-581-※※※縁・視点※※※
ただいま戻りました。適度に書き溜めはしております。
僕の属性は土と水。
そして、とある魔法使いのNPCを指示し、陣縁魔法のスキルを用いてそれを操る。
土と水の相性は抜群だ。
なんとなくこのゲームの自由度なら作れるかなって思って乗り物を作ってみたけど。
思いの外、これは有効だったりする。
土属性魔法スキルで作った鋼鉄の棒芯に、同じ素材の車輪。
まだベアリングを作るまでには至ってないけど、その辺は水属性で代用できる。
水属性のトッププレイヤー、十八豪さんのスキルからヒントを受けて作った。
「で、森での運用は初めてだけど……ッッ!」
土属性魔法スキルで道を作ってやれば、問題ない。
車輪の回転を、もっと早く。
今度、戦車みたいなキャタピラを用いてもいいかもな、なんて思いながら、森を駆け抜ける。
移動速度は、ローレントさんには敵わないや。
やっぱり空間魔法スキルを使用した直線距離での移動はとてつもない。
それにヒントを受けて、できる限り一直線に盛り土して道を作ってるんだけど。
「おっと、MP回復しとかなきゃね」
ジュンヤ君達、本当に変な人たちと手を組むつもりなのかな。
ローレントさんにやられたこと相当恨んでたみたいだけど、どうしてそこまでするのだろうか。
ネトゲの世界でPKとかMPKって、確かにモラルに反した行いだけど。
別に僕は否定はしない。
プレイヤーの自由だし、とりあえずの対策も、運営側はしていたはずだから。
でも、それは過去の話なのかな。
このゲームの世界は……なんだろう……生きている。
そういえば良いのだろうか?
いったいどんな技術とか、使っているのかわからないけど。
とにかく僕は、今までのどんなゲームよりも、この世界のNPC。
住人たちは、この世界の中で生きていると、そう思えた。
遊戯を楽しむのはもちろん良いのだが、こうやって騒動を引き起こすのはどうかと思う。
危険だよね。
まごうことなく、リアルな世界観で、人を殺す生かすの範疇がゲームって枠組みで無責任になってる。
そんな気がした。
だから、止めないとな。
なんて、ヒロイックになってる僕がいる。
「それに、初めて大学でできた友達だし」
自分で言っててなんだけど。
僕はぼっちだ。
スクールカーストでも、パシリ役というか。
上手い様にこき使われてって感じ。
まあ機械いじりが好きで、そういうヲタクカテゴリーに入ってたからだと思う。
小学生の時、クラスランキングみたいなのが流行って。
僕の項目は「優しい人」第1位的な感じだった。
「まあ、多分ジュンヤ君たちからの扱いは昔と変わってないけど」
それでもこうして一緒にゲームやって、大学ではそんなゲームの話をしながら過ごして。
僕にはすごく“貴重”な時間だった。
「アフィース!」
『はい、マスター』
「下からジュンヤ君たちの場所を特定して」
『空気中の水分を使って特定した方が早いですマスター』
「ならそれで!」
『特定完了。場所を指示します』
ぼんやりとした光の玉が、僕の正面に浮かび上がる。
これは僕がゲーム内で偶然ジュンヤ君達と出会う前、一人で適当にプレイしていた時に偶然見つけた宝箱から出現した精霊。
レア度は……計り知れない。
上位の鑑定スキルでも未だ「???」だからだ。
でも僕の助けになってくれる、すごく良い奴。
「いた! ジュンヤ君たちだ!」
森の中の少し開けた場所から、虎視眈々とローレントさんをつけ狙おうとする彼らを見つけた。
相変わらず四人で固まって動いている。
大学でも大体そうだし、僕もたまにジュンヤ君の家に呼ばれることがある。
彼の家はそこそこ金持ちだった。
「アフィース、とりあえず運転代わって!」
『はい』
「陣縁起動。そっちの制御もできる?」
『機能制御により、一度に一つのことしか受けもつことができません』
「なら、仕込みはこっちでやるから、彼らの周りをぐるっと一周!」
まずは向こうでゴブリンの軍勢とどんぱちやってるローレントさん達から狙いを背けよう。
陣縁魔法をジュンヤ君たちパーティの足元に大きく展開し、その外縁に土壁を生み出す。
「ん!? なんだ、これ!! おいジュン!」
「きゃあ!! なによ!!」
「ジュンヤ君こわーい!!」
「……これ、エニシか? つーか、土属性と陣縁魔法持ちのやつは縁しか知らねえしな」
察しが早い。
僕も隠れていないで、乗り物から降りて彼らの前に出る。
「ジュンヤ君……」
「縁……ローレントの野郎が俺たちの存在に感づいてると思ったら……てめえが告げ口したのか?」
頷くと、後ろにいるマヤとミキが「最低ー!」「ほんっと空気読めない!」と騒いでいた。
比較的話のわかるタケト君も、ため息をつきながら首を横に振っている。
「縁……やっていいことと悪いことがあるぜ……?」
