書店でドライフルーツ!
「よーし、よしよし」
小出川の河津桜並木から駅前に戻って、若者や家族連れで賑わうゲーセンに来た。店内スピーカーからコテコテのアニソンが流れている。同規模程度のほかの街ではよくある光景も、茅ヶ崎では珍しい。
「巡ちゃん、きょうも獲るねぇ」
鋭い眼差しでクレーンゲームをプレイする巡ちゃんを、私は生温かく見守る。景品は通常サイズのポテチ。
「11月下旬のオープン以来3ヶ月弱続いた救出作戦が無事終了し、いまは食料調達とエンタメ性の両立でお菓子を中心に狙っているであります!」
アーム操作の難易度の高い筐体や、位置合わせにコツの要る筐体の景品は、大人気キャラクターでも長く残っている。その中に推しがいたのでぬいぐるみや缶バッジをすべて救出したらしい。
「お菓子かぁ、ぬいぐるみとかフィギュアは難しそうだけど、お菓子なら私も獲れるかな」
同じ筐体の左側でやってみたらポテチ1袋を2回でゲット。ぬいぐるみやフィギュアなど、単価の高い景品は難しいけれど、安い景品は比較的簡単に獲れるようだ。
ゲームをしているときの巡ちゃんはキラキラオーラが出ている。
本人曰く地元にゲーセンがない、小さいころ遊びに行った大型スーパーのゲーセンでは親がケチであまり遊ばせてもらえなかった。その反動がいま来ていると。
「よーし、きょうも大漁!」
でかいぬいぐるみを入れるようなビッグサイズの景品袋にお菓子をパンパンに詰め込んだ巡ちゃんは大層満足したようだ。私は小さな袋にポテチ1袋のみ。
続いて駅ビル5階にある大手の書店に入った。ワンフロアながら、書物や文房具はもちろん、ドライフルーツなど日持ちする食品も扱うユニークな品揃えが特長。
出版不況とは何やらと思うほど混み合う店内を一巡し、アニメ雑誌を手に取った巡ちゃんがレジ待機列に並ぶと、右のドライフルーツやグミが並ぶ棚をまじまじと見ていた。よく見ると全国津々浦々のフルーツが取り揃えられている。購買意欲をそそられた私は巡ちゃんより何人か後ろに並んだ。フルーツを買うためだけに。
思わぬ発見をして上機嫌のうちに駅ビルを出て、北口のタクシー乗り場前を歩いていると、巡ちゃんが気付いた。
「あれ? きょう作曲全然進んでない」
「気付いちゃったかー。うち来るかい? きょう親いないよ」
「お、おう……」




