接触
7月24日
正文は名古屋駅を歩いていた。名古屋駅はたくさんの人が集まっていた。今日は何かあったのだろうか?よく見ると松坂屋の看板にバーゲンのチラシが貼ってあった。これ目当てだろう。よく見るとカップルというよりは主婦の方が多いように見える。人通りが多いのは時には役に立つ。反対にその手の人だとばれることもある。名古屋には駅のど真ん中に案内所がある。目立った行動はできない。ついてきている奴がいるのは当然。雰囲気がいつもと違う。わざとばれるように行動している。俺に接触したいと思っている証拠だ。俺は松坂屋の手前の角を曲がった。ここならある程度人通りが少なくなる。特に今日は注目する人はいないだろう。そう考えているとその人が歩いてきた。身長は180センチ程度。体型は太ってはいない。かといって鍛えてないわけではないようだ。
「こんにちは。」
「こんにちは。木田正文さん。」
「その筋の人ですか?」
「いえ…。こんなところで話すのもあれですし、どこか喫茶店に入りませんか?」
「ええ。しかし、名古屋駅からは離れましょう。栄のホテルの近くにスターバックスがあったはず。保険とするわけではありませんが、人がたくさんいるところにしてもらいます。あと、服装も変えられたら変えてください。いま、私はサラリーマン風にしていますが、そこにはサラリーマンの方が多いので…。よろしいですか?」
「何とかしましょう。集合は午後一時でよいですか?」
「はい。ではスターバックスで会いましょう。」
午後12時。山岸恵は電話の前にいたわけではない。昇さんに頼んでしまっているからできる限り注目されるような行動は慎んでいた。警察は可能性のあるホシや関係者は徹底的に調べ上げる。彼に接触した私は今のところ一般人の中では監視対象になっていることは言うまでもない。盗聴器なども仕掛けてはいないようだ。私がいたころは積極的だった気がする。10年も前の話なのだから変わっていても無理はない。
「プルップルルルルルル」
「ガチャ」
「もしもし。」
「もしもし。私はこの間、損保のお話に伺わせていただいた、加藤といいます。先日件ですが、どうなりましたか?」
彼はどこかで私を見ていたようだ。そうでなければ金融業者が来たことも知らないだろうし、2日前に来たことも知らなければ先日と使うことはできない。うまいと私は思う。この会話では証拠にはならない。
「資料等でよく説明をしてくれましたので理解はできました。しかし、まだわからない事がありまして…。」
「それはどんなところでしょうか?応えられる範囲で答えさせていただきます。」
話は通じているようだ。昇さんが資料を見ながら説明をしてくれた。しかし、彼自身にも分からないことがあってその確認をとりたい。ということを隠した形で伝えたつもりだ。彼の言った答えられる範囲というのは盗聴をされている可能性が多いので返答はできないかもしれないということだ。回りくどい話し方だがこうする他はあって話す以外はない。それには危険が伴うし、2人自身監視が付きまとい動きづらくなる。
「それは死んだときの保証金のことなのですが…。資料には死亡した形によって金額が変わるということなのですが説明いただけますか?」
「少し待ってもらえますか?」
「はい。」
「♪~~~~~」
もちろん、これは演技。資料はたくさんあるのですぐには答えられないものだ。分からない部分というのは死んだ形。即死ではないということだ。私に伝えられたものはピストルによって頭を討たれ即死ということだったが、検死の結果は違ったということだ。
「え~、それはこの間すべて説明していますね。もしよろしければご自宅にお伺いいたします。いつがよろしいでしょうか?」
「明日の昼とかいかがですか?」
「はい。大丈夫です。12時ごろに行きますのでよろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ何回もすみません。」
「いえいえ、こちらこそ。では、失礼いたします。」
「ガチャ」
彼が持っている情報はあれがすべてだったようだ。まだ、言っていないことはたくさんあるが、あまり長く話していると反対に疑われる心配が出てくる。あのぐらいがちょうどよかったと私は思った。明日、結果が出るかもしれないと私はこの時思っていた。しかし、重大な情報を見つけることになる。