「いや、やっちゃいけないことをやってるのは君たちの方だよ」
そう言うと、ジュンヤ君が僕を睨みつける。
「いい加減さ、空気読もうぜ?」
ため息をつきながら僕に言う。
「別にゲームなんだからいいだろ? こうやってある意味敵対側みたいなところについてプレイするのも楽しいじゃん? ほらお前がよくやってたロールってやつだよ」
「こんなのはロールって言わない」
悪役ロールを好き好んでやる人もいるけど、美学なくして気晴らし程度にやるのはリアルヤンキーとかDQNと一緒だと思う。
そもそも、この世界ではNPCが普通に死ぬ。
そして死んだら生き返らない。
それで悪役気取るだなんて、ロールって言わない。
野良猫殺してイキがってるやつと同じだ。
「憂さ晴らしとか、そういうのは魔物相手にやったほうがいい。中途半端にそんなことすると、PKKとかこの世界の治安を維持するNPCから睨まれて今後まともにプレイできなくなるかもしれないんだよ」
だから。
「止めに来たんだジュンヤ君。──まだ引き返せる」
そう告げると、ジュンヤ君は剣を構えた。
「お前さ……ヒーロー気取ってんじゃねえよ」
「別に気取ってるわけじゃ……ないけど……」
「大学じゃどことも馴染めてないぼっち野郎だろ?」
マヤとミキがうんうんと頷いている。
確かにぼっちだ。
だから返す言葉がない。
「だからお前こそこっち側につけよ。ちなみに不利じゃないぜ? こっちには有名どころのプレイヤーだってついてんだ。いっそこれを気に、悪役プレイの道も楽しいだろ? いや、絶対楽しいぜ。こんなのゲームでしかできねえ」
「キャハッ! 映画みたーい! 追っ手から隠れて逃げながら生きてくのよねー!」
「あれ? マヤってそう言うの好きだった?」
「うん、スパイとかのアクション映画はよく見にいってたんだー! ミキは恋愛ものが好きだって知ってたから、気軽に誘えなくて」
「ちょっとマヤー! 言ってくれれば一緒に観に行くのに!」
「なら今度私の家でみんなで見ようよ? 宅飲みしながらさ!」
「……だってよ縁」
マヤとミキの話を聞いて、タケト君が僕を諭す。
「まあ、そういうプレイもありだって方向性にみんなで考えた結果なんだ。だからお前もついてこいよ、なあ? こんなところで意地はってないで、少なくとも……俺らはお前もまだ友達だって思ってるからよ」
「…………」
黙っているとタケト君はさらにセリフを続ける。
「人間関係ややこしい大学でだ、テストに勉強に、ストレス抱えてるんだから、こう言うゲームの世界で好き放題して息抜きするのも大事だろ? ゲームなんだからそんなに熱くなるなよ」
「……ゲームだから……か」
黙っていると、
「そうそう。仲間割れはやめよーぜ?」
タケト君はそう言いながらジュンヤ君の肩を叩き、彼にも同意を促す。
宥められたジュンヤ君は、舌打ちしながら剣を下ろして僕に言った。
「でも余計なことしやがったペナルティな。現実には持ち込まないでやるけど、こう言った依頼毎の報酬はしばらくお前抜きで等分する。これが終わればとあるギルドに招待してもらって、そっから依頼ガンガン受けれっからよ」
「……」
そのとあるギルドとは、ローレントさんにジュンヤ君がやられた後に接触してきたところ。
確か、“ヴィリアン”というプレイヤーが窓口になってる“闇の組織”とかいうプレイヤーズギルドだ。
拠点はメトログリードらしく、おそらく第二弾アップデート後に作られた裏ギルドのプレイヤー受け入れ口みたいな扱いだろう。
詳しいことは調べきれなかったけど……。
悪役するくらいなら……。
ヒーローになりたいと素直に思った。
「ここで、お別れだねジュンヤ君」
「なに?」
「もう大学でも無理に話しかけてこなくていいよ」
僕は陣縁魔法を用いて作った壁から、その内側に、元パーティ達に向かってストーンジャベリンを起動する。
人生に行き詰まり。
そして仕事も失い。
あらゆる意味でドブをすすったような日々を過ごしていました。
そしてやっと帰ってこれました。笑
またできるだけ更新頑張りたいと思います。
GSOの書籍買っていただけました皆様には、更新休んでしまい誠に申し訳ありません。
WEB版の更新を楽しみにしていただけています皆様にも重ねてお詫び申し上げます。
ご感想にありました誤字、そして修正点などに関しましてはできるときに修正いたします。
書籍版でも大丈夫なのかよ?的な感想につきましては、書籍版ではほぼ全部改稿してますので、ご心配なさらず、という形です。
断じてコピペ書籍化なんてしていませんので、そこらへんどうぞよろしくお願いいたします!
ちなみにお休み期間に、人生に行き詰まったというのは嘘です。笑
生まれた時から行き詰まってます。




