47話 後押し
お待たせしました!
「私ね、決めたの――」
さくらは厳かにそう前置きし、僕とカイトに目を配った後、自分に確かめるような表情を覗かせながら答える。
「私逃げない!みんなと一緒に戦う!!――だから武器を作ってほしいの」
その声には微塵の迷いも無く、ただただ立ち向かうという確固たる意志が感じ取れた。
――どうやら僕は、さくらのことを勘違いしていたみたいだ。
いや、僕が自分のことだけではなく、他の人にも手を差し伸べられるだけの力を持ったことで、心のどこか傲慢に、驕慢になっていたんだろう。
さくらは僕が守ってあげなくちゃ何もできない、と。
故に、さくらがカイトに用事があると言っても戦うための杖を作って貰うどころか、何も予想を立てることが出来なかったんだろう。人は物事を自分の視たいように視る、とよく言うし。
「カイト、僕からもお願いするよ。材料はこれだけならあるから……他に必要なら獲ってくる」
さくらが意志を固め、努力すると言うのならば、背中を押してあげるために何か出来ることはないかと思い、僕はコートのポケットからダンジョンで出たドロップアイテムを全て出し、さくらと一緒にカイトに頭を下げる。
「――――」
僕たちはしばらくの間、頭を下げていたのだが、なぜかカイトはうんともすんとも言わなかった。
いつものカイトの様子から考えると、すぐに快諾してくれると思ったのだが、魔神と戦うレベルの武器を作るのは難しいのだろうか、肯定も否定も無くひたすらに無反応だ。
何も応答しないのなら、こちらから改めて手を打とうと少し顔を上げてみると、カイトの表情は思っていた懊悩をしているような表情とは違い、雷に打たれたと言わんばかりの驚愕に満ちた表情をしていた。
今までの会話やその表情から察するに、さくらの意思表示に驚いているのではなく、何か別のことだと思われる。
もう少し顔を上げほとんど通常の姿勢に戻ったところで、カイトがこっちを向いて驚いているのに気が付いた。
なぜ、僕の方を見ているのか疑問に思い、聞いてみる。
「どうかしたの?」
「真冬……お前それどこで手に入れたんだ?」
「どこでって、さっき言った通りダンジョンだけど……」
確かにダンジョンでのドロップアイテムの物量は、僕が両手を広げたぐらいの大きさの作業台に山盛りになるほどの量だが、それほどでもないだろう。
“上位のパーティーが本気”でダンジョンに潜り、持ち帰れば全然届くほどの量だ。
「ドロップの方もだけど、今話してんのはそっちのコートの方だ。……なんでそんな量を運べんだよ」
先述の通り、真冬の出した材料の物量は、上位パーティーなら調達し運べるほどだ。それを1人で運んだことは常識外れも良いところだろう。
もっとも、カイトにとってはこの量の素材が落ちるほど、魔物を倒せたことは常識のようだが。
「そう言えばこの装備貰い物なんだけど、亜空間倉庫……?になってるみたいなんだよね。ちなみにどれくらいまで入るかは分からない」
確かにカイトが聞いてきたことは、僕もずっと疑問に思っていることだ。
この亜空間倉庫ポケット付きコートはフランさんに貰った物で、目の前にあるテーブルに一杯になるほどの量が入るおかげで、収納には困ったことが無い。
その時のフランさんとは、まだ出会って数時間で日も浅いにもほどがあり、信頼を結べていたほどの関係は築けていなかったと思うので、そこまで高価なものではないと思っていたのだが……
「ちょっと脱いで見せてみろ」
カイトは武具職人という職業柄、珍しい武具はやっぱり気になるのだろうか、興味津々な様子で手を差し出してきた。
もちろんカイトのことは信頼していて、コートを解剖したりなど悪いようにはしないと信じているので、脱いで貸してあげた。
これが何かの役に立てば、と願いを込めて。
カイトは僕からコートを受け取り、片眼のメガネ地球で言うところのモノクルを掛け、コートに穴が空くんではないかと思うぐらい隅々まで観察する。また亜空間倉庫になっているポッケに手を入れてみたり、水を入れてみたり、僕では思いも寄らないような様々な実験をした。
普段のカイトは赤髪ということもあり、業火の如く猛々しい雰囲気があるのだが、今のそれは、熱い中にも知性と落ち着きがある感じに変わっている。
前者が太陽の燃え盛る様子に例えるなら、後者は一等星のシリウスのように、青白いながらも確かに熱を感じれる、といった感じだろうか。
つまり何が言いたいのかというと、どちらもすごくかっこいいってことだ。
恥ずかしいので口には出さずに、心の中でカイトへ称賛の言葉を惜しみなく送っていると、当の本人であるカイトが吠えるような驚きの声をいきなり上げる。
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