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「このゴブリンの大群は、あくまで陽動で……実はローレントさん個人を狙っているんです!」
「……はあ?」
どういうことだ。
だれが、俺を狙ってるってことだ?
「詳しく知っているのか? この状況を起こした犯人を」
「えっと……その辺はわからないんですけど……」
でも、とエニシは続ける。
「パーティーメンバーがこれの混乱に合わせてローレント狩りやっちゃう? みたいな感じでずっと盛り上がってて……大学の方で……」
「なるほどな」
事を起こしたやつを探す俺を想定して。
こういうわけのわからん小さな因縁のあるパーティーを嗾しかけようとしているのだろう。
俺の目をジョバンニ、ギジドラ、リアードドとか。
そんな奴らに向けさせておいて、後ろからとかな。
奴らは何重にも裏を張り巡らす。
張り巡らして、張り巡らして、それでいて最後は煙をまく。
頭の中でそんな事を考えていると、エニシが頭を下げる。
「だからその、行かない方が……その混乱に合わせたPK行為が起こるというか……」
本当にすいません。と何度もだ。
なんというか……苦労してるんだな。
「お前もPKに誘われたんじゃないのか?」
「そうですね……誘われました。大学のサークルで初めて友達になってくれた方々だったので……僕はできるだけ止めたかったんですけど……これを機にサークル辞めさせられちゃいました。ハハハ」
「そうか。なんというか……巻き込んでしまって申し訳ないな」
謝ると、エニシは。
「いえいえ! でも、ゲームだからって何もしてない人を傷つけるのはお門違いっていうか……やっていいことと悪いことがあると思います。そこは流石に友達相手でも、曲げれませんでした」
強い目をしてそう言っていた。
なんというか本当にいい目をしてるな、なんて思う。
果たしてそれが、こういった仮想の世界でわかるのか。
そんな疑問が浮かび上がるが……実際に目の前のこの青年はすごくいい目をしている。
だが、こいつのお株を立てて見逃すわけにも行かない。
降りかかる火の粉は相応の手段を持って払わせてもらう。
「俺はお前のパーティーメンバーが襲いかかってきたら容赦なく殺すぞ」
「……もう元パーティーですね」
「それは潰してもいいってことだな?」
俺を説得でもしにきたのかと思ったけど、エニシの決意は固いようだ。
大学に通ったことなんかないし、そもそも人間関係なんかこの歳になるまでまともに作ってこなかった俺でも、なんとなく集団から省かれる疎外感はわかる。
これがきっかけでサークル辞めさせられて大学でハブにされる。
なんとなく申し訳が立たないのだが、そんな表情が顔に出ていたのか、エニシは言った。
「潰してもいいですが、あのパーティーの責任は僕が取って相手をしたいと思います」
「ん?」
「ですから、ローレントさんは因縁の相手の元へまっすぐ向かってください」
「因縁の相手……?」
他人の口からそんな言葉が出たのに驚きを隠せなかった。
まあ赤の他人プレイヤーからは、大抵色眼鏡を持った言葉を投げかけられるからな。
こうした言葉を受けることがあまりないから少し反応に困る。
「第一拠点を使っていたプレイヤーと、PKのプレイヤー間戦争って結構有名ですよ? こういうゲームは大抵クラン同士のぶつかり合いになるんですけど、そんなの度外視したプレイヤーの個人間の争いがあの規模の騒動まで発展してましたから」
「……そこでももしかして巻き込んでしまった感じ?」
だったら迷惑かけるなあ。
っていうか、やっぱり知らないところではやいのやいの言われてたのだろうか。
「いえ! 僕はジュンヤくんのパーティーが街の先へ先へとどんどん行こうぜって方針だったので、いざこざとは被ってなかったんですが……」
と、エニシはやや照れた表情を作りながら頬を掻き、セリフを続ける。
「掲示板をロム専でずっと追ってましたから……流れとか色々と知ってるんですよ!」
「掲示板? ロム専?」
掲示板はあまり見ないようにしてるから話についていけないな。
それを察してか、エニシは手をブンブンと降って言葉を濁す。
「ああ、でも叩き合いとかじゃなくて! ローレントさんのファンが集まった板っていうか、なんていうか!」
「ファン?」
なおさら謎だ。
俺にファンがいるとか、そんなの人生で一度たりともないぞ。
近場の人間なんか興味本位で寄ってもすぐに離れる奴らばかりだったしな。
「と、とにかくです! ジュンヤくんのパーティーは僕が責任を取りますので、ローレントさんは裏ギルドのPK集団を相手にしてください!」
「わ、わかった……でもな?」
「はい?」
「今回は誰がどう攻めてきても、作戦とかはないぞ?」
「どういうことですか?」
「裏ギルド相手にちまちま読み合いをしても、勝てないのがわかってるからな」
ジョバンニは、そういうやつだ。
どこまで先を読んで、どこまで策を張り巡らせているのかが見えてこない。
なかなか珍しいタイプの野郎だとは思う。
部下でも手駒みたいに容赦なく扱うからな。
トンスキオーネ並みの厄介さを感じたりもする。
ガリガリのトンスキオーネだ。
だから。
だから、だ。
「面倒だからもう正面から叩き潰すんだよ。ゴブリンも、そのジュンヤくんとかいうパーティーも、その奥に控えている奴らも、まとめて正面からなぎ払ったほうが手っ取り早い」
「…………」
責任を取ると言っていたが、別に取っても取らなくてもやることは変わらない。
エニシを真っ直ぐ見据えてそう告げると、彼は感極まったようにプルプル震えていた。
「あ、あの……その……」
「ん?」
「その言葉録音したいんでもう一回言ってもらっていいですか!!!!」
「…………………はあ?」
こわっ、なにこいつ。
十六夜かよ。
エニシくんは、魔王スレのROM専プレイヤーでした。
得てして、魔王スレ住民がローレントと邂逅した瞬間でした。笑
昔からいるスレ住民は、こっそり戦いに参加したり、こっそりバーベキューに参加したりと、集団戦があればどこかにこっそりいます。
でも邪魔はしません。
暗黙のルールがあるのでしょう。(多分サーヤあたりが作った可能性が存在します)
縁くんも最初はその鉄則を守ろうとしたのでしょうけど。
大学での仲間、魔王か、悩み抜いて選んだんですかね……?(想像です)
コーサー「掲示板!? ファン掲示板!? 一体どこにあるというのですか! ま、まさか……プレイヤー専用だとでもいうのですか!? くそっ、だったらコーサーファミリーだってファンだ! ファミリー全体がファンなんですけど!?!?」
トンスキオーネ「荒ぶってんな」
コーサー「トンさん! 今すぐ招集をかけてください!!」
トンスキオーネ「ボス系スキルまだ登場してないんだからネタバレすんじゃねーよ。落ち着け」




