025 適合者 その2
体が濡れたままなのが嫌だったのか、相棒は部屋から出ていった。きっといつもの場所に日向ぼっこだろう。俺と炭鉱に潜る以外は、晴れていれば村から少し歩いた丘の上で日向ぼっこ。雨ならば食堂の裏で愛想を振りまきおやつをねだっている。
俺が呼べば、どこに居てもすぐに来てるので、あまり気にした事はない。
ただ、昨日まで炭鉱奴隷だった身としては、自由に丘の上に行き日向ぼっこができる権利をもつ相棒を羨ましく感じていた事も事実だ。
しかしそれも昨日までの話。
名前を返してもらったということは、すなわち、『借金返済に伴う炭鉱奴隷の労役を終えた』ということなのだ。つまり、俺も自由だ。これからは、相棒と一緒に昼寝をしようが、おやつをねだろうが何でもできる。矜持がある以上おやつをねだる事はないが・・・。
「ご飯食べたら、魔素の適合具合をチェックしてね。」
看護婦が一枚の紙切れをくれた。これは通常は青色だが、一定以上の魔素が溜まっていると徐々に赤くなり、魔素が溜まり過ぎだと真っ赤になる。
渡された紙切れを咥えると、青かった紙は一気に赤へと変わった。
「んー。まだまだ真っ赤だね。」
「まだまだ、真っ赤だな。」
他人事のように事実確認をして、まだしばらくはベットから出れない日々が続く事を再認識した。
「安定するまでは暇だな。」
重度の魔素中毒は常時んであれば即死していてもおかしくない。ダーシャは血統的に魔素を受け入れやすいという下地があるからこそ数日の休養で良いのだ。
第5半減期を過ぎるまでは我慢の子である。第1半減期までが残り2日未満。焦る自分をなだめながら、窓の外を眺めた。
遠くの丘の上を登っていく相棒の姿が眩しく見えた。
「さて、ダーリヤ様もご飯食べ終わった事だし、残りの検診もしようかね。」
ここにきてからの様付けがとても恥ずかしい。
「すいませんが、医師先生。此処に居る間は今まで通り『少年』でお願いしたいのですが。」
「いえ、そういう訳にもいきません。」
助けを求めるように看護婦に目を配らせた。俺の視線を受けた看護婦は逡巡したが、コクリと頷くと、助け船を提案してくれた。
すみません。短めです。
1週間分の疲労が睡魔となって襲ってきたので今の私の精いっぱいの量です。
バディが居なくなると途端に筆が進まなくなる不思議・・・。




