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目の前には鬱蒼とした暗闇が広がっていた。皓太はその道を真っすぐと進む。
そこで皓太はこれが夢だと分かった。
いつも見る夢。ここは迷路の世界である。
夢の中の皓太は、その迷路を進みながらゴールを目指していた。皓太は今までこの迷路をクリアしたこともなく、いつも間違えてばかりでいた。その日も皓太は嫌な予感がしていた。それはいつもこの迷路に迷うと、最後には大きな落とし穴に落ちてしまうのである。
皓太は自分の記憶を頼りに迷路を進んだ。少し進むと、そこには分かれ道があった。左の道は行き止まりのはずである。いや、右の道が行き止まりであったか。
皓太は考える。左の道は行き止まりだ。それなら、右の道である。そうして、皓太は右の道を進んだ。すると、どうやら合っていたようで、先に道があった。
そしてまた進むと、再び分かれ道が現れた。次は右か左のどっちだろう。皓太は少し考えた後、左の道を選び、進んでみた。
すると、皓太の目の前がどんどんと白い靄がかかり始めた。
一体これは何なのだろう。何かの罠か? それとも、落とし穴か?
いや、違う。
しばらくして、ようやく白い靄が消えた。それから、目の前にGOALと書かれた木の看板が皓太には見えた。
初めて見た風景。そこはゴールであった。今までとは違う展開に、皓太は驚きを隠せなかった。
「皓太くん。皓太くん、起きて!」
誰かが自分を呼ぶ声がする。その声に聞き覚えがあった。
目を覚ますと、そこに千遥の顔が見えた。
二週間前から皓太は彼女と同棲生活を始めていた。
「んー、ああ、おはよう」
皓太が起きてそう言うと、彼女が慌てた様子で言った。
「もう九時だよ! 式に遅れちゃうよ!」
それから、皓太は彼女のその言葉ですぐにそれを思い出した。その日は、諸見里さんの結婚式だった。皓太たちはそれに呼ばれていたのだった。
「え? もう九時! ヤバい! ヤバい!」
皓太は慌てて起き上がり、すぐに洗面所で顔を洗い、歯磨きをした。そして、昨日準備したスーツに着替えた。
「準備できた?」
彼女が皓太にそう訊いた。
「うん」
一通り準備を終え、皓太は時計を見る。九時十五分であった。
「時間、平気?」
その後、皓太は彼女にそう訊くと、「電車じゃ、間に合わないからタクシーで行こう」と、彼女が言った。
「オーケー。タクシーでどれくらい?」
「三十分くらいかな」
「そっか。早く呼ばないと!」
皓太がそう言うと、「もう呼んであるよ」と、彼女はにやりと笑った。
「仕事が早いね」
皓太もそう言って、笑った。
「でしょ? じゃあ行こう」
「うん」
外へ出ると、一台のタクシーが待っていた。皓太たちはそのタクシーに乗る。台場駅までと彼女が言うと、すぐにタクシーは発進した。
参考文献
『運命論を哲学する』 入不二基義・森岡正博著(明石書店)
お読み頂き、どうもありがとうございます。
いかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたなら、幸いです。
運命は信じるも信じないもあなた次第です。私は、実は運命を信じています。(私事を言えば、前の会社を一年で辞めたのも、コロナで留学に行けなかったことも、運命だと思うのです。)
ところで、皆さんは運命って信じますか? それとも、全く信じていないでしょうか?
運命を信じる方は、どのように運命を信じていますか? 因果的決定論のように考えているでしょうか? それとも、神学的決定論のようでしょうか?
私の場合は、神学的決定論のように考えているみたいです。
運命論にも、「物語的運命論」と「論理的運命論」の二つの考え方があるみたいです。
よくいう「運命」とは、物語運命論にあたるそうです。
作中、親睦会でのサッカーの話がありましたが、諸見里さんが語った運命論というのは、参考文献にもある入不二基義氏による「論理的運命論」の考えがもとになっております。
と、ここまで少し小難しいあとがきになりましたね。
改めましてここまでお読み頂き、どうもありがとうございます。
いいねや評価、感想等頂けると、大変嬉しく思います。
作品を読んで、何か不明点等ございましたら、ぜひ感想にお寄せ下さい。
最後になりますが、もし運命論にご興味があれば、ぜひ作中の参考文献を読んでみて下さい。




