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トモガラざまぁ回。書籍化記念更新継続中!



「妖精化で暗視が利くようになったぜ」


 それだけが唯一便利なところだな。とミニマムトモガラは語っていた。

 歩幅を合わせるのが大変そうだが、無駄に十倍化したMPをもってして、常にかけ続けることが可能なのでまったく労しないようである。


 そう、身体能力強化系スキルなど、近接用のスキルはMP消費が少ないのだ。

 どのゲームでもそうだとは思うがね。


「モナカさんは本当に知らないんですか?」


「おまえらと違って暗視も使えないし、水中にいたら聴覚も鈍くなる」


 イルカやクジラのように専用の器官をもっているわけでは無い。

 耳などのもともと備わった五感をフル稼働して気配察知や周りの把握を行なっていたんだ。

 制限がつけばいとも容易く使用不可になるのはもっともなのである。


「じゃあ、わからないんですよね」


「まあ、そうだが……」


 とツクヨイに手を引かれてよちよち歩くトモガラが彼女の顔を見上げて言葉を続ける。


「俺と同じ罰を受けているならば、どこかで生きてるだろ」


 トモガラもモナカも殺せる隙はあった。

 いかに達人とそれに片足を突っ込んだ半端者とはいえ、敵前で二秒以上気を失ってしまえばそれは死ぬことと同義。


「生かされてるんだが、そういうことだろ」


 とトモガラは言葉を締めた。


「ずいぶん楽天的ですね」


「そうか? ゲームだから別にいいだろ?」


 このトモガラという男、ゲーム以外でも普通に楽天的っていうか、それでいて抜け目がないというか。

 俺の知らないところでうちの道場を小遣い稼ぎ場にしたり、俺をハメて遊んだりする。

 そんな奴である。


 っていうか。

 さっきからこの二人の絡みが仲の良い歳の離れた姉弟にしか見えない。

 トモガラ完全に文句言うのを諦めて好き放題させることにしたようだ。


「REC」


「おいおめぇよぉっ! 後ろから何見てやがんだ!」


「気にするな」


「スクリーンショット撮ったら殺すからな!」


「ああもう、そんな汚い言葉使っちゃいけませんよぉー?」


「…………うぜぇ…………」


「もう! ダメですよ! そんな言葉使ったら! また抱っこしてぐるぐるの刑にしますよ!」


「……ああもう……はいはい、わかりました……」


「はい。は一回で十分です!」


「…………………………はい……」


 げんなりするトモガラは、口から魂が抜けたような顔をしながら力なくツクヨイに手を引かれていく。

 俺はその状況をひたすら動画に収めていた。

 掲示板にあげる番かな、いやさすがにそこまでするのはかわいそうか。


 古い友人たちと楽しもうかね。

 第一拠点村で上映会しよう。

 焼肉つつきながらだ。

 確か酒蔵やってる生産プレイヤーもちょくちょく仲間入りしてたようだから。

 いいね、ネトゲで擬似的ながらも酒盛りやらなんやらが楽しめるとは、時代も進んだもんだ。

 俺が遅れてるのかもしれんが。


 罠ゾーンは無理やりクリアしつつさらに洞窟の奥へ向かう。

 つーか、結局力技でもクリアと、みんなが暗視能力を手に入れてしまったためツクヨイがいなくても大丈夫だった。

 お役御免だった。


「む?」


 不意に洞窟の奥から気配がした。

 異様な雰囲気が漏れてきているように感じる。

 立ち止まると、先行していたツクヨイと手を引かれたトモガラがよろよろと振り返る。


「ん? どうした?」


「どうしたんです?」


「……ボスっぽい」


「ああん?」


 トモガラも改めて正面を向いて集中する。

 そして肯定した。


「思考放棄した状態で歩いてたから気づかなかったぜ」


 精神的ダメージを負ったトモガラはここまで歩いて来る小一時間。

 ずっと考えるのをやめて白目をむいてただ手を引かれて歩く人形になっていたらしい。

 なんと、だから動きが鈍かったっていうかフラフラしていたのか。


「なんで気付くんですか?」


「まあ、いるいないの違いを考えてトレーニングすればいい」


 ツクヨイに簡単にやり方を教えておく。

 例えばテレビの解像度は一見どれも変わらないように見えるが、二つ並べられてこっちがすごく見やすいものですとよと言われると、それなりによく見えて来るのだ。

 それだとただの自己暗示に思えがちだが、人は認識外の情報は無意識のうちにカットするようにできていて、よく似ているようで実は違うものを二つ並べて正しく認識できるようになると、訓練を積むことで目利きが可能になる。

 味もそうだ、耳もそうだ、鼻もそうだ。

 同じように、動物はわかる、誰かがそこにいる存在感。


 実際にいる箱といない箱を並べて、こっちの箱には本当に何かがいますと言う手法で認識力を鍛えていけば、人の気配なんかある程度の大きさ、形、性別あたりまでわかるようになる。


「無理です」


 せっかく教えてやったのに、一刀両断されてしまった。

 なかなか手強い存在だ。


「異様な存在の中になんかちんちくりんな気配が……」


「……モナカだな」


 俺の言葉にトモガラが反応する。

 ちんちくりんな気配はトモガラとそっくりである。


 荒々しいクソガキのように感じるトモガラと打って変わって、大人しそうだがちょろちょろうっとおしいひよこみたいな気配は妖精化されたモナカなんだろうなと予測ができる。


 そして十分に警戒しつつ先へ進んでみると……





「ひぇ〜、本当だったら私が揉んでもらう立ち位置なんですが〜」


 と目に涙を浮かべながらうつ伏せに寝転がった巨大な一角悪魔の腰でぴょんぴょん飛び跳ねるモナカがいた。


「んー体重が軽いがもう少しあれだなー、右あたり?」


「このっ! このっ! だったら妖精化なんてしなければいいのでは?」


「おまえらしなかったらやばい奴らだろ? そんな奴を野放しにしておけるわけねーじゃん」


「ま、まさか助けが来るのとタイムリミットが来るまでずっと悪魔さんの腰をマッサージしなきゃいけないので? ちょっとそれは酷な罰ゲームですね……ああ、腰が痛くなってきました」




 ……え?

 ……え!?


 は? ん?

 いや……え?

 どういうこと?











みなさんのおかげで頑張れてます!

書籍化刊行発売記念更新!ででん!


最近腰が痛いです!

執筆もそうですが、デスクワークが多くて……。

腰回りの筋肉強化に週一でジムへ通っているんですが。

痛みはある程度治ってもすぐに二、三日ジムに通ってないと痛みが復活。

やっちゃったかなぁ、ぁぁ、やっちゃったかなぁ……。


さて、書籍版ではウェブ版では絶対にやらない。

極めてファンタジーちっくなリアル話が外伝にて掲載されてます。

よろしくお願いします。


明日も二回更新頑張ります。

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