48話 貰い物
「――こ、これは!」
「どうかしたの!?」
何時にも増して大きいリアクションに、僕は脳内褒めちぎりを止め、慌てて反応した。
「これを本当に……どこで手に入れたんだ?」
カイトは先程と同じ質問を再度問うてきた。
生憎、僕も先程の答えには嘘偽りが無いので、同じ回答を答える事しかできない。
だが、ほとんど同じかのように思えた一連のやりとりも、ただ一つだけ違っていることがあった。それは互いの表情だ。
カイトは、初回の問いの時に、何かしらの訳で嘘を吐かれ誤魔化されたのではないかと思っているのか、その時よりも怪訝な表情を。真冬もなぜ同じ事を聞くのかという疑問に加えて、カイトの怪しい者を見る訝しげな視線に、怪訝な表情で相対していた。
そんな相手のことを疑心暗鬼になり、怪しげに見つめる時間が数分続いたところで、第三者の気を利かせた介入により、お互い腹の内の詮索は終わりを告げる。
「ちょっと待って二人とも!置いていかないで欲しいんだけど!!……それってそんなにすごいものなの?」
相対する者の腹積もりを見透かそうと、疑問視し周りが見えていなかった二人の目に、疑問を投げかけた声の主であり、この場で唯一置いてけぼりにされていたさくらの姿がようやく映る。
二人は取り残しにしたことを謝りつつ、自分の言い分を整理し、さくらと相手に向かって話し始める。
「これは僕が一番最初にダンジョンに行く前に、フランさんから餞別としてもらったコートなんだ。まだその時は出会ってからすぐだったから、あんまり良いものではないと思ってたんだけど……」
「これは恐らくだが、神の時代の人工物と言われているアーティファクトの類いのものだ」
アーティファクト-と言えば、これまたファンタジーの定番中の定番だ。
本来の意味は人工物を意味するのだが、曲解や誤解しているのだろうか、なぜか神々が遺した物だったり、精霊が作ったなどその在り方は多種多様になっている。
しかし、どのラノベやゲーム、アニメにも共通して言えることがある。
それはアーティファクトというのは、得てしてその能力はとても強大で、その世界ではアーティファクト以外比肩するものは存在しない、ということ。
なぜそんなものを僕が……いや、なぜフランさんがこれをくれたんだ?もし分かっていたのならその選択肢は選ばないだろう。あらゆる危険性や可能性を考慮し、先を読む先見の明を持っていなければならない受付嬢なら、こんな代物を冒険者駆け出しも甚だしい僕に譲渡することは、普通ではあり得ないだろう。
それ以前に、これをどこで、どうやって手に入れたのか疑問だ。
恐らくカイトの反応から、そんじょそこらじゃ手に入るものではないのだろう。
もっとも、これらの考察は全て、アーティファクトが僕の現代知識と同じようにとても珍しくなかなかお目にかかれないもの、だという前提の話なのだが――
「アーティファクトってそんなにすごいものなの?」
ちょうどさくらも同様のことを疑問に思っていたみたいで、カイトにそのことを聞いた。
するとカイトはなぜそんなことも知らないんだ、とでも言いたげな顔をしながらも、丁寧に答えてくれた。
「はぁ……しょうがないから説明してやるよ。アーティファクトって言うのはな――」
カイトが説明したことは概ね僕がラノベやアニメ、ゲームなどで見知っていたものと同じような感じだった。
ただこの世界のアーティファクトは、昨今の地球で扱われているような神様の遺物や精霊の創造物ということではなく、ちゃんとした元の意、つまり人工物ということだ。なんでも神様が降りてきた初期の世界は、今の時代よりも物作り技術が数馬身も発達しており、中でも武具関係は特に突出していたとされているようだ。
その頃に作られたから、神の時代の人工物――神代遺物としてこれまで受け継がれてきたということだ。
「――だからこのコートはすごいなんて言葉じゃ形容しきれないほどの代物なんだ。自分がどれだけのものを持ってるか分かったか?」
「それだけ力説されたら嫌でも理解するよ。だからといって僕の返答は変わらないよ。本当に人から貰ったものなんだ」
確かにこのマントが滅多にない極上品なのは説明されて改めて再確認したが、どこでどうやって手に入れたか聞かれても、答えはフランさんに貰ったとしか応えようがない。
むしろ僕がフランさんに同じ事を聞きたいぐらいだ。
フランさんは担当となった冒険者に物をあげたりしたと言っていたが、こんなものをそうポンポンとあげられる訳がないだろう。そうすると恐らくこれは、何かの手違いや間違いで偶然的に手に入り、僕に流れてきたということになる。
「そうか……疑って悪かったな。初めてアーティファクトを目の当たりにして興奮し過ぎたみたいだ。許してくれ……」
カイトは、申し訳ない気持ちを濃縮させたような表情で僕に謝辞を述べ、頭を目一杯下げた。
僕としては気にも止めていないのだが、この局面でそれを言うのは野暮だろうと思い、それを受け入れる。そしてそれを踏まえた上で先程のお願い――さくらの武器作成を交渉材料に持ってくことで罪悪感の軽減に繋がるだろうと思い、テーブルにだす。まあカイトは先ほどの驚愕が無ければ、最初から引き受けてくれるだろうと思っているのだが。
「じゃあ許す代わりにさくらの杖を作ってあげてよ。とびっきりの最高の出来の物を」
「お、おう!任せろ!!さくらに相応しい最っ高の杖を作ってやる」
先程の陳謝の時とは打って変わって、期待以上で応えてやるから任せとけ、と言わんばかりに、自信に満ち満ちている表情がその顔から窺えた。
これならカイトに任せても大丈夫だろうと、僕は期待に胸を膨らませた。
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