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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
大学1年の秋

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クレーンゲーム∶まどかと巡の場合

「いやあ、ほんと景品プライズのラインナップが豊富だねぇ」


「うん、茅ヶ崎に私みたいなニンゲンの居場所ができた」


 茅ヶ崎で育ち、アニメショップなどサブカル要素豊富な隣町、藤沢へ足繁く通うつぐピヨ。彼女の穏やかな口調の中に、自分はこれまで遠回しに故郷ふるさとから排斥されてきたような物悲しさを感じた。


 巡ちゃんも故郷でそのようなことを感じたそうだけれど、茅ヶ崎にもサブカルチャーに対して否定的な風潮が全くないかといえば違うと断言できる。サブカルチャーのみでなく、メジャーなコンテンツでも好きというと、属する集団によっては冷ややかな視線を浴びせられる。そんな彼らの趣味もまた、マイナーだったりする。


 つまり興味関心の範囲外にあるものに対し否定的な態度を取る風潮が、一部か大部分かはわからないものの残っている。


 きっとつぐピヨや巡ちゃんはこのゲーセンにそういった要素を払拭するポテンシャルがあると、心のどこかで期待していると思う。オタク向けの景品がたくさん置いてあれば、コンテンツがそれだけ世に浸透しているものだと認識させられる可能性があるから。


 私、白浜沙希としては、中所得層向けの施設や店舗が多い茅ヶ崎に庶民が楽しめるスペースができてうれしい。スーパーマーケットやショップ、ゲームセンターなどの展開は私たち庶民にとって便利だったり心を潤す場になる。


 大きなぬいぐるみが多い南側の通路を、景品を見回しながらのんびり歩く。一帯を見回してもまみちゃんの姿はもうなかった。が、その代わりに


「あーチクショー!」


 先ほど私がプレイしたスナック菓子が景品の大きなクレーンゲームでサッポロ軒の店主が苦戦していた。まみちゃん同様そっとしておこう。


 続いてまどかちゃん。沖縄の某ビールのロゴマーク☆がプリントされたタンブラーが景品のクレーンゲームをプレイ中。


 カリカリカリカリ。なんかめちゃくちゃカリカリした表情かおしてる。1のボタンの脇のスペースに中指をトントントントン叩きつけ、苛ついているのが伝わってくる。叩くなよ、筐体きょうたい叩くなよマジで。こういう人たちはそっとしておくのがベスト。


 巡ちゃんはどうしてるかな。


 私とつぐピヨが更に奥へ進むと、巡ちゃんは少し変わったクレーンゲームをプレイしていた。左手には既に何らかの景品が入ったゲーセンのビニル袋を提げている。2のボタンの左横には数十枚超の百円硬貨が積み上げられている。昔の公衆電話かよ。あれは主に十円硬貨だけど。いつしかドラマで見た光景。テレホンカード使えばいいのにと思った。


 巡ちゃんのプレイを観察。ふむふむ、通常のクレーンゲームが横、奥の順に進めるのに対し、この筐体は隙間の小さなハサミの隙間をキーホルダーと同じくらいの規格のチェーンに差し込み、更にその下のどら焼きのような形状の物体を徐々に引き下げてゆくタイプのようだ。


 見たところその条件を満たせば確実に下ろせるようだけれど、座標合わせにミリ単位の緻密な操作を要求される難易度の高いゲームのようだ。


「よっしゃキタアアア!! うおおおおおお!! 今夜は猫を撫でながら麦とろご飯の気分だぜい!!」


 女の子のキャラクターのアクスタを見事ゲットした巡ちゃんは大きな声で独り言を発していた。


 私の周り、関わらないほうが良さそうな人だらけだな。


 巡ちゃんはまだ大量に残っている百円玉を見遣り、同じ筐体の左側のゾーンへ移った。今度は大きな景品、ペアタンブラーを狙っているようだ。


「ああクソ外した! テメェ覚えてろよこの野郎。と〇ろちゃん、すぐ救出するからねっ!」


 停止位置合わせに失敗した巡ちゃんは筐体に向かってドスの効いた声で暴言を吐いたりタンブラーに向かって嬌声を発して救出宣言をしたりと忙しい。


 そんな折、つぐピヨが先ほど巡ちゃんがアクスタをゲットしたゾーンでプレイを始めたが、3回プレイしたところで眼のハイライトが消えた。私が引き継ぐ。無理だった。難し過ぎる。このオタクよくゲットしたな。私は左を盗み見ながらそう思った。

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