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月の滴  作者: あれっきーの
炭鉱奴隷への転落
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013 後継者教育




 そんなこんなで、家族が増え、7才の誕生日を迎えていろんな領地を貰った。

 これも帝王学というやつになるのだろうか。基本的な方針を父と話して決め、今後の発展方式を考え、不足しているものを補い、良いところを見つけ、さらに伸ばしていく。


 自分の領地の視察の名目で森や湖に遊びに出かけることが増えた。今日はダーシャの領地が一望できる丘の上にお弁当を持ってきている。 もちろん、バディも一緒だ。


 お目付役という名目で、母とマーシャが一緒についてくるのは、間違いなくバディ狙いだろう。


 父も忙しい合間を縫ってやってくる、そして、領地の心構えや貴族の心構えをしっかりと伝授してくれる。


「ダーシャ。貴族の矜持(プライド)はもう大丈夫だね。」


「はい、父上。一度口にした約束を守るのは貴族として当然の義務であり、その義務を果たさないのは、矜持を持たないオオカミと一緒である。僕はバディの様に気高いオオカミの様になりたいです。」


 その答えに父は満足に頷いた。ダーシャの頭をぐりぐりと撫でまわした。


「イタイイタイ、ちょっと、父上!痛いですってば。」


 文句を言いつつ、どことなくうれしそう。本当に仲の良い親子だ。


「あら、バディちゃん 良かったですね~。」


 2人の会話を聞きつつ、ずっとバディのお腹を撫でている。2年前のあの日宣言したお腹担当は顕在である。


「バディちゃんは気高いもふもふですからね。いつも凛々しく横になっていると、こうして気高いオーラに触れようといろんな人が来るのですよ。」


 自分の事を棚に上げて、さらには正論化しようとする。突っ込み役のマーシャも肉球をこよなく愛しているので、自分が触れている間は一切反論を言わない。


 そんな2人をほっといて、領主と領主の卵は今日も頑張る。


「開発の指示は適切な規模と時間が大事だよ。」


 眼下の領地を指差し続ける。


「あの湖から通じてる川は、普段は領民の生活水路になる。しかし雨季の中ごろで氾濫の危険に見舞われる。それを考慮して、岸辺の補強や、水路を用意したりすることで災害を回避することができるんだ。」


 実際、ダーシャに領地を引き継ぐ前にそのようなことが起きかけた。あわや大氾濫というところで魔導師を投入に成功して、新たな水の逃げ道を作ることで災害を回避した。


「適切な処理には、それに見合った見返りがあるんだよ。」


 あの時は、川辺の村全員に感謝されただけではない。新しく作った水路に水車を作ることで村人の生産性向上にも成功した。


「月が降る前の資料が家の書庫に入ってるよ。ダーシャもそろそろ、そういった知識を覚えていった方がいいかもしれないね。」


 肉球分に満足したマーシャがお弁当を広げ、みんなにお昼を促す。


 バディが家族に加わってから、食事に肉の割合が増えた。今日のお重も当然の様に肉が1段分まるっと占拠している。


「領主様がこの前持って帰ってくださった、この『お重』はかなり便利ですね。それぞれの段にいろんな物を並べれるから彩りも鮮やかになりますし、持ち運びもかさばらなくて便利です。」


 これまでは、バスケットにあれやこれやと詰め込んでいたので、パンがひしゃげる心配といつも戦わなくてはいけなかったが、この『お重』はそれぞれが独立した箱にも関わらず防水性・芸術性に優れ、箱なだけにパンをつぶす心配がない。


「あぁ、その昔東の島国で日本(イポーニヤ)って国があったんだよ。その国で使われていた伝統的なお弁当箱らしい。新年のお祝いに各家庭でそれを突いていたそうだよ。」

 上手に箸をつかって出汁巻き卵を食べる。


「この卵焼きも、その時代のレシピから再現したんだ。マーシャちゃんがそこまで気に居るなら生産販売しても大丈夫みたいだね。新しい特産品としてがんばろうかね。」


 独自で漆塗りの技術まで再現した『お重』はなかなかに好評だった。芸術性はもとより、領民が家族で遊びに行くときにもっていく弁当箱として定着してくれるだろう。


「よし、ダーシャに書庫の鍵をあげよう。この『お重』の様な技術を発掘して生産に成功したら、それだけで特産品になることもある。特産品が増えると行商人の数も増える。そうすれば勿論領内に外貨が入ってくる。領民の生活は潤うし、僕達の税収も増えるって寸法だよ。」


 グリエフ領の税金はそれほど重くない。社交界では「田舎の貧乏領主」と揶揄されている。しかし、民あっての領主と初代からの家訓にそって、まずは民の生活。それが潤えば税収として領主が潤う。

 したがって自分達の生活を潤わせたければ、領地の視察をし、開発をして、領地の発展をさせなければならない。

 この当たり前のことをしている領主は少ないが、そのどれもが伯爵領になるほどの発展を見せている。何気なくあるものをどのように活用し、いかにロスを少なくして利益を出すか考えるのは領主の腕の見せ所なのだ。


「はい。父上。さっそく帰ったら僕も書庫に籠りたいと思います。」


 その答えに気を良くし、ダーシャの頭を撫でまわす父であった。




「強気を砕き弱気を助ける」が好きな言葉です。

上に立つ人が立派なら、素敵な生活ができると信じてます。

そのために、下も恥じない生活をしなきゃいけないと思いますが・・・。

堕落した生活の誘いが半端ないです。


この作品は皆さまの評価(甘口・辛口歓迎)や甘口の感想を糧に生まれています。もしくはお気に入りに入れてくて下さるとそれだけで評価が付くので調子にのって作品書きます。下のランキングをぽちっとしてくれるだけでもいいのよ(チラッチラ

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