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オフステージ(惣堀高校演劇部)  作者: 大橋むつお
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105・ただちに体育館集合 敷島

REオフステージ (惣堀高校演劇部)


105・ただちに体育館集合 敷島 






 ――ただちに体育館集合 敷島――



 敷島?…………あ、ああ。


 一瞬誰だか分からなかったけど、敷島というのは八重桜のリアルネームだと思い至る。


 そうか、四時間目が終了した時――機器点検のため一時まで校内放送はできません――と放送があった。


 ようは放課後の部活も待ちきれずに八重桜がメールで演劇部全員を体育館に集めたということだ。いったいなんだ?


 ちょっと物憂い。


 教師の突然の思い付きというのはろくなことが無いことは八年の高校生活で身に染みているからね。


 体育館に行ってみると、演劇部の他に生徒会執行部と、文化祭で『夕鶴』のアシスタントをしてくれるボランティアの面々が集まっていた。


「何事(;¬¬)?」


 うっかり素の自分で聞いてしまった。


 演劇部と執行部の瀬戸内を除いて目線を避けられる。


 登下校は素の自分を出さないように心掛けているけど、校内では気を付けていないとこうなる。


 なんたって二十四歳の三年生。あたりまえの三年生よりも六歳も年上。自分では意識してないけど面構えも目つきも尋常ではない……らしい。


「どうもマスコミの取材があるらしいわよ」


 美晴が自然体で答えてくれる。


 演劇部に答えさせたら、なんだか演劇部自身がわたし色に見えてしまうし、生徒会の会長なんかにオズオズ答えられたら、わたしはもう惣堀高校に巣くう化け物のように思われてしまう。


 そのへんの機微を心得ているのか、美晴の自然な言い方は垣根を低くしてくれた。



 先生来ましたよーー!



 体育館のギャラリーから声がする。


 どうやらギャラリーの窓から本館を見張る斥候を出していたようだ。


 パタパタパタと斥候が下りてきて、男子の何人かが外出しのシャツをズボンの中にしまい込む。ふだんだらしのない子たちなんで、かえって取って付けたみたいだ。


「ほら、シャツがよれてる。あーー分かんないかなあ、こうだよ!」


 一瞬でベルトを外してズボンをくつろげ、きちんとシャツを収めてやる。


「え、あ、先輩(#´ω`#)」


「ナヨってすんじゃないわよ」


「そ、そやかて(#´0`#)」


「あーーーそういうのヤメ! それから、わたしのこと先輩なんて呼んじゃダメ!」


 ダメ押しして、登下校モードに切り替える。



 なんとかカッコが付いたところでA新聞と思しきクルーを従えて八重桜がやってきた。



「やあみんな、A新聞の人たちが、今度の『夕鶴』の取り組みの取材に見えたわよ。硬くならずに自然にね」


 演劇部はほどよいよそ行きの、ほかは、ま、それなりの表情。


「A新聞文化部の望月です、すてきな取り組みだそうで、お話を伺いにきました」


 そのまんまリベラル政党のマスコットになれそうな女性記者が選挙ポスターのような笑みを振りまく。


「あ、そちらのお二人が交換留学生でキャストをやられる……」


 ビジュアル的に目立つミッキーとミリーのインタビューから始める。


 こういうときのアメリカ人というのはプレゼンテーション能力が高い。


 二人とも日本人の倍ほど表情筋を動かして、すばらしい機会に恵まれたことを英語と日本語で喋りまくった。


「お芝居も楽しみですけど、楽しそうにプレゼンするのは見ていても気持ちいいですね」


「ハハ、アメリカは多民の国ですから、しっかり表現しないと伝わらないからです。気持ちはほかのメンバーもいっしょですよ」


 さすがミリーはソツがない。


「ヤー、イッツ、アメイジング!」


 ミッキーは厚切りジェイソンを彷彿とさせる圧のある笑顔。


 それから、話題は千歳に及んだ。やっぱ、脚の不自由な千歳は広告塔になるようだ。ほんとうは、そういう注目のされ方は嫌なんだろうけど、もともと性格のいい千歳は少し恥じらいながら、でもニコニコと応える。


「ほー、じゃ、このステージだといろいろ大変なんですね」


「ええ、そうなんです」



 八重桜の指示で、一昨日のステージを再現する。



 千歳は啓介のお姫様ダッコで舞台に上がり、鬼ごっこでは新しく調達した木製の車いす。


「ほかにもあるんですよ」


 八重桜は舞台の照明と音響についてもひとくさり。


「前からの灯りが乏しいので表情が出ません、音響は(パンと手を打った)こういう具合に音が吸い込まれたり拡散してしまう構造なので、ピンマイクが無いと後ろ三分の二は届きません」


「なるほど……」


「かくも、教育の現場では視聴覚教育の、それこそメインステージの整備は遅れているんです」


 なるほど、わたしらの『夕鶴』のPRよりも、ハコものである施設の不備を訴えたかったのかと、ちょっと感心した。


 千歳の車いすといい、新聞社の取材といい、着実に準備が整っていく。


 フフフ……


 ちょっと癪だけども、この松井須磨、高校八年目にして少し時めいているのかもしれない。


 

☆彡 主な登場人物とあれこれ


小山内啓介       演劇部部長

沢村千歳        車いすの一年生  

沢村留美        千歳の姉

ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿

松井須磨        停学6年目の留年生

瀬戸内美春       生徒会副会長

ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生

シンディ―       サンフランシスコの高校生

生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口

先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)

惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)


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