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「お前に弟子を取る資格はない」


「なっ!?」


 フルバフをつけた後、パトリシアに向かって一直線に駆け出す。

 まさか問答無用で斬りかかってくるとは思わなかったのか、驚いて対応に遅れているようだった。


 好機。


「その首もらってラパトーラの前で謝罪させてやる」


 ミドルとスティーブンに視線を向ける。

 スティーブンは髭を撫でながら大きくため息をついていた。

 止める気は無いようなので、このまま続行だ。

 そしてミドルはにやけヅラを崩さないまま黙って立っている。


「愛人なんだろ? 止めなくていいのか?」


「うーん、どうしようかな」


「ちょ、ミドル!?」


 なるほど、お前もその程度だったのか。

 だったら容赦なくその首もらおうか。

 羅刹ノ刀を転移抜刀して手元に寄せると、そのまま高く跳躍して突き刺しに行く。


「ミ、ミドルってば!? くっ、四元素の魔法使いをなめるんじゃ無いよ若造が!」


 ラパトーラはすぐに腕を振って魔法を行使しようとする。

 だが、無駄だ。

 たとえとんでもない魔法を使い迎撃しようとも、刺し違えてもその首とりに行く。

 転移で攻撃をかわす、とかいうとんでも魔法がない限り。

 全力でかかれば魔法スキルが展開するときの魔力を読んでその一手先を行ってやる。


「撃ってみろ、四元素の魔法使いパトリシア」


 この館を吹き飛ばす規模でもない限り、俺は止まらん。


「くっ! あいつの弟子だからって、舐めた態度とってるんじゃないよ! 殺意を持って向かってくる敵ならば、私は容赦しないよ? それならば“許可”してくれるだろうさ!」


「まあまあ、落ち着きなよパトリシア」


 パトリシアが四属性の魔法を展開しようとした瞬間、それをミドルが止めた。


「あくまで、弟子同士の戦いは弟子同士でやるもんさ」


 その言葉の後、俺に向かって複数の杖が飛んでくる。


「ッ!」


 パトリシアの魔法を回避するためにとっておいた空蹴を用いて方向転換し避ける。

 この杖……。






「──相変わらず手の早いやつだ」






 階段を上った二階の手すりに、奴がいた。


「………………ハザード」


「……久しぶりか? と言っても、そこまで日は経ってないな」


「久しぶりだと?」


 そういえば、パトリシアが新しい弟子を取ったから破門されたと愚痴っていたな。

 まさか、こいつがそうなのか?


 というか、そもそもの話。


「よくもぬけぬけと俺の前に姿を現せたなハザード」


 睨みつけながら話すと、ハザードは相変わらず表情の読めない包帯を顔面に巻きつけたまま返す。


「……ぬけぬけ? 俺は自分の師匠に呼ばれたから来たに過ぎないぞ」


「弟子?」


「……そうだ。お前が無属性の魔法使いの弟子であるように、俺も弟子なんだ」


 やはりそうか。

 だが、もうどうでもいい。


「……何か疑問でもあるのか?」


「いや好都合だ」


 優先順位を切り替える。

 パトリシアは後回しにして、とりあえずハザードお前だ。

 お前だけはきっちり殺しておく。


「死合おうか」


「……本当に手が早いな。ジャベリン」


 どっちがだ。

 俺がハザードの元へ向かう前に、奴は火属性でできた槍を俺に飛ばす。

 さらに追加で四属性分の槍が押収したので、俺は屋敷のエントランスにあるでかいシャンデリアに空蹴を使って飛び乗り躱すと、そこから二階のハザードの元へ跳躍し、上から下に刀を振り下ろした。


「ウォール」


 土属性の壁が出現する。

 邪魔だな、一旦手元の刀を空中にアスポート。

 そして裏当て。


「──ッ!?」


「どうしたハザード、壁は意味ないぞ?」


 さらに言えば屋内。

 空飛ぶ杖を使って上空に逃れることもできない。


「チッ」


「こっちだ」


 次は奴の作り出した壁を使って跳躍、天井に着地。

 そこから奴の脳天向けて“天翔飛び猿臂打ち”。


「……ファニーバンテージ」


「む?」


 ハザードの顔や腕を覆っていたバンテージが生きているかのような挙動を取り俺を拘束しにかかる。

 すぐに羅刹ノ刀を手元に転移させてぶった切る。

 斬った感覚は、植物の蔓みたいだった。


 自由に動き伸縮するバンテージをシャンデリアに巻きつけ、そのまま空中に逃れたハザード。


「逃げるのか?」


「……なわけない、すでに仕掛けは終わっている」


 ハザードの視線を見ると、天井に杖が4本刺さっていた。

 いつのまに出して刺したんだろうか。

 それを考える前に杖から四種類の魔法陣が展開し、一つの形を作る。


「……四元封陣。お前の厄介なスキルをまず奪ってやろう」


「やれるもんならやってみろ。マナバースト」


 魔法陣から展開された、複合型陣縁魔法スキルのようなものをマナバーストを使って吹き飛ばしにかかる。


「……そのスキルは知っている。対策も講じている」


「なっ」


 纏っていた魔装スキルが消えた。

 そしてフルバフだった状態も無くなっている。


「……封印系の優先度は高い。貴様のそのスキルは、魔法や物理を弾くようだが……物体のないスキルは弾けないみたいだな?」


「……」


 くそ、それ俺も今知った!

 なんでも弾けると思っていたが……本当に最近そうでもないな。

 このスキルに過信して行くのはこれから非常にまずいだろう。


「……さて、形勢逆転か──「エナジーブラスト」──ッ!?」


「関係ない」


 バフ剥がされてるし、再びかけることもできないみたいだが、それでも魔法スキル全てを封印されたわけではないようだ。

 補正がなくなったとしても別にそんなもの関係ないのだ。


 ステータス減少で、確かに前みたいな動きはできない。

 だが、ただそれだけだ。

 もとより身軽、そして魔法職だが、筋力的なステータスは日々トレーニングしている。

 戦闘以外のフィールドワークは基本的にバフなしだからな。


「余裕こいてると、うっかり殺すぞ」


 アポートを駆使して石柱の上を飛び移り肉薄する。

 口に羅刹を噛み締めて、両手に銛銃を持つ。


 撃つ、避けられる。

 だが、天井に刺さったワイヤー。

 トリガーをもう一度引いて、上への推進力を得る。


「……チッ」


 ハザードがアイテムボックスから出した杖から魔法陣が広がる。

 こいつ、一体いくつの杖に魔法陣を込めてんだ?

 内職屋かよ。


 まあいい、銛銃二丁を天井にぶち込んだ。

 それを空蹴を組み合わせれば、かなりの空中機動力を得る。

 立体機動なんたらみたいに。


「その首、撥ねてやる」


「……チッ、禁止されていたが、仕方ない。ファニーバンテージ」


 ハザードの体からバンテージが全て解かれる。

 そして、


「魔m──」


 そう言いかけたところで、


「やめよ、ローレント」


「やめようね、ハザード」


 師匠二人が止めに入った。










なんと弟子はハザードでしたー!

……まあ、感想でもそう予想していた人がいましたけども。笑






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