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すぐさま、冒険者ギルドを出て、コーサーを連れて王都の西門へと向かった。
ハリスも来ようとしていたが、危険だと思ったのでやめさせた。
できるだけ誰にも邪魔されない様にと、身内が狙われる危険を排除したかったである。
ゴブリン達が叫んでる「ろーれんとろーれんと」なんだが、正直臭う。
いや、もはや臭うを通り過ぎてクサい。
明らかに、そして人為的に。
ローレント本人である、俺だけに向けられたものだろう。
犯人……誰か知らんがなんとなく予想はつくな。
ジョバンニか?
あいつの仲間に魔物使いギジドラがいるだろう。
十中八九あいつのせいじゃないかのかと思った。
「ゴブリン襲来か……」
「まだ上位の冒険者陣が揃ってないってのによ……」
「だが守るぞ、王都は守る」
駆り出された冒険者達が、武装をして西門をに集まっている。
この場所でぶつかると、王都の流通とかに影響が出るから、できるだけこっちも森の方へと近づく予定だ。
だが、そもそも王都はでかい。
あのゴブリンが徒党を組んで攻め込んできても、ビクともしないだろうと思う。
何をそんなに恐れているのだろうか、と思うのだが……。
羅刹が記憶にあるといっていたように。
人の国を滅ぼしたゴブリンがいるのだ。
それを想像しているのかもしれないな。
ましてや。
王都まで攻め込んでくる規模にまで拡大したゴブリンだから。
でもなあ……確実に人為的だから。
そこまではないと思う。
これが俺の名前を連呼していなかったら、とんでもない災害がワンチャンあったのだろうけど……。
「うおー! 王都に来て速攻ゴブリン襲来イベントかー!」
「おいおい、第二弾アプデがきてからイベントごとに運営は関与してないってば」
「作為的でもなくて、まさにたまたま起こったってこと? ラッキー!」
「どんな規模かはまだ出てないけど、とりあえずレベル上げのチャンスかもなー」
ちなみにプレイヤー側の反応はこんな感じである。
レベル帯は70中盤。
どうやら初めて王都へ来た勢らしいな。
王都へ来るには色々と街を経由したりしなければいけない関係上と信用度とレベル制限のことも重なって、まだなかなかプレイヤーは増えていない。
だが、こうした連中がこれからはどんどん来るのだろうな。
「みなさん!」
集団の目の前に冒険者ギルドの職員の女の人がメガホンもしくは拡声器みたいなものを持ってやってきた。
視線が集まる。
「詳しい個体数はまだわかっていませんが、これだけ揃っていればなんとか勝てると思っています! ですが、森に残されている事情を何も知らない冒険者もいると思いますので、できるだけその方達と合流しつつ、囲っていく戦法にしましょう! ……えーと、ギルド長代理の指示ですと……えーと、えーと……絶対に王都の外壁に近づけることもしてはいけないそうです!」
カンペを見ながらそう言う職員に、誰かが問うた。
「ここで待ち構えて上から打ち下ろした方が勝率が高いんじゃないかー?」
プレイヤーだな、このテンション。
「外に魔物が大勢いる状況が混乱を生む可能性がります! ギルドの責任と信頼にも関わってきますので、できるだけ離れた場所で駆逐する方向が良いそうです! 代理が言ってました!」
代理って……バニシグかな。
バニシグだろうな。
責任的なことを言いそうな人間ってあんなのしかいない気がする。
と、思っていたらバニシグが出てきた。
「急な呼びかけに集まってもらって感謝する! 残念ながら今冒険者上位陣とギルド長がいないものでね、私が代理として挨拶しよう」
……そもそも監査官だろう、お前。
「自体は一刻を争う! 上位陣がいない以上、なかなか厳しい戦いになると思うが、逆にこれをチャンスだと思っていただきたい! いなくても、我らがいればもう魔物脅威に怯えなくて済むんだと!」
「うおおおおおおお!!」
名をあげるチャンスというのはその通りだ。
だから、周りの冒険者達は意気揚々と声をあげるのだが……。
なんとなく俺は責任逃れ的な何かを感じていた。
まあいいや。
「ローヴォ、ノーチェ、ルビー」
とりあえず集団から少し離れたところで、契約者たちを集める。
これにコーサーを入れたある意味五人パーティーで俺は行くことにする。
「師匠、説明を聞かなくても良いんですか?」
「聞いてもあんまり意味なさそうだからな」
言ってることは総じて王都から離れた場所で対応しろってことである。
だったら、指示どうりに森の入り口で暴れまわろうじゃないか。
「コーサー、俺たちも大幅レベルアップのチャンスだぞ」
「ですね……頑張ります!」
コーサーには伝えなかったが。
俺の目標は先に奥へ向かって、これを引き起こした奴らを見つけることだ。
誰も巻き込みたくはないと、ハリスを置いてきたときに思っていたが……。
これ、そういえば王都巻き込んでるよな?
傍迷惑なやつだよマジで。
今度こそとっ捕まえて、二度とゲームできない精神にしてやりたい。
私怨だ。
私怨だが、別に私怨もいいと思います。
やられたらやり返すだけなのだ!
それでは、と。
演説しているバニシグは放って置いて先に森へを向かおうと思った時。
「ロ、ローレントさん!!」
「む?」
後ろから声がかかった。
「……誰だ?」
「ぼ、僕はエニシって呼ばれてた……その、この間色々迷惑をかけた人たちのパーティーに居た者です!」
「……あああー」
ジュンヤくぅんだっけな。
なかなか絡みがウザかったやつだ。
で、このエニシとやらは、まだいいやつって感じがしていた苦労人。
いったいどうしたんだろうか。
「このゴブリンの大群は、あくまで陽動で……実はローレントさん個人を狙っているんです!」
「……はあ?」
予想できていた方、そうです。
パリピの逆襲編です。
(隠された真の名は、パリピの逆逆襲拷問ーレント編です)




