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「ああもう、白けたからもう帰って!」


「まだ話は終わっとらんじゃろう」


「そうやって頑固で意固地なところは欠点だよ、スティーブン」


 そのまま俺とスティーブンは警備の人を呼ばれて追い返された。

 もっとも、向こうから来いと言われたわけではないので、こうなってしまえば引き返すしかなかった。

 マジで、何しにいったんだ……?


「お主、ちと手がやはすぎはせんか?」


「それはわかってますけど……」


「煽り合いを制して、そのまま条件をつけて弟子同士を戦わせる計画がパーになってしもうた」


「ええ……」


 そもそも、俺とハザードの関係とか、弟子がどうとか、パトリシアの弟子のこととかどこぞの情報網で知り得ているのかは知らないが、知っているならこうなることも考えうるんじゃないか?


 つーか、だったら先に言ってくれよ。

 不満しかないぞ。


「くだらない煽り合いしてる師匠連中もどうかと思いますけどね」


 スティーブンも含めて。


「まあ、そうじゃが……死闘禁止がまだ解けぬ内は、口でしか争えんのじゃ」


「その死闘禁止も何がどうなって死闘禁止なのかすらわかりませんけど?」


「ぐむ」


 煽り合いのレスバトルするのは勝手だけど、それに弟子を巻き込むなと言いたい。

 あのまま煽り合いをしていても、結局スティーブンはミドルに勝てない気がする。


 っていうか、スティーブンは口数が少ないタイプだろう。

 ケラケラ笑う相手はどんどん罵ってくるんじゃないか?

 負け確定だな。


 俺はそんな無意味は争いには興味ない。

 戦いは基本的に生きるか死ぬかだ。

 口でものを言っても、結局実力なんだよ、戦いの世界は。


「本当に不毛でした。そしてストレスが溜まりました」


「……すまんな。でも正直に言わんでもよかろう?」


 スティーブンはバツが悪そうに髭を書きながら言葉を続ける。


「確かにわしがろくに説明もしなかったのは悪かった。わしの落ち度じゃ、年甲斐もなくお主を連れて感情で動き回ろうとしとったわ……お主を当てにしとった部分もあるし、すまんかった」


「まあ、終わったことですし……頭を上げてください」


 素直に頭を下げるスティーブン。

 なんというか、俺も感情的になるかこの師匠もなかなかそういう部分があるな。

 似た者同士ということなのだろうか?

 まあ、そんなことはどうでもいい。


「頭を上げてください。俺も個人的に恨みがあるので、仕返しは是が非にでもやりたいですよ」


 と、いうよりだね。

 そもそも、


「例えば、もし双極のミドルが条件をのんでいたとしても、あの性格だと素直に履行するとは思えないんですが」


「いや、わしらは約束は約束は違えんようになっておる。そう言った誓いがあるのでな。だからお主がラパトーラに勝利した時も、問答無用で奴らの屋敷を奪えたじゃろう?」


「うーん、そんな感じなんですかね」


 あれって決闘の条件だったような、そうじゃなかったような。

 そんな気もするが、あのパトリシアが結局屋敷を引き渡したんだから、そういうことなのだろうか。


「とりあえず、今回は負けじゃ……わしも一度冷静に考えてみる」


「はい」


「奴が嫌そうなことをしまくったら、こっちの誘いにも乗ってくるじゃろう」


 ……すっげぇ悪い顔してる。

 まあ、俺もだけど。


「例えば嫌そうなこととはなんですか?」


「そうじゃのう……裏に王族が控えとるからその関係性もあると思うんじゃが、結局奴はいかにして王族に与しとるのかが……」


「貴族区画に住んでるから、元からそういう位の高い人物じゃないんですか?」


 だったら、繋がりもわからんでもない。


「いや、奴の性格じゃ。素直にいうことを聞くとも思えん……ああ、なるほど」


 俺の言葉に考え込みながらそう返したスティーブンは何かに気づいたような反応をする。


「どうしたんですか?」


「ふむ、少し確認したいことがあるでのう……王都の正門までは送って行く。そこからわしは少し時間を──」


「──あげません」


「ぬ」


 杖を振って魔法陣を展開するスティーブンを止める。

 今後に及んでまーた説明なしにこの師匠はどこぞへ行くというのか。

 その説明不精な癖が、今回の事の顛末を引き起こしたんじゃないのか?

