いつもの日常
皆様、はじめまして。
本作に目をとめていただき、心より感謝申し上げます。
私は現在63歳、現役の会社員として働きながら、長年「オタク」として数多の物語を愛し続けてきました。
これまでは物語の「読み手」として、素晴らしい作品たちから勇気や感動をいただくばかりの毎日でしたが、人生の節目を迎え、自分の中にある「空想の世界」を形にしたいという衝動を抑えきれず、還暦を過ぎて初めて「書き手」としての挑戦を決意いたしました。
本作は、人類がデータとなって生きる100年後の未来を描いたSFアクションです。
長年培ってきた空想の断片を、若い世代の感性にも届くような熱いバトルと、少しばかり世知辛い大人のリアリティを混ぜて構築しました。
不慣れな筆運びではございますが、一文字一文字に魂を込めて綴ってまいります。
AD099年の世界で戦う征人たちの物語、どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。
「先輩! 右、三体!」
神子の声が飛ぶ。
「神子、了解!」
叫ぶと同時に、神征人は踏み込み、目の前の“それ”へ拳を叩き込んだ。
――金属音。
身長一七〇センチほど。
黒光りする外殻。二足歩行の蟻のような異形。
武具亜。
仮想世界に現れ、人類を“デリート”するために活動する存在。
十年前、突如として出現して以来、都市を侵食し続けている。
ガキン、と拳が弾かれる。
「硬っ……!」
「だから言ったでしょ、先輩。素手は非効率!」
神子の軽口と同時に、別方向から重い衝撃音。
「征人、下がれ」
兄の制人が割って入り、盾で蟻人を弾き飛ばす。
「そろそろ行くぞ、神子」
「OK。ただし――」
神子は指を立てた。
「通信料、爆上がり中。10分で終わらせるわよ」
「了解だ」
三人は同時に、手首の銀色のリング――ルミナス・シンクロリングを重ねる。
「戦装リンク――ルミナスギア!」
次の瞬間。
空間上に走る不可視の回線――バトルネットワークから、光が“転送”される。
白。黒。紫。
三色の光がそれぞれを包み込み、粒子が装甲へと組み上がる。
「――閃光ナイト!」
征人の体を、白銀の騎士装甲が覆う。
「――重凱ブロッカー!」
制人の両腕に、重厚な盾装甲が展開する。
「――紫閃ブラスター!」
神子の背後で、紫の光が弾けた。
――戦機顕現、完了。
「先輩、兄さん。長期戦はナシ。一気に行くわよ」
「任せろ」
征人は直剣――白煌剣ルクス・ディバイダーを構える。
エネルギーが刃に収束する。
(……あれ?)
一瞬、反応が“遅れた”。
ほんの僅か。だが確かにズレた感覚。
(ラグ……? いや――)
思考を振り払う。
「――白煌終断ディバインブレイカー!」
光刃が扇状に展開し、蟻人をまとめて両断した。
「続ける!」
制人が前に出る。
盾が腕を滑り、拳を覆う――鉄城腕甲フォートレスナックル。
「重圧粉砕――グラビティ・コラプス!」
質量を乗せた拳が炸裂し、蟻人が内側から爆ぜる。
「はいはい、単体処理お疲れ様」
神子が肩をすくめる。
「集団戦は苦手ね、二人とも」
その両手に、二丁の銃が現れる。
紫焔双銃・ルミナスリベレーター。
「じゃ、掃除するわよ」
くるり、と身体を回転させる。
「――紫焔連星バラージ!」
無数の光弾が放たれ、残敵を貫く。
撃ち抜かれた蟻人は、煙のように崩れ、データの粒子へと還元されていった。
静寂。
「終わりっと」
神子が息をつく。
三人は同時にリングへ触れる。
「リンクアウト・ルミナス」
装甲が粒子へ分解され、光となって上空へ吸い上げられていく。
変身解除。
「ふぅ……今回は早かったわね」
神子は額の汗を拭う。
その瞬間――
胸元で、黒いノイズが一瞬、弾けた。
――パチッ。
まるで“エラー”のような微かな異音。
だが、彼女は何事もなかったかのように笑う。
「通信料が高いのよ。時間かかると赤字なんだから」
リングが回収したデータを吸収し、電子音を鳴らす。
討伐報酬――蒼いデータ結晶。
「今月のサーバー維持費、これでなんとかなるわね」
「助かるな」
制人が肩を回す。
征人は、剣を消した右手を見つめた。
(……やっぱり、さっきの違和感)
剣の応答遅延。
一瞬のズレ。
(バトルネットのラグ……? それとも――)
脳裏に浮かぶ。
“ロストプログラム”
解析不能のブラックボックス。
その噂。
「先輩?」
神子の声で現実に引き戻される。
「何ぼーっとしてんの?」
「いや……なんでもない」
「じゃ、帰るわよ! 今日は合成プロテインのフルコースだから!」 「それ、ただの粉だろ……」
征人は苦笑いしながら彼女の後に続く。 振り返ると、先ほどまで蟻人がいた場所には、修復プログラムが走った跡――不自然に滑らかな地面だけが残っていた。
ここは、すべてが演算された世界。 痛みも、空腹も、そして死さえもが符号化されている。
だが、神子が時折見せるあの「ノイズ」だけは、どのプログラムにも属さない異物に見えた。
(神子、お前……本当は何を止めているんだ?)
征人せいと》の問いは、合成された風の音にかき消された。 沈みゆく夕日――それさえもが、サーバーの稼働時間に合わせて描画された偽りの光であることを、彼は改めて思い知る。
――これが。 武具亜と戦うルミナス・マニフェスターズの、 危うくも平穏な日常だった。
第2話をお読みいただき、ありがとうございます。
さて、本作の設定にある「通信料が高騰して、時間がかかると赤字になる」という世知辛いガーディアン事情。
現実の仕事でも「コスト計算」には日々頭を悩ませておりますが、そんな現役会社員としての経験(?)を少しだけ作品のスパイスにしてみました。
まだまだ筆運びは未熟ですが、皆様からの感想や「★」評価、ブックマークなどが、今の私にとっては何よりの栄養剤です。
「この能力が面白い!」「あのシーンにワクワクした!」といった些細なコメントでも構いません。皆様の反応を励みに、次回も精一杯書き進めてまいります。




