68話 自然魔法
「自然魔法……」
身の危険をひしひしと感じながらも咄嗟に口から出てきたのは、本の本当に隅の方に、まるで情報が秘匿されているかのように言葉少なに書かれていた魔法の種類を思い出す。
――エルフは自然と密接な関係である精霊と人間の間に産まれた種族。それによって精霊の排泄物である魔力を扱うことに長けており、さらには自然の扱いに関しても他の種族と比べても群を抜いて長けている。
そして、そのことからエルフは人間が発展させてきた魔法体系とは別に、似て異なる自然魔法なる物を己の種族の伝統として子々孫々脈々と受け継いでいき、その体系を立派な物に築きあげてきた。
――自然魔法とは読んで字の如く、自然を魔法として取り入れたもの。
魔法は元来、周囲に存在している魔力を己の身体に通し、魔法として顕現させるのだが、エルフが受け継いできたこの自然魔法とは、周囲に漂っている魔力を身体に取り込まずに直接作用を働きかけ魔法として顕現させるので、魔力のロスが非常に小さく威力、精度、幅、どれをとっても通常の魔法よりも勝手が良いのだという。
「――――!!」
そうして、今目の前でフランさんによって行なわれているであろう自然魔法についておさらいしていると、一際魔力の質が上がったのを肌が感じる。それはガンダの放ったプレッシャーよりも息苦しく、言うなれば酸素の海に溺れているような感じがした。
「――――」
僕は目前でひしめき合っている魔力の状態を鑑みて、止め処ない思考に無理矢理ながらも終止符を打ち、何かを感じているのか、今まで見せたこともない形相をしながら背中を丸めフランさんに威嚇をするみゃーこを抱え、先ほどフランさんたちが隠れていた曲がり角まで飛び込むようにして一目散に逃げ込んだ。
ダンジョンの壁と自分の身体の間に挟み込み、みゃーこを守るようにして構えていると、まもなく肌を焼き付くさんとする熱風と共に、耳を劈く爆音が轟いた。