 何が、ぬ? だよ。


「金輪際、お互い隠し事はなしでいきましょう」


「ふむ……」


「何かあるなら説明を。事前に説明してもらえないとまた同じ繰り返しです」


「そうじゃのう……すまんすまん」


 神出鬼没は、転移を使う無属性魔法使いだから仕方がない。

 だが、思慮深く見えて実は抜けている師匠のことだ。

 絶対にまた同じことが起こる。

 それは是が非にでも避けたい訳だ。


「とりあえずどこへ向かう予定だったんですか?」


「一度南へ行き、テンバータウンの状況を確認する。そこから次は辺境伯の居る領地ベルダーと向かい、色々と確認することをやったのち、わしはメトログリードへ向かう。そうじゃな、とりあえず情報収集をせねばなるまいて」


「あちこち飛び回るって訳ですね……」


 そもそもハザード達PK側は裏ギルドのクエストをやっていたよな。

 そして裏ギルドに誰がクエストを依頼したのかはわからんが、ジョバンニ達が魔人を味方につけているところを見ると、メトログリードは一枚噛んでいる。


 さらに、裏ギルドとつながっていたのはテージシティの大マフィア。

 ノスタルジオである、そのノスタルジオは王族との関係性があるとスティーブンは言っていた。


 なんだ?

 ごちゃごちゃしてるけど、なんとなく繋がってきた気がするぞ。

 魔人は敵だって、誰もが理解している。

 だが、実際に王都の領内には魔人の都市が存在するんだよな。


「わしの予想では、双極の奴は魔人達と深く関わっておる」


「弟子にハザードがいて、そしてハザードとともに行動していたのは裏ギルドに所属するジョバンニ。奴は魔人達と契約を結んで従えているようでしたから……ズブズブですね」


「そうじゃな、ズブズブじゃな。わしは個人的にその情報を色々と調べてこよう」


「ちなみに、それに同行するのはダメですか?」


「構わんのじゃが、お主はやるべきことがまだあるじゃろう?」


 コーサーのことか。

 顔を見せるとトンスキオーネにも約束していたし、今はそっちを優先しないとダメなのだろうか。

 まあ、すっぽかしたらトンスキオーネがガチギレどころの騒ぎじゃなくなりそうなので、行くしかないか。


「そうですね。師匠は師匠で動いてください」


「うむ。と、いうよりも……お主にいうか言わまいか迷っておったのじゃが……」


「はい?」


 スティーブンは手元にパイプを取り出して火をつける。

 そして、一度煙を大きく吸って、吐いて、大きく間をあけてから言う。


「そもそも連れて行くには、今の弟子の称号を一つ位上げせねばならん」


「ほう」


 俺の持つ称号“とある魔法使いの弟子”が切り替わるのか。

 いったいどんな称号だ?

 弟子の上って言ったら免許皆伝とか?

 それにはまだ早い気もするのだが……。


「より高い位置におる直系弟子となることで、わしの持つオリジナルのスキルをさらに取得できる」


「おお!」


 願っても見ない!

 それってスペル・なんたら系なのだろうか。

 ウキウキしてくるな、それ。


「でも今も一部使えますけど? アポート、アスポート、テレポート、それにスペル・インパクトとか」


「アポートは便利スキルの一部じゃけどな。まあ、転移魔法というスキルを使うための要素ではあるが……そうではない」


「?」


「弟子称号でスペル系を得たのはインパクトだけじゃろう? まあ、それが近接を主とするお主の戦闘スタイルに合っとると思って指示をしたんじゃが、弟子称号では基本的にスペル系は一つしか取得できん」


「……そうだったんですか」


 初耳だ。


「まあ上級になればその制限は開放でき、わし直々にスキルを授ける」


「ほう」


「その代わりに……他の師弟系称号スキルは使えなくなる」


「え……」


「称号を得て所得したスキルならばいいのじゃが、称号そのものが前提であるスキルは使用できなくなる……特に、せっかくお主が覚えた魔闘家の段位称号じゃ……わしの直系になれば消える」


 それ、取得する前から言ってくれよ……。










今まで師匠回ってごくたまにだったので、ちょっとスティーブンとのやりとり多めです。


転移魔法の取得条件はちょっと明かせませんが、どうせ取るのは最後の方だとスペル・バイブレイトをローレントの戦い方から示唆してました。


最初は戦い方でもあっけに取られていたように、何度か普通に魔法を使うことも教えようとしてましたが、結局変わらないので魔闘の方向性に流していたスティーブンです。


一応弟子として見ていますが、またそうじゃない存在としてもローレントを見ています。


もっとローレントがぐいぐいスティーブンに食い込んで行けば、直系弟子のことも早めに言っていたと思いますが、奔放的に外で活動して、ローレントも時期が来ればスティーブンがスキルを授けにでもくるだろう的な感じのスタンスでいたので、すれ違いが起こっていたのかもしれませんね。


不器用な師弟関係を書くつもりが、文才足らずに申し訳ないです。






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