身体強化スキルで補いつつ、さらにパワーと耐久力が増す。


 ほんっと、身体強化スキルはぶっ壊れだよ!

 MNDとDEX以外は全部上がるんだからね。


 スキルの種類ごとに重ねがけはオッケーだから、さらに厄介。

 その上に、さらによくわからない薬の効果でステータスが三倍近く。

 ……化け物だな、と思う。


「覚悟しろや縁ィ!!!」


「ぐはっ!」


 ガイアベールとアクアベールを重ねがけして、なんとか耐久力を増す。

 だが、かなりのダメージをもらってしまった。

 土属性の防御膜スキルは、近接ダメージも通りにくくするはずなのに、なんてこった。


「アフィース!」


『はい、マスター』


「君はあの変貌がなんなのかわかるかい?」


『逆探知からの解析では……闇精霊の強制使役物に近い存在です』


「闇精霊?」


『魔族と共にあることを選んだ、忌まわしき一族の系譜になります。まあ、正直私の存在もそれと──』


「──何ぶつぶつ文句言ってんだ根暗野郎!!」


「うわーっ!?」


 跳躍と共に地面を凹ませるほどの強烈な蹴りが目の前に落ちる。

 あのトモガラさんも、地面めくれるくらいの攻撃してたのを遠目から見てたけど、まさか僕もそれを体感しちゃうなんて、思っても見なかった。


 そして、真正面で地面がめくれ上がった感想。

 本気出さなきゃ僕もやられちゃうってことかな。


「アフィース、アレを使うよ!」


『かしこまりました。では陣縁を起動してこちらで制御しますので、あとはマスターにお任せします』


「うん!」


「ああ? 今更足掻こうとしても結果はかわんねぇよ」


「……違うよ純也君」


 きっと君のその薬は、とんでもない効果な分。

 とんでもない副作用が眠ってると思うんだよね。


 このゲームでは、基本的に等価交換というか。

 スキル自体はそういうのが甘めに作られているけど、アイテムとかプレイヤーの状況はうまく均衡が取られるように作られている。

 初期に起こったバッシングも、過ぎたプレイヤーが招いたことだし。


「何が言いたいんだよ」


「そんなにお手軽に強くなれるアイテムだったら、効果が切れた後に君はきっとひどい目にあう」


 ゲーム内での感覚と、リアルでの感覚は、擬似的なようで究極的な絶対的な部分は切り離されていて影響はない、ということにされている。

 こうやってゲーム内で薬を使って快楽を得ても、酒を飲んで酔いどれに塗れても、現実には影響しない。ということにしておかないとまずリリースが困難だからだ。


 確かに制限があってそういうところはしっかりしているのだけど、一度許容を超えると現実での精神に影響する可能性がある。

 無いと断言されているが、無きにしも非ずというところだ。

 ゲームの世界での記憶は現実世界にしっかり残っているんだから。


「だから……」


「──うるせぇ! バッドステータスがあってもその前にテメェ殺せば鬱憤は晴れるんだよ根暗雑魚ォ!」


 だから、一瞬で蹴りをつけるんだ。

 もう友達じゃ無いけど、これは最後の友達思いって感じの体裁にしとく。


『準備完了です』


「ありがとうアフィース」


 それじゃ、起動だ。


「樹属性陣縁魔法──起動」


 僕の声と同時に、地属性と水属性が陣縁魔法の中で混ざり合う。

 そして亜属性と呼ばれる立ち位置にある特殊な属性魔法スキルを解放する。


 それが樹属性。

 森では最強だと、僕は思っている。


「うおおおお!?」


 ギシギシメキメキと樹木が蠢き、成長し、純也君を取り囲んで行く。

 陣縁内に再び外縁を囲むような樹木の檻を作りだす。


「おいおい、まーた同じ手法か? 結局二人で取り囲まれてちゃ意味ないだろ、バカかよ」


「いや、今回は君一人だけだよ」


「は?」


「僕は拘束されないし、なんなさトンネルみたいに出れるからね。じゃ、バイバイ」


「あ、おい!」


 そのまま縁を描いていた物は球体となり丸い牢獄として成長する。

 そしてもちろん、その中心には大量の木々に手足や身体を拘束された純也君。

 中から声が聞こえる。


「く、そ、があああ!! おらあああ!! テメェ縁!! 出しやがれ! おい! 根暗!」


「樹牢の強度は、オーガの上位クラスで試したこともあるし、純也君には絶対破れないよ」


「ごるぁああああああああ!!! ガアアアアアアアア!!!」


「絞め殺すことはまだできないけど、そのまま石でプールを作って、水流し込んで窒息死にすることだってできる。地形変更を攻撃転換できるのが土属性と水属性の大きな利点なんだ」


 そう説明するけど。

 もう、純也君には聞こえてないみたいだった。


 精神感応してくるわせるようなアイテムが昔PKの間に出回ってたけど。

 それと似たような、いや上位版なんだろうなって思う。

 錬金術は等価交換の原則に如何にゴマをするかってのが鉄則だから。

 そうやって、ガンガンバッドステータスとか盛り込んで作られたのだろう。


 人のことを全く考えない、そんなアイテムだ。

 反吐が出る。


 とりあえず、樹木の締め付けに耐えきれなくなったら勝手に死ぬからここは放っておいていいだろう。

 陣縁魔法の魅力は効果が長時間持続することだ。

 地、水、樹と本当に相性がいいと思う。


「さて、ローレントさんのところに戻らなきゃかな。彼よりも、その弟子であるコーサーさんの方が心配だし──」





 ──ドォォォオオオオオオン!!!





 一瞬の閃光ののち。

 耳を劈く爆音が突き抜けた。









更新遅れてしまいました。

次回ローレント回に戻ります。





アフィースは、適当に並べた英単語の頭文字を取っています。

せっかく考えてアフィースって名前にしたんですけど、結局どんな単語を使っていたかは忘れてしまいました。(メモ帳に記載してなかった私が悪いのですが……)


人工……精霊……なんたらかんたら……だった気がします。






ってことで、ようやく亜属性魔法スキルを出すことができたということで……、ここから徐々にジョバンニさんの目的も紐解けて行くような行かないような、そんな感じなので、あまり期待はしないでください……。






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