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「……なぜ止めるんですか」
「まあ待て、とりあえずその殺気を治めよ」
「……チッ」
思わず舌打ちが出てしまったが、戦いに水を差すのはいったいどういうつもりなんだ。
「おー怖い怖い」
もはや溢れる殺気を隠さない俺を見ながら、ミドルはケラケラ笑っていた。
んだよ、こっちみんなよクソガキ。
ミドルはハザードの方に向き直す。
「そしてハザード、そのスキルはまだ使うことを禁じているよね?」
「……使わないと食われていた可能性がある」
「そうかもしれないけど、僕が禁止って言ったら禁止だよね?」
そう言った瞬間、ブワッととんでもない量のオーラのようなものが、ミドルから膨れ上がった。
ピリピリと背筋を伝う、強者の感覚。
スティーブンと憎まれ口を叩き合い、同じ立場にいるわけだ。
この双極の魔法使いは、ガチ目に強い。
「……う、うむ」
「敬語を使いなよ。そっちの弟子は一応使ってるでしょ?」
「………………はい」
ざまあ!
口にも表情にも出さないがざまあ!
「いたっ」
スティーブンに小突かれた。
「手が早いのはわかっとったが、ちっとは落ち着かんか。ちなみにこれは舌打ちした分じゃ」
「うぐ、はい」
「……ぷっ」
ハザードの方からそんな音が聞こえた。
「おい、殺すぞ」
「……何度でもかかってこい、今日は占いの結果が──ごふっ」
「いつでもどこでもなんでもしていいけど、今はやめようね」
ハザードはグーで肌をぶん殴られていた。
いい気味だ、と思ったが、またスティーブンに小突かれるのも嫌なので感情を押し殺す。
なんだろう、素で人の思っていることを読んでくるのやめて欲しい。
むやみやたらと人様を鑑定するなとか、俺に言っときながらだ。
自分は心を読んでくるじゃないか、不良はどっちだ師匠。
「なんじゃ?」
「なにも」
なんだか興が外れてしまったので、スティーブンとともに玄関に戻る。
お礼参りとか、カチ込みかと思ったんだけど、違うのだろうか。
いや、師弟クエストの内容はこのちんちくりんなクソガキ双極の魔法使いの弟子と対峙することじゃないのか?
「師匠、戦いに来たんじゃないんですか?」
「ふむ、とりあえずろくに説明もしとらんかったわしも悪いな」
俺の言葉を察してか、スティーブンは話し始めた。
「確かにお礼参りするつもりじゃった。だが場所がちと悪い。ここは貴族の住居じゃ、お主らが本気で暴れまわったら、貴族の者たちから色々難癖をつけかねられんからな」
「そうだね。まあ、だからそれを見越して僕は自宅に呼んだんだけどね?」
「相変わらず小賢しいやつじゃのう……」
「珍しいね。スティーブンが褒めるなんて」
「褒めとらんわ」
何やら再び悪口合戦が始まりそうだったので、止めに入る。
まったくこの師匠連中、口を開けば罵倒しあって話が進まんのだよ。
「とりあえず話を先に進めてください」
「……ミドル、師匠。話が外れている……ます……」
ハザードも同じ気持ちだったようだ。
くそ、今すぐにでもこいつボコボコにしてアンジェリックの居場所を突き止めたい。
でも隙をついて殺しにかかっても、止められるんだろうな。
やはりスティーブンもミドルも、師匠という名に恥じない力を持っている。
パトリシアは知らんが、こいつら二人にはまだ敵いそうもないな。
「話を戻すが……双極、主はなぜ悪に加担する」
「悪? それは何を理由に悪と言っているのかな?」
「ぬかせ。大方裏のギルドをたぶらかして、南の辺境の地にちょっかいを出した首謀者じゃろう」
「それはどうかな? まあ、確かにあんたの邪魔をしたのは僕だし、噛んでいるのは否定しないけど……」
ミドルはさらにケタケタと笑いながら言葉を続ける。
「そもそも善ってなに? この国を統べる王族が南の領有権を主張したら、そこにのさばってる人には立ち退いてもらわないといけないからね?」
「じゃが、わしはあの地の守護を任されとる」
「情勢が変わったから、仕方ないんじゃない? そのうちその任務も解かれると思うよ」
「ならん。迂闊に手を出しても痛いしっぺ返しを食らうだけじゃぞ」
「でも命じたのは僕じゃなくて……おっと、これは言っちゃいけない話だった」
ミドルはわざとらしく口を手で押さえて笑った。
煽ってるなこいつ。
スティーブンも、顔つきが険しくなってきている。
「まあよい、わしらの死闘は禁じられておるが、弟子同士で決着をつけるべきじゃろう」
「その提案はわかるけど、受けると思う?」
「受けよ」
「いやだね」
……これ、結局あのまま殺し合いしてた方がいいんじゃないの?
その方が手っ取り早いと思うんだけど……。
話がどっかに飛んだと思えばまた戻ったり、なんだか師匠達のやりとりは疲れるな。
「弟子同士が受ければいいのでは? ってことで、場所を変えて今すぐ殺しあえハザード」
「……俺は別に構わんが、後から師匠に殺される可能性があるからすぐには断言できないぞ」
「ダメだよハザード」
「……ほらな?」
なんだよ、お礼参りなら今すぐやったっていいんじゃないのか!
ぐぬぬ、フラストレーションたまるな。
だったら、と俺は駄目元でハザードに聞いてみる。
「戦わなくてもいいからアンジェリックの場所を教えろ」
「アハハッ、相変わらず無属性の魔法使いもその弟子も頭が単細胞っていうか、なんていうか……立場わかってるー?」
「……メトログリードだ」
「魔人の都市か」
「……そうだ」
「ちょっとハザード! なんで言っちゃうの!?」
「……いや、裏ギルドのクエスト終わってもう俺は関係ないし、今は弟子同士だろう? フェアじゃない。どっちかに思考が偏ったままだと占いにも支障が出る」
「あとで折檻ね?」
「……なぜだ」
なんというか、こんなやりとりをしてみて思った。
ひょっとしてこのハザードとかいう男は、バカなんじゃないか?
俺も人のことは言えないし、よくツクヨイからバカバカ言われるけど。
こいつも相当バカだよな、同じ穴の狢というか。
コンセプトは、師匠達のよくわからん話と、なんだか似た者師弟(同士も含む)です。
あとがき小話。
少し弁明させて欲しいのですが……。
PK編のあとがきで“あのローレントが”って盛大な前振りを行って結局どっちつかずになってしまった件で……実は師匠勢を助けに入らせて、ついでにさらりと本文から消していたモノブロあたりをまた話に突っ込んで、猿化させようと思っていたんですが……。
今思えば本編でやったくせに単発ネタみたいな終わり方になって、結局あれネタ回だよな……って自分の中で結論づけてしまった結果、再登場はやめにしようと急遽話を総とっかえ。
そして、こういう弟子同士の戦いで改めてぶつけよう、ということになってしまったのでした……!!
ちなみに、スティーブンは双極の魔法使いに適当な難癖つけて怒らせて、うまい具合に条件つけて弟子同士の戦いに持ち込もうと思っていました。(考え単純すぎ)
でも、色々とやる前にローレントが暴走して、なんの条件もないままに戦いが始まってしまう、ということに。その辺の愚痴話は次回になります。
双極の魔法使いの属性は、光と闇です。
以上です。
スッキリしない展開が続いていますが、せめてものお詫びに。
毎日更新しますね……?(詫びになってるかわかりませんが)




