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私、猫さんなの、だからイジメないでね?

第一村人ならぬ、第一ヒロインの登場です(*º▿º*)

なお、数年間を暮らすであろう施設は想像よりもこぢんまりしていて、比較的に新しい建物の外観からは洗練された印象を受ける。何やら門扉には個人認証用の機械が埋め込まれており、隣に並んでいた職員の女性が一歩進み出た。


「顏認証に加え、瞳孔の紋様を利用した虹彩認証も組み合わせて開錠判定されるの。君も後で登録されるから、覚えておいてね」


「はい、分かりました」


厳重な警戒に疑念を覚えつつも取り敢えず頷き、(ほの)暗い建物の内部に先導されていく。途中で目にした随所(ずいしょ)にも、機械的な仕組みでロックされた扉が幾つかあり、それらを見流している間に二階奥の執務室まで到着した。


「じゃあ、私は此処(ここ)までだから、施設長に失礼がないようにね」


柔らかく微笑んだ相手が(きびす)を返して数秒、(わず)かに気後(きおく)れしながらもマホガニー素材の扉を叩く。


すぐさま返ってきた入室許可に従えば、窓からの陽光で金糸の髪を輝かせた綺麗な女性が机に向かい、こちらを一瞥(いちべつ)もせず、手元の書類へ傾注していた。


(…… 声を掛けられる雰囲気じゃないか)


仕方なく所在なさげに室内を見渡すと壁際に(おな)い年くらいの少女が一人、やはり気まずそうに立ち(すく)んでいる。服装から判断して自身と同じ貧民層なので、控え目でも品質の良い家具などが納められた執務室の居心地は悪そうだ。


そんな彼女の(つや)やかな黒髪の隙間から、幻獣に由来する変性因子の影響を色濃く受けた人物特有の獣耳が生え、ぴこぴこと可愛らしく動いている。


「私、猫さんなの、だからイジメないでね?」

「ごめん、意味不明なんだけど……」


いきなりの台詞(せりふ)に面喰えども、上目(づか)いで不安そうに尻尾を揺らす姿も(あい)まって、初めて見た猫科亜人種の胸中を察することは可能だ。


“復活の日” 以降、人口比2~3%の割合で生まれてくる “幻獣の特徴” を持った者達は(さげす)みの対象であり、優れた現化量子の適性を保有する確率が高くても、社会的には冷遇されていた。


(多分、手酷い目に遭ってきたんだろうな)


溜息と共に歩み寄って手を伸ばし、その動作に一瞬だけびくついた少女の頭を優しく撫ぜる。小さな驚きの声を漏らしてから、にへらと相好(そうこう)を崩してくれたので、釣られて極僅(ごくわず)かに頬が緩んだ。


(昨日の今日だけど構わないよね、母さん)


おれが一生笑わずに生きることなんて、きっと望んでいない(はず)だから。悲しみの先にありふれた幸福があっても良いと割り切った直後、ばさりと紙鳴りの音が聞こえて部屋の主が言葉を紡ぐ。


「お待たせましたね、二人とも。興味深い実証結果が示されたので、つい意識が報告書に向いてしまいましたけど…… 私が中核都市 “芙蓉(ふよう)” の第7孤児院を預かるヴァネット・グラディオスです」


澄んだ翡翠(ひすい)色の瞳を細め、施設長にしては随分と若く見える麗人が微笑んだ。


シックな服装に金色の髪が良く映えるものの、彼女が席を立って近づくと名も知らぬ “猫さん” は後退(あとずさ)り、おれが着ている上着の端っこを掴みながら背後へ隠れてしまう。


「あぅ、私、猫さんだから……」

「ふふっ、勿論(もちろん)イジメないですよ、見てください」


(おもむろ)()き上げられた長髪より(のぞ)くのは(とが)った耳、北方神話に出てくるエルフの笹穂耳というよりは人寄りだが、(まぎ)れもなく変性因子の影響を受けた希少な亜人種の特徴である。


この系統は細胞分裂に伴うDNAの劣化が極小で不老と言えるため、外見から年齢を判断するのは不可能な事もあり、少し警戒したこちらとは対照的に進み出た猫耳少女が興味を()かれていく。


「ふぁ、みんなと耳の形が違う」

「えぇ、貴女と似たようなものです、月ヶ瀬ミコト」


朗らかな笑顔を浮かべたヴァネット施設長に勧められて応接用のソファーに座れば、雑談交じりにポットの湯を使って紅茶を()れてくれた。


どうやら熱い物が苦手らしく、しきりに “ふ~、ふ~” と息を吹きかける隣の猫さん… もといミコトはさておき、先ずは対面の相手に感謝を述べる。


「迎えを出して頂き、ありがとう御座います」

「いえ、木崎さんから話を聞き、あなた達を引き受けようと思ったのは私達です」


やや表情を曇らせながらの言葉など(かんが)みるに、一括(ひとくく)りにされたミコトも外部区画の幻獣騒動で肉親が亡くなったのだろうか?


ともあれ “路上の子供達(ストリートチルドレン)” として生き残るのは過酷であり、ちびちびとミルクティーを(すす)る猫耳少女には難しそうだ。自身も他人事ではないのだが…… 財閥の庇護(ひご)を得るにしても幾つかのリスクが生じてしまう。


「具体的な受け入れ条件を教えてもらっても良いですか?」


「そうですね。慈善事業でやっている訳ではありませんし、財閥系の孤児院は特殊な場所ですから、十分に説明させて頂きましょう」


優雅な所作で紅茶を(たしな)み、口腔(こうくう)を潤したヴァネット施設長の発言によればここは最新の研究施設との事で、彼女も教育者というよりは知識の探究者だと(うそぶ)く。


その専門分野は変性因子を持つ亜人種に(まつ)わるらしく、何処か悪戯っぽく口端を釣り上げて、“()()()()には身寄りの無い孤児が適材でしょう?” と悪びれなく言い切った。

自称、猫さん登場!!

人見知りですけど、気に入った相手は溺愛する性格です。


『続きが気になる』『応援してもいいよ』


と思ってくれたら、下載の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にお願いします。

皆様の御力で本作を応援してください_(._.)_


一緒に物語を盛り上げていきましょう!

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど人体実験用に連れてこられたのですね。 ミコトもどう主人公に絡んでくるのか気になります。
2020/12/30 00:25 退会済み
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