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書籍化刊行記念更新継続中。
ツクヨイと二人での道中だったのだが、洞窟内は激動。
知恵を使えとかなんとか言っときながら、割と対処は俺がやった。
「わきゃあああ!! い、岩が転がってきます!」
まずありがちな岩トラップ。
怪しい岩があったので踏むなよと言ったのだが、ツクヨイはなぜか踏んだ。
絶対わざとだ。
踏むなと言われれば、踏みたくなる症候群か?
「……まず慌てる癖をなんとかしたほうがいいかもしれんな」
落ち着きがない。
オブジェクトだったら転移でなんとかなる。
例によって転がってきた岩も転移可能。
そして後ろにアスポートで受け流しておいた。
「ローレントさんがチートでよかったぁ……! あ、ちゃんとくぼみがありますね……」
座り込んだツクヨイのすぐそばに、避難用のくぼみがある。
ツクヨイが先導しながら指示を出して、そこにみんなを避難させなきゃ行けなかったんだろうな。
「でも……くぼみ三つしかないですよ?」
それは知らん。
次に、5×5の巨大な石版を動かすパズルがあり。
それを組み合わせて開く岩の扉。
「……ヒントが書かれていますが、これを描かれている形に組み合わせるんですよね?」
「そうなのか? そういう玩具はあんまりやったことがないからなあ」
「なら私の出番ですね! ああ、でもこれ闇属性持ちにしか読めないみたいです! 一つ一つ見て覚えながら私がやるしかないんですけど……どう考えても私には無理ですよこの大きさの石を動かすの……」
「──これでいいか?」
唸るツクヨイの後ろの広場に、パズルになっていた石版をアポートで外して、アスポートで元あったように地面に並べていく。
「……ここまで来るとせこい……」
「有効利用だな」
石版には番号を振っておく。
そしてそれを配置換えして下の段からアスポートで全て積み重ねていった。
本来ならば25枚のスライドパズル(めちゃくちゃ重たいしそれを縦横に動かさないといけない)。
だがアスポートを使用してはめていけばあら不思議、ただの25枚のパズルです。
「あ、開きましたね。いかにもラスボスチックな絵ですね」
「そうか?」
「この石板に書かれている悪魔みたいなの、強そうじゃないですか?」
出来上がった石板パズルに描かれているのは、ねじれた一つのツノを持った悪魔。
足首には太い鎖が巻き付けられて、上を向き大きく口を開いて壁にすがっている。
閉じ込められているようだった。
「ここのエリアボスとか?」
「そうです! それです、それ! 石板のサイズだったら……レイド級でしょうかね?」
石板の大きさが縦横一メートルだとすれば、目算でも五メートルを超える大きさの悪魔だ、
ケイブセンチピードマザーの全長は12〜3メートル近く。
そして頭を持ち上げた状態で3〜4メートルくらいの大きさなので、ツクヨイの考えは的を射ているように思えた。
「ひえっ」
想像で小さな悲鳴をあげるツクヨイ。
いつのまにか俺の手を強く握っている。
小心さは変わらんみたいだが、それくらい恐怖を感じるほうがいいだろう。
その恐怖を慎重さに変えて、幾重にも手札を作れば優位に働く。
恐怖に終われれば手を抜くなんてことは万に一つもないからな。
手を抜くのはいつだって気楽に考えているバカのやることだ。
「ほら、先に進むぞ」
相変わらず手は握り締められたまま。
ツクヨイを先導しながら先に進む。
これがフラグで、本当にこの洞窟のボスならば。
倒さないとクリアできないので今更恐怖なんかしてもしょうがない。
ただ殺されないように、勝てるように念入りに準備することが大事だ。
そしてそれを実行することもな。
「トモガラさんとモナカさん、結局死に戻りしちゃったんでしょうか?」
洞窟の中でポツリとツクヨイが呟いた。
握り締められた手はいつのまにか肩を抱くようになって、邪魔になってきていた。
そろそろ引き剥がそうか?
「せっかく四人で始めたクエストなのに……」
どうやらツクヨイは水中に落ちた時、いつのまにかいなくなっていたあの二人のことが気になるらしい。
確かに、流れは速くないはずなのに、なぜ二人は消えてしまったんだろう?
ケイブスタブとの戦いに気を取られてそのまま気配も消えていた。
神隠しか?
「まあ……心配ないだろう」
それでもあの二人ならなんとかして生き延びる。
そんな気がする。
「でも猫かぶっていたローレントさんと違って暗闇で目が見えないんですよ!」
猫かぶるって……おい。
「忘れていただけだ」
そういうとツクヨイは俺を見上げながら言った。
「ローレントさんってちょくちょく忘れますよね?」
「ん? そうか?」
「いや、ニシトモさんと色々話してたんですけど、本当に些細なことっていうか、興味ないことってすぐ忘れるっていうか……」
……思い当たる節は……ちょくちょくあるな。
うーん、忘れる気は無いんだが、それより興味深いことがあると上書きしてしまうような、そうでもないような。
「ケッ、昔から頭がパーなんだよ」
「「!?」」
俺とツクヨイ以外の声が聞こえた。
それは後ろからで、よく知る人物の声。
振り返ると……
「……は?」
「アアっ? テメェ、何見てやがんだっ!」
ミニマムサイズのトモガラがいた。
どういうことだ?
感想での誤字報告ありがとうございます。
仕事終わりが今はだいたい九時すぎになりまして、そこから書いたり更新したりするとギリギリになってしまいまして、結果チェックがおろそかになってしまっています。
誠に申し訳ありません。
あ、下の特設ページで私のインタビューとかAIでの分析結果が見れますよ。




